配筋検査 チェックリストの作り方と現場手順|抜けを防ぐ具体例と注意点

配筋検査 チェックリストは、現場の抜けを減らし、是正を早く回すための道具です。
今日は原因から作り方、手順、数値例までを通しで整理します。
むずかしい理屈は最小限にして、すぐ使える形に落とし込みます。
安全と品質に関わる所は、はっきりと言い切ります。

なぜ配筋検査で抜けるのか(原因)

短工期で組立と検査の間隔が詰まり、確認が後追いになることがあります。
雨天や夕方の暗さで、かぶり厚さ(コンクリート表面までの厚み)の読み違いが起きやすいです。
配筋図(鉄筋の配置図)と現物の整合に時間がかかり、開口やスリーブ(管の通り道)周りが抜けがちです。
写真管理があいまいだと、是正の要否判断や再確認の連絡が遅れます。

対策の核心:チェックリスト設計のコツ

項目は「少数精鋭」にします。
躯体別に柱・梁・スラブ・壁の4群で分け、各5~8項目に絞ります。
数値は許容差とセットで書きます(例:かぶり厚さ 壁=40±10mm、基礎=60±10mm/設計図書優先)。
写真カット例を文で添えます(全景、メジャー入り接写、通り芯入り)。

  • 責任欄:施工者・監督・第三者のチェック欄を分ける
  • 是正フロー:期限・担当・再検の有無を記入する欄
  • 雨天用追記:養生(保護)と再測のトリガー条件を明記
  • 記号ルール:マーキング色、OK/NGの符号を統一

配筋検査の手順(現場ルート化)

1. 事前準備と段取り

配筋図・仕様書・標準ディテールを1冊に集約し、ページ付けします。
巻尺、スケール、クランプメーターは動作確認し、白と赤のチョークを用意します。
スラブ天端の基準レベルと通り芯(基準線)を先に出し、測る前提をそろえます。
安全帯と足場の点検は先に行い、無理な姿勢測定はしません。

2. 巡回順と測り方

柱→梁→スラブ→壁の順で、上から下へ立体的に追います。
かぶり厚さはスペーサー(保持材)位置で測定し、離れでは測りません。
定着長さ(鉄筋の埋め込み長さ)は、鉄筋径×係数で概算し、端部の折り曲げも確認します。
スターラップ(帯筋)のピッチ(間隔)は3か所以上で実測し、ばらつきを見ます。

3. 記録と是正の出し方

各項目は「OK/要是正/要確認」で分類し、写真番号を横に書きます。
要是正は、その場で是正案を口頭合意し、期限と担当を決めます。
写真は「全景→通り芯入り→メジャー入り接写→是正後」の順で最低3枚を確保します。
当日中に共有フォルダへ格納し、台帳にリンクを書いておきます。

4. 打設前の最終確認

開口・スリーブ周りの補強筋(割増し筋)の有無、結束線の緩みを再確認します。
スペーサーブロック(かぶり保持)とサイコロの個数と配置間隔を目視で拾います。
ジャンカ(豆板)のリスクが高い密集部では、バイブレーターの挿入可否を現場で試します。
安全面では、落下物と躓きに注意し、無理な跨ぎは避けます。

具体例でイメージを固める

例1:スラブ配筋。
上筋・下筋ともD13(直径13mm)で、ピッチ@200。
かぶりは内部スラブで40mmが目安(設計優先)。スペーサーブロックは@800程度で均等配置。
写真は、通り芯表示のある全景1枚、メジャーでピッチ確認1枚、かぶり確認1枚を基本にします。

例2:基礎梁の定着長さ。
主筋D22で、標準フック付きの定着。
設計指示に従い、概算では定着長さ=40d前後を目安にします(dは径)。
折り曲げ位置のかぶり、フックの向き、重ね継手(鉄筋同士の重ね)長さの確保をセットで見ます。

例3:スリーブ周りの補強。
Φ100のスリーブが梁せいの中央付近を横断。
設計の補強筋を確認しつつ、最小でも同径以上の割増し筋と帯筋追加の指示があるかを見ます。
貫通角度が斜めの場合、開口縁のかぶり確保が不足しやすいので要注意です。

注意点・リスクと回避策

  • 雨天時:濡れた鉄筋は錆び(初期錆)で色が変わります。表面の泥を拭き、かぶりスペーサーの沈み込みを再確認します。
  • 結束:緩い結束は打設時にずれます。端部と交点は対角結束を基本にします。
  • 継手(鉄筋のつなぎ):圧接・機械式は刻印とトルク管理の記録を確認。位置の集中(同一断面での連続)は避けます。
  • 溶接:設計で禁止のケースが多いです。現場判断の溶接は行いません。
  • 干渉:配管・電線管と鉄筋のあき(すき間)が不足しやすいです。早期に設備と現場打合せを行います。

チェックリストの雛形(抜粋)

  1. かぶり厚さ(壁/梁/スラブ/基礎):許容差と測定点数
  2. 主筋径・本数・定着長さ:端部形状とフックの向き
  3. 帯筋・スターラップ:ピッチ、継手のずらし、定着
  4. 開口・スリーブ:補強筋、あき、通り位置
  5. スペーサー:種類(サイコロ/馬/クリップ)、間隔
  6. 継手:種類(圧接/機械/重ね)、刻印・長さ
  7. 写真:全景/通り芯/接写/是正後の有無
  8. 是正:期限・担当・再検の記録

この8項目でまず回してみて、現場の型に合わせて2~3項目を入れ替えるのが続けやすいです。
最初から完璧を狙わず、1現場1改善で磨いていきます。
安全に関わる点は必ず二重チェックにします。

まとめと次アクション

  • 抜けの原因は、時間圧と前提のズレ、写真と是正の遅れにあります。
  • チェックリストは少数精鋭、許容差と写真例をセットで。
  • 巡回は柱→梁→スラブ→壁、測定は3点以上でばらつきを見る。
  • 打設前は開口周りとスペーサー、結束緩みを再確認。
  • 雨天と短工期は養生と再測のトリガーを事前定義。

次アクションとして、上の8項目を自社書式に貼り込み、今週の配筋検査で試してみましょう。
写真カットの並べ方も決めておくと、是正が素早く回ります。
気づきは必ず追記して、現場ごとに育てていきます。

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