配筋検査チェックポイント|原因から手順・例までやさしく解説

結論:配筋検査チェックポイントの全体像

配筋検査チェックポイントを押さえると、打設後のはつりや手直しが激減します。最初に「図面どおり」を数値で確認し、次に「ずれの原因」を断つ段取りが効きます。この記事では、原因→具体策→手順→実例→注意点の順で、明日から使える実務のコツをまとめます。

特に大切なのは、かぶり厚さ(表面から鉄筋までの厚み)、ピッチ(鉄筋の間隔)、定着長さ(鉄筋を埋め込む長さ)です。ここが崩れると、耐久性と耐力が落ちます。数値は言い切って確認し、写真で残す。これが品質と説明責任の土台になります。

不具合の主な原因と現場発生の背景

かぶり不足の多くは、スペーサーブロック(鉄筋の高さ保持材)の不足や配置間隔の広さが原因です。型枠との離れが均一でないと、局所的に薄くなります。荷重の移動や通行でスペーサーが倒れることもあります。

ピッチ不揃いは、墨出しが曖昧だったり、結束時の基準線が無いことが要因です。スタート位置がぶれると、末端で大きなずれになります。結束線の締め過ぎで引き寄せ、寸法が変わることもあります。

定着・継手ミスは、定着長さの読み違い、フック角度(曲げの角度)不足、機械式継手やガス圧接(加熱接合)の識別ミスが典型です。梁端や柱脚での混雑により、余長が取れない配置計画も見落としやすいです。

スリーブ・開口周りの補強不足も頻発します。開口補強筋(開口を囲う追加筋)の種別や本数を、図面更新後に反映し忘れるケースが多いです。変更指示の伝達が遅れると、そのまま配筋が進んでしまいます。

具体策:図面の読み筋と事前準備

まず、施工図・配筋リスト・特記仕様の三点照合を徹底します。数字が違えば、最も新しい承認図を優先します。かぶり厚さは部位別(梁・柱・壁・スラブ)で表にして、現場掲示すると迷いが減ります。

チェックリストの核になる項目

  • かぶり厚さ:部位別基準とスペーサー種類(プラ/モルタル)
  • ピッチ:主筋・あばら筋(スターラップ:横方向のせん断補強)の間隔
  • 定着長さ・フック角度:D(鉄筋径)基準の算定根拠
  • 継手位置:重ね継手・機械式・圧接の採用範囲と集中禁止
  • 開口補強:スリーブ径、補強筋本数と端部U字筋
  • 支持材:サポート(馬:鉄筋を支える台)・チェアの間隔
  • 防錆:付着泥・油分・著しいさびの除去方法

測定器は、かぶりゲージ(簡易測定棒)、ピッチテンプレート(間隔用治具)、スチールスケールを基本セットにします。写真管理は、同一構図で「全景→中景→指差し寸法」の順に撮ると、後で比較が容易です。撮影前にスケールと黒マジックで寸法を入れると、第三者にも伝わります。

検査の進め方:打設前に迷わない手順

  1. 下地確認:型枠の通り・レベル・離れ止め位置を確認します。段差やごみはこの段階で除去します。
  2. 墨出し:中心線・ピッチ基準線を細いチョークで引きます。始点と終点を明示します。
  3. 材料確認:鉄筋径(D13など)・本数・継手種別をラベルで識別します。誤混入を防ぎます。
  4. 寸法検査:かぶり厚さ→ピッチ→定着長さの順で測定します。順序は固定します。
  5. 結束確認:結束線の向きと締め具合を見ます。締め過ぎは寸法を狂わせます。
  6. 開口補強:スリーブ・貫通孔まわりの補強筋、スペーサーの追加を見ます。
  7. 是正→再検:是正は必ず印(是正テープ)を付け、第三者で再検します。
  8. 写真記録:部位別に台帳化し、図面番号とリンクします。

測定のコツと治具の使い分け

  • かぶり厚さ:型枠面に直角で当て、三点測定の平均で判定します。端部だけで決めません。
  • ピッチ:端から3本目までと中央部をテンプレートで当てます。端部の寄りを抑えます。
  • 定着長さ:折り曲げ位置にチョークでマーキングし、Dの倍数を現場に書き込みます。
  • 継手:機械式はトルクマーク、圧接は圧接番号と外観(ふくらみ)を写真で残します。

実例:柱・梁・スラブでの判定ライン

柱配筋の例です。主筋D25、あばら筋D10@100(100mmピッチ)、かぶり40mmの仕様とします。チェックは、コーナー部かぶり40±5、スターラップのピッチ端部3ピッチは@50で密に、柱頭・柱脚の定着はラップ長さ40D以上を確認します。

梁配筋の例です。上端主筋D22×2、下端D19×2、スターラップD10@100、かぶり35mm。梁端部の定着長さは40Dを確保し、曲げ半径(R)も図面値に合わせます。吊り筋(梁を仮支持する筋)は、サポート間隔を600mm以内にして、たわみでかぶりが薄くならないようにします。

スラブ配筋の例です。上端メッシュD10@150、下端D10@200、かぶり20mm(屋内)。墨の基準線を1mグリッドで出し、ピッチの累積誤差を抑えます。スリーブ周囲はU字補強を2本追加し、かぶりが取れない場合はハーフスペーサーを併用します。

注意点:安全と品質を同時に守る

安全は最優先です。先行手すり・開口部のふさぎ・足元養生は、検査より前に整えます。梁上での跨ぎ作業は避け、踏板を設置します。鉄筋に体重をかけるとピッチが狂い、かぶりが薄くなります。

品質記録は、第三者に伝わる写真と言葉で残します。写真は「部位・方向・寸法・日付」を必ず入れます。台帳には、是正箇所と承認印を追記します。後戻りを防ぐ最短ルートです。

天候にも配慮します。雨天時はスペーサー下の泥の堆積で高さが変わります。打設前の最終確認では、清掃と水抜きを行い、かぶりゲージで代表点を再測定します。最終チェックで迷ったら、迷った項目だけ再撮影します。

まとめ:今日からできる一手と次アクション

  • かぶり・ピッチ・定着は数値で決める。順序を固定し、三点測定でブレを抑える。
  • スペーサーとサポートは「種類×間隔」を先出しで数量確保。倒れ対策もセットで。
  • 継手は種類ごとに識別・トルクマーク・番号で確実に記録する。
  • 写真は全景→中景→寸法の三段で同構図を徹底。図面番号と紐づける。

次アクションとして、現場用のA4一枚チェックリストを作り、部位別にかぶり・ピッチ・定着の基準と測定順を明記しましょう。道具セット(かぶりゲージ・テンプレート・スケール)を同じ箱にまとめ、誰でも同じ手順で検査できる状態にしておくと、品質の波が小さくなります。

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