配筋検査チェックリストを先に整えると、当日の迷いが減り、指摘も最小です。要点が一枚にまとまれば動線も短くなり、安全にもつながります。今日は、配筋検査(鉄筋の出来形確認)を安定させるコツを、現場目線でお話しします。
見落としが起きる原因を知る
原因を押さえると対策が決まります。よくあるのは、図面照合(図と現物の一致確認)が分散し、数値が頭の中で行方不明になることです。さらに、当日の動線がバラバラで、ゾーン抜けが出やすいのも一因です。写真整理のルールが曖昧だと、後で証跡不足になりがちです。
具体策:チェックリストの設計
紙一枚に「ゾーン×項目×数値」を並べ、回る順路を矢印で描きます。重点は、かぶり厚(鉄筋からコンクリまでの厚み)、定着長さ(力を伝える必要長さ)、継手(つなぎ目)、あき(鉄筋間のすき間)、配筋間隔、スペーサー(支持材)です。数値は図面と仕様書を優先し、参考値も添えます。撮影ルールとファイル名も同じ紙に入れておきます。
5つ+αの重点項目
- かぶり厚:屋外40mm、屋内30mm目安(設計優先)。端部とスラブ下を要確認。
- 定着長さ:概ね40d前後が多め(設計優先)。フック有無も見る。
- 継手:ずらし(千鳥)と継手長、重なりの位置。圧接は記録確認。
- あき:主筋・配力筋の最小あき。スリーブ周りに注意。
- 配筋間隔:@150〜200が目安の場面が多い(設計優先)。通りごとに抜き取り。
- スペーサー:@1000〜1500で均等、踏み割れ防止の敷板も準備。
写真・記録のルール
「全体→中景→近景→スケール(物差し)の順」で撮ります。図番・部位・通り芯・日付をファイル名に入れます。例:S-2F-スラブ@150-東側-20250115.jpg。監理者立会い(設計者の確認)前に、要所だけでも仮整理しておくと安心です。
当日の手順(段取りから立会いまで)
- 前日準備:図面に赤で数値を書き込み、ゾーン割(北→南など)と巡回順を決めます。墨出し(位置標示)の確認を最初に置きます。
- 朝礼共有:危険予知。鉄筋上は転倒・踏み抜き注意、手袋・安全靴・保護メガネ必須です。
- 巡回チェック:通り芯→かぶり厚→定着長さ→継手→あき→間隔→スペーサーの順で流れ作業にします。
- 写真・是正:その場で是正指示。スペーサー増しや結束補強は即対応、後で再撮影します。
- 立会い:監理者に要点を短く説明。数値根拠は図面の該当記号を指差しで伝えます。
- 引継ぎ:未了箇所と再検日時をメモし、職長・検査メンバーへ共有します。
部位ごとの具体例
スラブ(床)
配力筋(補助方向の筋)の間隔@150、かぶり厚は下面30mm目安です。スペーサーブロックは@1000で碁盤目に配置し、端部は増し置きします。スリーブ(貫通口)周りはあき不足が出やすいので、切欠き形状と補強筋の有無を写真に残します。
梁
主筋の定着長さは40d目安(設計優先)、フックの向きと重なり位置を合わせます。スターラップ(せん断補強筋)は端部@50〜100の密配がよく出ます。ハンチ部は曲げ半径と干渉を見やすく、斜めからの写真を1枚入れると説明が楽です。
柱
帯筋(柱のせん断補強)の間隔と建て入れを同時に見ます。継手は千鳥で離隔を確保し、ガス圧接なら合格票の確認を添えます。柱脚ではアンカーボルトとの干渉と、かぶり厚の確保を優先します。
注意点と安全ポイント
- 安全動線:端から端へ一本で回らず、行き止まりを作らないルートにします。
- 足元:鉄筋のバリ(尖り)で手を傷めやすいです。軍手ではなく耐切創手袋が無難です。
- 高所:開口部は先行手すり。梁上は三点支持で移動し、無理な跨ぎはしません。
- 是正の記録:ビフォー・アフターを同じ構図で2枚。後日のトラブルを防ぎます。
- 受入検査:鉄筋径(太さ)・圧接記録・ミルシート(材質証明)は早めに突合せます。
まとめ
- 「ゾーン×項目×数値×写真」の一体型チェックリストで迷いを減らします。
- 重点は、かぶり厚・定着長さ・継手・あき・間隔・スペーサーです。
- 前日準備と当日の動線設計で、見落としと再歩行を減らします。
- 写真は全体→中景→近景→スケール。ファイル名ルールを統一します。
- 安全は最優先。足元・高所・バリ対策を先に整えます。
次のアクションとして、この記事の手順を自社の様式に合わせて1ページに要約し、明日の検査で試してみてください。終業後、写真と是正記録のセット化までをワンパッケージにすると、翌日がぐっと楽になります。
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