配筋検査 チェックリストを整えるだけで、不適合の取りこぼしが減り、是正と再検査の手戻りを抑えられます。現場の負担もぐっと軽くなり、工期と品質の両立に近づきます。今日は原因と対策を丁寧に分けて、使える形に落とし込みましょう。
なぜ配筋検査でミスが起きるのか(原因)
配筋は部材・径・位置が多く、目視だけでは把握しきれない点が原因になりやすいです。図面の読み違い、単位の混在、縮尺の勘違いもよくあります。検査の順序が決まっていないと、見たつもりで漏れが残ります。写真管理の要件が曖昧だと、後で証跡不足が発覚し、差し戻しになります。
失敗を防ぐ具体策(仕組みと道具)
人の記憶に頼らず、チェックリストと基準図(参照用の抜粋図)で確認点を固定します。測定はスケール・かぶり厚ゲージ(鉄筋から表面までの厚み確認用)・ピンポインタを標準装備にします。写真は撮影位置と方向を統一し、台帳に自動で流し込む仕組みを決めます。最後に、是正の締切と再確認者を先に決めておきます。
チェックリストの設計ポイント
- 部位別(梁・柱・スラブ・壁)に分け、最大でも1枚1工程に収める。
- 数値は「設計図書から転記」し、例示値は入れない。迷ったら図面優先。
- 測り方を短文で明記(例:かぶり厚はスペーサー中心から型枠まで)。
- 合否だけでなく「是正期限・担当・再確認欄」をセットで。
- 写真番号の書式を固定(例:B1梁-スターラップ-北→B1_BM_ST_N-01)。
検査の手順(立会前〜写真管理)
手順は流れを決めて、毎回同じにします。順番がブレないだけで、抜けが目に見えて減ります。以下の3段階で行いましょう。
事前準備(施工図・配筋図の確認)
- 施工図・配筋図・特記仕様の最新版を突合し、差異を付箋でマーキング。
- 重要項目を抜粋(かぶり厚、主筋径、スターラップ間隔、定着長さ)。用語は簡単メモを添付します。定着長さ(鉄筋がコンクリート内に食い込む必要長さ)などです。
- チェックリストに「図面参照箇所(図番・縮尺)」を記入。迷子防止です。
- 必要工具を確認。スケール、かぶり厚ゲージ、チョーク、マーキングテープ、タグ。
現地確認(かぶり厚、定着長さ、スペーサー等)
- 安全確保。足場と踏み板の点検、転落防止を最優先にします。
- かぶり厚(鉄筋から表面までの厚み)を代表点で測定。柱・梁・スラブで位置を変え、端部と中央をセットで。許容差は設計図書に従い、外部は厳しめに見ます。
- 主筋径・本数・ピッチを目視とスケールでダブルチェック。D13・D16など刻印も確認します。
- スターラップ(せん断補強筋)の間隔とフック向き。端部の密度増し範囲を見落とさないよう、端からの距離を実測します。
- 定着長さ・重ね継手長さ。芯々で測り、曲げ部分は展開長で判断します。
- スペーサー(かぶり保持材)の数量・間隔・材質。土間はサイコロ、壁・梁はホイールなど部位適合を見ます。
- 貫通スリーブ周りの補強筋とあき(部材と部材のすきま)。干渉があれば是正指示を明確に。
記録と是正(写真管理)
- 撮影は「全景→代表点→詳細→是正前→是正後→再全景」の順。方向は北基準などで統一。
- 黒板は部位・図番・項目・数値・撮影者・日付。数値は実測値を入れます。
- 台帳はクラウドに即時アップ。ファイル名はチェックリストと同じルールに。
- 不適合はマーキングテープで現場表示し、是正期限と担当を口頭と文書で共有。
具体例(梁とスラブの配筋での注意)
梁では、スターラップの間隔が端部だけ細かくなる設計が多いです。例えば端部0.5Dの範囲は@75、中央は@150のように変化します。端部範囲の測り忘れが起きやすいので、チェックリストに「端から◯◯mmの範囲」と具体数字を転記します。さらに、上端主筋の定着長さはスラブに逃がすこともあるため、スラブ筋との干渉も一緒に確認します。
スラブでは、かぶり厚の確保が要です。サイコロの間隔が広すぎると、人が乗っただけで沈みます。1m格子程度を目安に、開口部まわりは密にします。開口補強筋は図面と現場で形が違いがちなので、型紙を使うと迷いにくいです。
注意点とよくある落とし穴
- 縮尺の取り違い:A3印刷で縮尺が変わると、スケール当てが不正確になります。必ず寸法値で判断します。
- 曲げの有効長の誤解:定着長さは直線長だけでなく、曲げ部分の展開長を含めます。図面の条件式を写します。
- かぶり厚の基準混同:屋外・土に接する部位は厳しめの設定です。設計基準を優先し、一般値で判断しないこと。
- 写真の再現性不足:同じ場所を同じ方向で撮ると再検証が早いです。床の通り芯で位置を示します。
- 是正の口約束:口頭だけだと漏れます。期限と担当を記録し、再確認欄にサインをもらいます。
まとめと次アクション
配筋検査は、リスト化と手順化で安定します。要は「測り方を決め、記録を残し、是正を閉じる」流れを毎回守ることです。まずは自現場の配筋図から、部位別テンプレを1枚ずつ作ってみましょう。最初の1時間が、後の手戻り数時間を節約します。リストは現場に合わせて育てていく前提で、改善点を小さく積み上げるのが近道です。
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