配筋検査 チェックポイントを現場目線で徹底解説|手順・基準・不具合例

配筋検査 チェックポイントを先に押さえると、ムダ戻りが減ります。設計者と職長の信頼も上がります。この記事では、原因から具体策、手順、実例、注意点までを一気通貫でまとめます。

不具合が出る原因を知る(なぜ起きる?)

配筋の不具合は、図面読み違いと段取り不足が多いです。とくに納まり(部材どうしのおさまり)の見落としで、かぶり厚さ(鉄筋から仕上げ面までの厚み)が不足します。開口まわりの補強忘れや、ピッチ(鉄筋の間隔)のばらつきも定番です。

もう一つは情報の断絶です。最新の配筋図・配筋リストが現場に出回っていない。職長の頭の中だけで指示が流れる。これで継手長さ(鉄筋を重ねる長さ)の短縮が起きます。結果、打設前の是正が追いつきません。

最後は検査の場づくりです。足場や通路が悪く、梁上やスラブ端部に近寄れない。標尺(長さを測るスケール)やかぶり厚さゲージ(厚み確認の治具)が手元にない。こうなると、イメージ検査になり、抜けが出ます。

すぐ効く具体策(事前準備と道具)

検査の質は準備で決まります。前日までに、使う図面を一冊化して赤マーキングを入れます。対象は、ピッチ、定着長さ(部材内に差し込む長さ)、継手位置、かぶり厚さ、開口補強、スリーブ(配管貫通)です。

最低限そろえる道具

  • 5mスケール・折尺・標尺(測定の基本)
  • かぶり厚さゲージ・スペーサー見本(厚み確認)
  • チョーク・ビニールタグ(是正マーキング)
  • 水平器・墨出しセット(基準確認)
  • スマホ+広角と接写、予備バッテリー(写真記録)

チェックリストも簡潔にします。躯体別に「柱→梁→スラブ→階段→開口」の順でA4一枚。項目は10〜15に絞り、数値は設計図書の値を転記します。現場版のしおりがあると、応援の人も迷いません。

検査の手順(柱・梁・スラブの順で)

手順は固定しましょう。迷いが減り、見逃しが減ります。以下は標準の流れです。

  1. 全体俯瞰:通路・足場・清掃・写真範囲を確認。危険箇所を先に是正。
  2. 基準確認:通り芯・レベル・墨の合致を確認。基準がズレると全てがズレます。
  3. 柱:主筋径・本数・定着・フープ(柱の帯筋)のピッチと継手位置。
  4. 梁:主筋上下の本数・スターラップ(せん断補強筋)のピッチ・定着・ハンチ。
  5. スラブ:上筋・下筋のピッチ、開口補強、サポート筋(補助筋)とスペーサーブロック。
  6. 付帯:壁筋、段差部、スリーブとインサート(あと付け金物の受け)の干渉。
  7. 写真:同一箇所を「全景→中景→近景→スケール付き」で連続撮影。

数値の見方(例と注意)

数値は必ず設計図書が最優先です。一般例として、スラブのかぶりは室内で20mm、梁・柱は40mm、基礎は60mmのことが多いです。ただし防火区分や仕上げにより変わります。現場合わせは避け、図面の根拠で判断します。

ピッチの許容差は±10mm程度が目安ですが、これも仕様書を優先します。継手長さは鉄筋径と種別(SD345など)で変わります。規準類に頼らず、現場配布の「継手表」を携帯しましょう。

よくある不具合の実例と是正

1. かぶり厚さ不足

スラブ端や梁下で、スペーサー不足や型枠のふくらみで起きます。是正は、適正高さのスペーサーブロックへ交換し、配筋の押さえ金具を追加します。型枠の反りも合わせて調整します。打設前に再測定が必須です。

2. ピッチのばらつき

作業者ごとに基準線がなく、目分量で並べたときに出ます。墨を引き、通り糸を張ってから再配列します。端部からの寄せ寸法を決め、最終はスケールでランダム抽出検査をします。撮影はスケール写り込みで。

3. 開口補強の欠落

スリーブ位置が移動したのに、補強指示が更新されていないと起きます。最新のスリーブ図で整合を取り、補強筋を追加します。径・本数・範囲を写真とタグで明示します。関連者に変更共有を流します。

写真と記録のコツ(情報の可視化)

写真は「だれでも分かる」を意識します。全景で位置関係を、近景で数値を示します。スケール・チョーク文字・タグの三点セットで、後追いでも理解できる状態にします。ファイル名は通り芯と部位で統一します。

是正は痕跡が命です。是正前・途中・後の三段階を同じ構図で撮ります。検査記録は図面番号とリンクさせます。あとで監理者に聞かれても、3クリックで出せるように整理します。クラウド管理が便利です。

安全と段取り(リスクを先に消す)

  • 足場・通路:梁上検査は手すりと親綱を先行。無理姿勢は避けます。
  • 転落・踏み抜き:スラブ開口はふさぎ板と表示。単管跨ぎは補助者を。
  • 天候:雨天は鉄筋の泥と滑りに注意。濡れたスペーサーは寸法誤差が出ます。
  • 他職干渉:設備の先行配管は時間差で。干渉は現地で小会議し即合意。
  • 打設前日締め:18時までに是正完了、19時に写真・書類を共有。

具体的な回し方(当日のタイムライン例)

  1. 8:00 朝礼:危険予知と検査範囲の共有。図面とチェックリストを配布。
  2. 9:00 柱→梁→スラブの順で主検査。指摘はチョーク+タグで可視化。
  3. 11:00 是正開始。監理者へ中間報告。重要部は立ち会いを打診。
  4. 14:00 再検査と写真確定。撮り漏れはペアで再確認。
  5. 16:00 書類整理。図面番号ひもづけとファイル名統一。
  6. 17:00 終礼。翌日の型枠と設備の取り合いリスクを共有。

注意点(やりがちな落とし穴)

「全部見ます」は危険です。重点を決め、リズムを作ります。とくに、端部、継手、開口、段差、梁成が変わる位置は必ず触ります。目視だけでなく、手で触れ、揺らし、音も確認します。

数値の一般論に頼りすぎないことも大切です。規準は参考で、設計図書が正です。迷ったら、その場で電話せず、関係者を集めて3分ミーティングをします。決めたらタグに残し、写真で証跡を作ります。

まとめ(明日からの一手)

  • 原因は「図面と段取りと場づくり」。ここを整えると不具合は減ります。
  • 手順は固定化し、数値は設計図書を最優先に確認します。
  • 写真は全景→近景→数値の順で、誰でも分かる形にします。
  • 是正は前・中・後の痕跡を残し、関係者に即共有します。

まずは自社のチェックリストをA4一枚に再編集し、道具セットを一箱にまとめましょう。次の配筋検査から、段取りの差がすぐに出ます。

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