配筋検査チェックリストを整えるだけで、見落としがぐっと減ります。是正と手戻りが少なくなり、コンクリート打設までの段取りが楽になります。今日から現場で使える形で、やさしく整理します。
なぜ見落としが起きるのか(原因)
図面の読み違いと時間の足りなさが、いちばんの原因になりやすいです。配筋図(鉄筋の配置を示す図)と要領書(施工の決めごと)に差があるのに、突き合わせが薄くなることもあります。写真を撮ることに意識が寄り、実測が後回しになることも多いです。
チェックリストの粒度が合っていないのも要因です。「スラブ確認」とだけ書いてあると、何を測るかが人によって変わります。現場によって重点が違うので、部位と項目を細かく分けるのが近道です。
具体策:チェックリストの作り方
図面と要領書の差異を先取り
最初に、配筋図と要領書を一度だけ丁寧に突き合わせます。かぶり厚さ(コンクリート表面から鉄筋までの厚み)、ピッチ(鉄筋の間隔)、定着長さ(鉄筋を止める必要長さ)の三点は、図面値を付箋で抜き出しておきます。開口補強や継手(鉄筋のつなぎ部)の位置も、図に赤でマーキングしておくと迷いません。
優先3項目に絞る
チェック項目は多すぎると回り切れません。まずは以下の三つに絞ります。
- かぶり厚さ:スペーサー(鉄筋を浮かせる部材)の種類と間隔まで
- ピッチ:スラブ・梁・柱で別記、端部のピッチ変更も明記
- 定着・継手:径ごとの長さ、位置のずらし量、重ね方向
写真管理(撮り方の決まり)も、同じ紙に小さく入れておくと迷いが減ります。
写真のショットリストを置く
写真管理(出来形写真の撮影)で抜けやすいのは、全景と詳細のセットです。部位ごとに「全景→スケール付き詳細→通り表示付き」を1セットと決めます。スケール(物差し)はゼロ位置が写るように、目盛の向きも一定にします。
手順:現場での検査フロー(5ステップ)
- 準備:図面、要領書、チェックリスト、スケール、曲尺、検測ピン(かぶり確認用)、チョークを腰袋に。ヘルメット・手袋・安全帯は必ず着用します。
- 受入検査:鉄筋径と本数、ミルシート(材料証明)を確認。錆の状態や曲げ加工も見ます。ここで不明点はその場で解く。
- 部位別実測:スラブ→梁→柱の順で流れを固定。かぶり厚さはスペーサーの種類と配置で確認し、要点で実測。ピッチは3スパン以上を抜き取りで測る。
- 是正指示:口頭だけにせず、テープで印を付けて写真も残します。是正期限と担当をメモに書き、共有します。
- 再確認:是正後の同位置を再撮影。チェックリストに二重線で完了印を入れます。
足場の床付近や梁上は、つまずきと転倒が起きやすいです。無理な姿勢での計測は避け、手すりから身を乗り出さないことを徹底します。
例:スラブと梁の配筋検査のポイント
スラブ(床)
例として、上端D13@200の二重配筋を想定します。かぶり厚さが25mmなら、スペーサーの高さと間隔が図面どおりかを先に見ます。スペーサーの向きが倒れていないか、踏み抜きで沈んでいないかもチェックします。開口まわりは補強筋(穴の周りを強くする筋)が入っているか、ピッチ変更の範囲が合っているかを確認します。
梁
スターラップ(せん断補強筋、Uやコの字の筋)は、端部でピッチが細かくなることが多いです。D10@100→150のように段階変更がある場合、切替位置のマーキングをしてから数えます。主筋の定着は、フックの向きと長さを必ず見ます。継手は通り方向で偏らないよう、位置を互い違いにずらしているかを確認します。
注意点・NG集
- スペーサー不足や向き違い:かぶり厚さ不足の原因になります。交換と追加を指示します。
- 過度の赤錆:表面だけなら清掃で許容のこともありますが、深い腐食は要相談です。
- 結束不足:歩行で動く筋は打設時に崩れます。要点のダブル結束をはっきり指示します。
- 継手の集中:同一断面での重なりが連続しないよう、ずらし量を測って確認します。
- 開口補強忘れ:スリーブ位置に仮置き札を立て、写真もセットで残します。
- 写真の目盛不鮮明:ゼロ点が写っていない写真は再撮影します。
まとめと次アクション
配筋検査は、かぶり厚さ・ピッチ・定着の三点に絞ると、短時間でも質が上がります。図面と要領書の差を先取りし、ショットリストで写真の抜けを防ぎます。手順は準備→受入→実測→是正→再確認の5ステップで固定します。
- かぶり・ピッチ・定着の数値を付箋で見える化
- 写真は全景→詳細→通り表示のセットで
- 是正は印+期限+再撮影までワンセット
次の案件に向けて、現場版のチェックリストを今日の気づきで1枚更新しておくと、明日の検査がすっと楽になります。
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