結論:型枠工事の気を付けるポイントは「通り・止水・安全」の三本柱
型枠工事の気を付けるポイントは、通りと精度、止水と打設品質、安全の三本柱です。ここを外さなければ、手戻りはぐっと減ります。段取りで七割が決まります。現場の型枠大工さんと同じ目線で、要点とチェックを通して整えていきましょう。
原因の整理:不具合はどこから生まれる?
漏れ・ジャンカ・コールドジョイント
隙間からの漏れは、後のジャンカや色むらの元です。パネル(合板)端部の密着不足、セパレーター(型枠間隔を保つ金物)の締め不足、打継ぎ部の処理不足が主因です。特に止水部は養生と清掃が甘いと、コールドジョイント(打継ぎ不良)になりやすいですね。
通り・精度ずれ
通り(ライン)やレベルのずれは、墨出し(位置表示)と支保工(型枠を支える仮設材)の精度が決め手です。建入(垂直)を初期で合わせないと、締付け時に逃げてしまいます。パネルの反りや劣化も、面の目違い(段差)を生みます。
安全リスク
締固め不足より怖いのが、人の落下や倒壊です。足場の幅、手すり、親綱、安全帯の使い方を甘く見ると、ヒヤリはあっという間に事故に変わります。支保工の間隔と緊結、荷重経路の確認は、毎回きちんとやり切ります。
具体策:三つの視点で先回りする
計画・図面の擦り合わせ
先に図面と施工計画でズレを潰します。型枠割付、セパレーターのピッチ、入隅・出隅の納まり、先行スリーブやインサート(取付金物)の位置を、鉄筋・設備と同席で決めます。打継ぎ計画は、荷重と打設時間を見て現実的に設定します。
資材・工具の標準化
使うパネルは反りと欠けをチェックします。パッキン、目地棒、止水材は余裕を持って手配し、型番も統一します。インパクト、トルクレンチ、バイブレーターは台数とバッテリーを確保します。消耗品の不足が、品質と安全を崩します。
人と段取りの見える化
誰がどこを、いつまでに、どう測るかを明確にします。立込、締付、通り直し、清掃、受入検査、打設立会いまでを時系列でホワイトボード化します。チェックリストは紙で腰袋に一枚、スマホでも共有します。
標準手順:チェックリストで抜けを防ぐ
施工前チェック(着手前)
- 墨出し完了確認(通り・レベル・芯)。基準墨の保存。
- 支保工の計画図と現地照合。間隔は900〜1200mm目安(設計優先)。
- 開口・スリーブ・インサート位置のマーキングと相互確認。
- パネル状態、目地材、止水材、セパレーター・単管の数量確認。
- 足場幅・手すり・昇降の確認。親綱ルートの事前確保。
立込・締付・支持(組立中)
- 出隅先行で通りを決め、治具で固定。建入はレーザーで確認。
- セパレーターは均一ピッチ(例:450/600mm)で増し締め。ナットの緩みゼロ。
- 通しボルト・単管で面を押さえ、目違いを抑制。裏当てを忘れない。
- 打設開口とバイブ挿入ルートを確保。清掃口を塞がない。
- 監督・大工で中間検査。写真と是正票で記録。
打設・養生・脱型(後工程)
- 打継ぎ面は洗浄とレイタンス除去。シーラーやモルタルで密着向上。
- 先打ちは隅・柱際。バイブは20〜30秒/点、挿入ピッチ30〜40cmを目安。
- 漏れは即パテ・スポンジで応急。圧を逃がし過ぎない。
- 養生は風・直射を遮り、散水またはシート。強度発現を優先。
- 脱型は基準書に従う。一般に側面は早め、スラブ・梁は十分な強度を待つ。
具体例:RC壁の出隅とスリーブ周り
出隅の目違い対策
出隅は仕上げで目立ちます。先にL型の角パネルで通りを作り、直角を確認します。外部からの締付だけだと膨らみやすいので、内側に押さえと通し材を入れます。セパレーターの始点と終点は、角から一定距離に統一すると、面が締まります。
スリーブ・インサートの位置決め
スリーブは鉄筋と干渉しがちです。事前に墨で十字を取り、治具で固定します。打設中に動くと致命的なので、番線と当て板で二重固定します。インサートは許容の芯ズレを先に共有し、誤差±5mmを目安に合意しておくと、手戻りを避けられます。
注意点:天候・気温・短工期への備え
雨天時は漏れと剥離剤の流出が起きやすいです。打設前の内部乾燥と面の拭き上げを増やします。高温時はスランプ低下と打継ぎリスクが上がるので、打設スパンを短くし、散水・日除けを追加します。短工期では養生が犠牲になりがちです。工程を前倒しするより、品質確保のために打設ブロックを見直すほうが安全です。
まとめ:型枠は段取りで決まる。明日やること
- 三本柱は「通り・止水・安全」。ここに集中。
- 図面・資材・人の三位一体で先回り。
- チェックリストを現場全員で使い、写真と是正で回す。
- 出隅とスリーブは治具と二重固定で安定。
- 天候と養生は妥協しない。強度確認を待つ。
次アクションとして、明日の立込前に「墨・支保工・開口」の3点を再確認しましょう。ここが決まれば、打設はぐっと楽になります。
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