配筋検査 チェックリストを現場で回すと、検査の抜け漏れが減り、是正も小さく収まります。結論としては、観点を固定化し、段取りと写真の型を決めることが近道です。この記事では、原因から具体策、手順、実例、注意点までを一気に整理します。若手監督の方も、今日からすぐ使える形にしておきます。
抜け漏れが起きる原因を押さえる
配筋検査でのミスは、図面解釈のズレと観点の抜けが主な原因です。配筋図・断面詳細・仕口詳細が散らばり、情報を見落としやすいのですね。時間切れで「主要部だけ」になり、末端や開口周りの確認が後回しになりがちです。写真の型が決まっていないと、後から効かない証跡も残りにくいです。
具体策:チェックの枠組みと道具を固定する
観点の枠組み(上から下へ/外から内へ)
- かぶり厚(表面から鉄筋までの距離)
- 径・本数・ピッチ(鉄筋間隔)
- 継手位置と方法(ガス圧接・機械式継手)
- 定着長さ(端部の必要長さ)とフック
- 開口補強・差し筋・スリーブ周り
- スペーサー(被り確保材)・サポート(馬)
- 錆・汚れ・型枠内清掃・支保工干渉
観点を上から下へ、外から内へ流すと、戻りが減ります。梁→スラブ→壁→柱の順で、重要部はダブルチェックにします。撮影は「全景・中景・実測」の三点セットを型にします。
必要な道具(最小構成)
- スケール・折尺・チョーク(印付け)
- かぶり厚ゲージ(簡易でも可)
- 鉄筋径ゲージ(D13など径判定用)
- 水平器・下げ振り(直角・通り確認)
- 白黒スケール入り撮影ボード(写真証拠)
- 軍手・保護メガネ・ヘルメット(安全装備)
道具は腰袋に入る範囲で固定します。現場車に予備を一式置くと、応援者にもすぐ渡せます。安全装備は必須です。結束線の跳ねや落下に備え、目と手を守ります。
手順:現場での検査フロー
- 事前準備:配筋図に蛍光マーカーで観点を色分けします。継手・定着・開口は別色にします。
- 範囲確認:コンクリート打設範囲と立会い日時を職長と共有します。人と時間を先に固めます。
- 全景確認:梁・壁・柱の通りとレベルを俯瞰します。図面と差があれば先に是正指示を出します。
- 実測チェック:ピッチ、かぶり厚、定着、継手を各部位3点以上測ります。数値は記録表にその場で書きます。
- 開口・スリーブ:補強筋・あき寸法(鉄筋間の空き)を特に確認します。後打ち部も忘れません。
- 写真撮影:全景・中景・実測の三点セットで撮ります。ボードに部位名・日付・図面Noを入れます。
- 立会い:設計・監理の確認観点を先に伝え、合意を取りながら進めます。相違は図面で即時確認します。
- 是正と再検:軽微な是正は当日中に完了し、再撮影します。再検の記録も同じ台帳にまとめます。
手順は必ずこの順に流します。安全上、開口端部や足場端での実測は二人一組で行います。落下や踏み抜きに備え、声かけを徹底します。
例で理解:よくある現場ケース
基礎スラブでかぶり厚が25mm不足の例です。スペーサーブロック(被り確保材)のピッチが広すぎて、歩行で沈んだのが原因です。スペーサーを@600→@300に増設し、沈みやすい導線に追加します。再測で規定値を満たせば写真で記録を残します。
梁主筋D25の継手が梁成中央に集中した例です。設計の継手禁止帯を読み落としていました。継手位置をずらし、必要本数を分散して再結束します。機械式継手の場合は締付トルクと合格証の確認も併せて実施します。
壁の開口周りで補強筋のフック向きが逆の例です。開口縁からの定着長さが不足していました。フック向きを是正し、あき寸法を確保した上で、撮影ボードに「定着長さ○○mm」と明記して撮影します。図面の詳細番号も添えます。
注意点:数値優先と証跡づくり
- 数値は必ず設計図書を優先します。一般値は目安に留めます。
- 写真は「全景・中景・実測」を必ずセットにします。後で効きます。
- マーキングは是正後に清掃します。仕上げ汚れを残しません。
- 加工帳(鉄筋の切断・曲げリスト)と現物の突合せを1ロットで行います。
- 開口やスリーブの後出し追加は、補強の設計確認を先に取ります。
安全面では、結束線の飛びやすい足元と鋭利端部に注意します。手袋・長袖・保護メガネを着用し、足場板の隙間を避けて移動します。高所では工具落下防止を必ず付けます。
まとめ:自分用の型を今日つくる
配筋検査は、観点の固定化と写真の型で安定します。この記事の枠組みをそのままテンプレにして、A4一枚のチェックリストに落とし込みましょう。図面番号を書ける欄と、全景・中景・実測のチェック欄を作るだけで回収力が上がります。次の打設までに一度、同僚と模擬検査をして精度を合わせるのがおすすめです。
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