鉄筋数量拾いは、手順をそろえればミスはぐっと減ります。この記事では原因と具体策、手順とスラブの実例までを通して、発注精度とコストの安定につなげます。次の配筋(鉄筋を組む作業)からすぐ使える形でまとめました。
なぜ「鉄筋数量拾い」でミスが出るのか
いちばん多いのは、図面の改訂見落としです。意匠・構造の両方を最新版か確認し、凡例(図面の約束事)も必ず見ます。
次に、継手や定着(鉄筋端部の差し込み長さ)の扱いぶれです。概算では内法で拾い、実行では定着を上乗せ、と段階を分けます。
開口・スリーブの控除忘れも定番です。小さな穴は無視できることもありますが、基準を決めておきます。
最後に、定尺(工場の標準長さ)換算のロスです。長さの割付とカット計画を先に作ると、ムダが減ります。
ミスを減らす具体策(チェックリスト)
- 改訂雲形と版数を確認。意匠・構造・配筋標準をそろえる。
- かぶり(コンクリートで覆う厚み)とピッチ(間隔)の基準を先にメモ。
- 拾い単位を決める(m、kg、本)。現場の発注単位に合わせます。
- 定着・継手の扱いを段階分け。概算は内法、実行で上乗せ。
- 開口控除の基準を決める(例:300mm未満は無視)。
- 定尺とカット案を先に作成。ロス率の目安も共有。
- 二人チェックを徹底。別色ペンで差分を残します。
手順(スラブを例に)
前提のそろえ方
図面の縮尺、寸法の内法・外法、梁成とスラブ厚を確認します。配筋の種類(主筋・配力筋)と呼び方も統一します。
使用径(例:D13)とピッチ(例:@200)、上下二層の有無、開口位置を赤でマーキングします。
拾いの手順
- 方向ごとに本数を出す。式は「本数≒寸法/ピッチ+1」。端部の扱いは凡例に従います。
- 1本あたりの長さを決める。まずは内法で拾い、メモに「定着+○○mm要」と残す。
- 総延長(m)=本数×長さ。上下二層なら×2。
- 重量(kg)=総延長×単位重量。D13は約0.995kg/mと覚えると便利です。
- 定尺割付を作成。ロスが多いところは長さ構成を見直す。
スラブ実例(10m×8m、D13@200、上下二層)
条件をシンプルにします。二方向とも等ピッチ、定着はあとで上乗せ、開口なしのケースです。
- 短辺方向の本数:8,000/200+1=41本(概算)。1本の長さは10.0m。
- 長辺方向の本数:10,000/200+1=51本。1本の長さは8.0m。
- 1層あたり総延長:41×10.0+51×8.0=410+408=818m。
- 上下二層なので総延長:818×2=1,636m。
- 重量:1,636×0.995≒1,628kg(約1.63t)。
ここに定着やハネ出し(端部の余長)を上乗せします。端部+0.3m×両端と仮定すると、1本あたり+0.6mです。
概算では総延長に+5%を目安にしておくと、加工やカットのロスも含めて大きく外しません。現場の標準に合わせて微調整します。
開口がある場合の調整
たとえば1,000×1,000mmの開口が中央にあるなら、その幅を通過する本数分だけ控除します。短辺方向は1,000/200=5本ぶん、各1.0mを差し引くイメージです。
同時に開口周りの補強筋(端部を囲う追加筋)を足します。図面指示がなければ、周囲に同径を2本ずつ、長さは開口寸法+左右100~150mmを目安にします。
注意点と現場のコツ
- 凡例優先:端部の数え方やピッチ始まりは、必ず凡例どおりに。
- かぶり確保:かぶり厚で有効寸法が変わります。拾いと施工を同じ基準にそろえます。
- 継手位置:継手(鉄筋のつなぎ)は集中させない。拾いでも位置をメモ。
- 定尺ロス:11~12mの定尺想定が多いですが、工場仕様を事前に確認します。
- 加工帳(曲げリスト)連動:曲げ形状は別拾いに。直棒と混在させない方が安全です。
- 二人確認:数量と前提条件は、必ず相互チェックで確定します。
まとめ
- 原因は「改訂見落とし」「定着の扱い」「開口控除」「定尺ロス」。
- チェックリストで前提をそろえ、式と単位を固定すると安定します。
- スラブ実例ではD13@200、10m×8m、上下二層で約1.63tが目安です。
- 定着や開口補強は段階的に上乗せ。5%前後のロス見込みで調整します。
次のアクションとして、自部署の標準値(定尺、ロス率、控除基準)をA4一枚で作りましょう。今日からの拾いが、ぐっと楽になります。
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