配筋検査チェックリストを使うと、見落としがぐっと減り、是正も最小で済みます。今日の現場でそのまま使える形に落としこみ、段取りと写真管理まで一連で整えます。はじめに原因を押さえ、つづいて具体策と手順を示し、実例と注意点でしっかり定着させます。
見落としの原因はどこにあるか(ヒューマンエラーの実態)
図面の読み違いがまず多いです。配筋径(鉄筋の太さ)やピッチ(間隔)の指示が複数図で食い違い、断面図と伏図の整合がずれることがあります。時間切れや照度不足など現場条件も重なり、重要部の確認が飛びがちです。
確認の順番が決まっていないことも原因です。人はランダムに見ると抜けやすいものです。さらに役割分担が曖昧で、誰がどこまで見るかが共有されていないと、すれ違いが起きます。写真管理が後追いになると、証跡が足りず再確認が発生します。
見落としを減らす具体策(仕組みでカバー)
チェックリストを部位別×順路で設計
伏図の通りに歩く順路で作るのがコツです。項目は「鉄筋径・本数・ピッチ・継手位置・定着長さ(鉄筋の食い込み長さ)・かぶり厚(コンクリート表面までの距離)・スターラップ(せん断補強)・補強筋(開口や柱周り)・スペーサー(鉄筋を浮かせる部材)・サビ・異形の向き・番線(結束線)」を基本にします。
数値は図面の許容差を併記します。例として、かぶり厚60±10mm、スラブ上端筋ピッチ@150、梁スターラップ@100端部@150中間など、現場の数字に置き換えておきます。合番(図面番号)を欄外に入れ、どの図で検証したかが一目でわかるようにします。
写真の型を決めておく
同一構図で撮ると後で探しやすいです。「通り芯入り→広角→中景→スケール(定規)入り→指示箇所アップ」の順で、最小5枚をセット化します。黒板(撮影用ボード)には部位、図番、寸法、検査日、立会者を書きます。
役割と再確認の仕組み
主検(担当監督)と副検(別視点)の二重化をします。主検が数量と寸法、副検が位置と方向を重点に見ると偏りが減ります。最後に「指差し呼称」で重要3点を読み上げ、相互に復唱します。この一手間で取りこぼしは確実に減ります。
当日の段取りと確認手順(タイムライン)
- 朝礼で検査範囲と安全を共有。切創対策の手袋、躓き防止を着用し、照明を増設します。
- 図面・仕様書・検査要領書を机上で10分整合。相違があれば即メモします。
- 外周→梁→スラブ→開口→付帯筋の順で巡回。順路を崩さないことを徹底します。
- 要所は実測。かぶりはスペーサー高さ、定着は芯々寸法から逆算します。ピッチは3スパン連続で測り平均も記録します。
- 写真はセットで撮影。黒板の記載ぶれを避け、同一表記にします。
- 主検完了後に副検がクロスチェック。差異は現場で赤札化し、是正期限を書きます。
- 立会検査前に自主是正の写真を追補。検査簿に合番と写真番号を結びます。
実例で理解(梁・スラブ・基礎のチェック要点)
梁(端部のせん断と定着)
梁端はスターラップのピッチが詰まる部分です。@100の範囲が柱面からどこまでか、設計図の斜線範囲と一致するか見ます。主筋の定着はフック(曲げ)か直定着かを確認し、柱内への入り込み寸法を実測します。帯筋の重ね位置が重ならないよう、ずらし配置も見ます。
スラブ(上端筋と開口補強)
スラブ上端筋は施工時に浮きやすいです。サドル(押さえ治具)やスペーサーの間隔が広すぎないかを確認します。開口周りは補強筋の本数と定着、コーナーへの補強当て筋があるかを見ます。配線用スリーブの干渉で筋が逃げていないかも要チェックです。
基礎(かぶりとアンカーボルト)
土に近い基礎はかぶり不足が劣化につながりやすいです。捨てコンからのスペーサー高さ、外周型枠からの距離を複数点で測ります。アンカーボルトの位置は通り芯と高さを確認し、主筋との干渉で曲げが出ていないかも見ます。写真は通り芯とレベルがわかるように撮ります。
是正手順(素早く、記録を残して)
是正は「原因→対策→再発防止」をワンセットで記録します。例として、ピッチ過大ならスペーサー不足や結束不良が原因のことが多いです。追加スペーサーの設置、番線の結束強化、担当者の再教育まで書きます。是正前後の写真を同構図で撮り、検査簿に貼ります。
緊急度が高いのは、かぶり不足と定着不足です。ここは必ず手を打ちます。開口の補強不足やスターラップのピッチ不整合も放置しません。手直しの際は鉄筋の切断に伴う火花や切創に注意し、養生板で周辺を守ります。
よくあるNGと安全のポイント
- 鉄筋のサビ落としが不十分:ワイヤーブラシで軽度の錆を除去し、浮き錆は交換を検討します。
- 番線の切り端が出ている:養生テープで保護し、動線側は内向きに処理します。
- 足元のトリップ(つまずき):通路を先に整備し、ケーブルは上配線か養生板で跨ぎます。
- 写真不備:スケールと通り芯、黒板の3点が入らない写真は撮り直します。
まとめ(今日からできる3ステップ)
- 順路型の配筋検査チェックリストを部位別に作る。
- 写真はセット撮影の型で統一し、合番と紐づける。
- 主検と副検を分け、指差し呼称で重要3点を復唱する。
まずは次の現場で、梁端と開口周りだけでも型どおりにやってみてください。短い時間でも、手戻りと再撮の回数がぐっと減るはずです。
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