配筋検査 チェックリストでミスを減らす現場手順

配筋検査 チェックリストを活用すると、是正の手戻りが減り、打設(コンクリートを流し込む作業)までの段取りが安定します。今日の現場でそのまま使える形で、原因から具体策、手順、実例、注意点までをまとめます。要点を押さえれば、検査は短く、品質はぶれにくくなります。

原因:見落としが起きる背景を整理

見落としの多くは、時間切れと情報の分散が重なるときに起きます。図面、配筋詳細(鉄筋の配置図)、仕様書が別々に保管され、照合が追いつかないのですね。さらに、工程圧縮で検査時間が削られ、写真管理まで回らないこともあります。

もう一つは、優先度のばらつきです。たとえば「かぶり厚(コンクリート表面から鉄筋までの距離)」と「結束ピッチ(縛る間隔)」を同列に見ると、時間配分がぶれます。重大不適合の芽に先に触れる仕組みづくりが要ります。

図面・仕様の読み違いをどう減らすか

開口補強(スリーブや点検口まわりの補強)や定着長さ(引張力に耐えるための必要長さ)は、躯体図と配筋詳細で表現が違うことがあります。紙の束をめくる回数が増えるほど、読み違いは増えます。確認対象を1枚のシートに集約するだけで、迷いはぐっと減ります。

具体策:チェックリストを現場用に設計

検査全体を「重大項目→一般項目→写真・記録」の順に並べます。最初の5分で重大項目だけを一気に回すと、以降の作業判断が早くなります。重大項目は、かぶり厚、あき(鉄筋間の最小間隔)、定着長さ、継手位置(重ね継手や機械式継手の位置)、開口補強の5本柱で十分です。

  • かぶり厚:内装側40mm、外部60mmが一般例(設計図書優先)
  • あき:粗骨材最大径×1.25以上が目安(仕様書確認)
  • 定着長さ:鉄筋径・コンクリート強度で決定(設計表参照)
  • 継手:同断面内の集中回避、端部からの離れ確保
  • 開口補強:補強筋の径・本数・定着の有無

一般項目には、スターラップ(せん断補強筋)、フック向き、帯筋ピッチ、異形棒鋼(凸凹のある鉄筋)の呼び径、スペーサー(かぶり確保材)の種別とピッチ、タイカ線(結束線)の締め具合、圧接・機械式継手の証明書確認などを入れます。最後に黒板情報、スケール、全景・中景・近景の写真3点セットを押さえます。

二人一組と「指差し・読み上げ」

判断係と記録係で役割を分けます。数値は必ず声に出し、黒板にも書くと、後の是正判断が早まります。時間がなければ、重大項目だけを二人で、一般項目は1人で流すやり方でも効果は十分です。

手順:現場での回し方(タイムライン)

  1. 準備(5分):図・仕様の該当箇所に付箋、チェックリスト印刷、スケール・黒板・チョーク・マーカー・段差ゲージの準備。
  2. 重大項目確認(10分):柱→梁→スラブ→壁の順に、かぶり厚・あき・定着・継手・開口補強だけを回る。
  3. 一般項目確認(15分):帯筋・スターラップ・フック方向、スペーサー種別とピッチ、結束状態、サビ・付着物(モルタル残り)を確認。
  4. 是正指示(5分):口頭でなく、位置と内容を部位番号でメモ。マーキングは黄色、是正完了は白で上書き。
  5. 写真記録(10分):全景→要点→マーキングの順に撮影。ファイル名は「部位_項目_数値_日付」。

時間はあくまで目安ですが、流れを固定すると抜けが減ります。特に是正指示は、図面の通り芯・通り番号で書き切ると、職長さんとの共有が早くなります。

写真管理のコツ(後戻り防止)

写真は「黒板の文字が読める距離」で撮ります。スケールは対象に接地し、目盛りが画面端に切れないようにします。マーキングとセットで撮ると、是正確認の再訪問が短くなります。クラウド共有なら、部位ごとにフォルダ分けし、「検査前」「是正後」を並べると、説明が楽になります。

実例:部位別の確認ポイント

スラブ(床)

配筋ピッチ(鉄筋間隔)は、端部・スリーブ周りで乱れやすいです。スラブ下のサポート(支保工)上にスペーサーブロック(かぶり確保材)を均等配置し、踏み抜きで沈んだ箇所を重点確認します。開口部は、補強筋の定着が有効長を満たすか、フックの向きに注意します。

スターラップのピッチ変化区間(柱際)の切替位置が、仕様書と合うかを必ず確認します。上端筋の定着は、フック内法で検討し、干渉で短くなっていないかを見ます。機械式継手は、トルク管理記録や刻印の有無を写真で残します。

柱・壁

かぶり厚はサイドフォーム(側型枠)との離れに直結します。スぺーサーの種類(プラ製・コンクリート製)とピッチが適正かを見ます。壁の開口補強筋は、上下左右で本数・径・定着を対称に確かめると、見落としが減ります。柱主筋の通りが曲がっていないか、レーザーや糸で通り確認すると安心です。

注意点:安全と品質の要所

  • 安全帯・ヘルメット・手袋は必須。高所は先行手すりを設置し、無理な姿勢での計測はしません。
  • 打設直前の雨天は、鉄筋の軽錆はワイヤーブラシで除去。泥・油は必ず落とします(付着は付着力低下の原因)。
  • スペーサーの過少はかぶり不足に直結。部位ごとに必要数量を事前拾い(数量算出)し、持ち込みを確保します。
  • スリーブ位置のずれは後戻りが大きいです。型枠と配筋で二重確認し、芯墨と照合してから結束を固めます。
  • 図面変更は黒板に「改訂記号・日付」を必ず記載。写真は変更後基準で撮り直します。

まとめ:短時間で漏れなく、を仕組みに

配筋検査は、重大項目に先に触れるだけで、是正の量と質が安定します。チェックリストは現場仕様に合わせ、図・仕様の差を1枚に集約します。二人一組と写真3点セットを習慣化すれば、次の工程が詰まらずに進みます。

  • 重大5項目(かぶり・あき・定着・継手・開口補強)から確認
  • 役割分担と指差し・読み上げで取りこぼし防止
  • 是正は位置明記、写真は黒板・スケール・マーキングの3点

次アクションとして、今日の現場に合わせた「自社版チェックリスト」をA4一枚で作ってみましょう。部位別の優先項目と撮影要件を書き切ると、チーム全員の動きが揃いやすくなります。

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