現場監督が悩む「型枠 数量拾い」と転用のズレ
最近のRC現場でよく聞くのが、型枠合板の数量拾いと転用回数の読み違い。見積数量は合っているのに、サイクル中に合板が足りない、逆に竣工間際に余りが山積み……。原因は「拾いの基準」と「同時使用面積(サイクル)」、そして「転用回数の実勢」がズレていることが多い。この記事では、現場で効く具体的な拾い方、施工方法、注意点、さらに歩掛やコストの考え方までを、現場監督・施工管理技士向けに一気通貫で解説する。狙いの検索キーワードは『型枠 数量拾い』『型枠合板』『転用回数』『施工管理』『歩掛』『現場監督 チェックリスト』だ。
型枠 数量拾いの基本と落とし穴
面積算定の基本式(壁・柱・梁・スラブ)
型枠合板の拾いは、コンクリート面に接する型枠面積がベース。実務での早見式は次のとおり。
- 壁型枠面積 = 壁の片面面積 × 2(両面) − 開口差引き
- 柱型枠面積 = 柱の周長 × 高さ(四周)
- 梁側面面積 = 2 × 梁成 × 延長
- 梁下面面積 = 梁幅 × 延長(スラブ直張りでなければ)
- スラブ下面(型枠) = 床面積(落とし込み、段差は個別調整)
ここでの落とし穴は二重計上と差し引きルール。梁下面をスラブ型枠で拾っているのに、梁拾いでも下面を計上してしまうミスは頻出。拾い表の列見出しに「梁下面はスラブ側で一括」などの社内ルールを明記しておくと事故が減る。
開口・逃げの差し引きルール
開口の差し引きは、社内基準を先に固めるのが鉄則。例えば「1.0m²未満は差し引かない」「連続開口は一本化して差し引く」「ハンチ・隅切りは実寸差し引き」など。差し引きが曖昧だと、出来高精算や協力会社との単価交渉で揉める。BIMや数量連携ツールを使う場合も、開口の扱いフラグを合わせるのがポイントだ。
施工方法の工夫と転用回数管理
合板の種類と歩留まり(転用回数の実勢)
型枠合板は種類で転用回数が大きく変わる。目安は以下。
- ラワン普通合板(12mm):3〜5回
- コート合板(フィルム貼り12mm):8〜12回
- メラミン合板:15〜25回
角部・開口際・納まりが複雑な箇所は消耗が早い。離型剤の希釈濃度、塗布量、取り外し時のバール位置、釘ピッチ(目安:150〜200mm)を管理するだけで、転用回数は2〜3回伸びる。パネル化(ユニット化)して再利用位置を固定すると、切り詰めが減って歩留まりが上がる。
歩掛・人員計画の目安(現場実感値)
条件に左右されるが、パネル化が進んだ標準的なRCでの肌感は次のレンジ。
- 壁型枠 組立:25〜35m²/人工・日、解体:40〜60m²/人工・日
- 梁・スラブ 支保工含む組立:20〜28m²/人工・日、解体:35〜50m²/人工・日
階高が高い、梁成が大きい、設備スリーブが多い、支保工干渉が多いと生産性は落ちる。逆にサイクル化、墨出しの精度、資材動線の短縮で歩掛は1.2〜1.5倍まで上がる。
具体事例と数字で理解する
例:地上5階RCの1フロアで、壁120m²(片面)、柱16本(600×600、H=3.3m)、梁(幅600、成800、延長60m)、スラブ300m²とする。
- 壁型枠面積 = 120 × 2 = 240m²(開口差引き5m²なら235m²)
- 柱型枠面積 = 周長2.4m × 高さ3.3m × 16本 = 126.7m²
- 梁側面面積 = 2 × 0.8m × 60m = 96m²
- 梁下面面積 = 0.6m × 60m = 36m²(スラブで拾うなら0)
- スラブ下面(型枠)= 300m²
同時使用面積(梁下面はスラブ側で拾う想定):壁235 + 柱126.7 + 梁側面96 + スラブ300 = 約757.7m²。合板1枚(910×1820)は1.656m²なので、必要枚数の目安は 757.7 ÷ 1.656 ≒ 458枚。端材ロス・欠損・予備を10%見ると 約504枚。
サイクルで転用する場合、同時使用面積での必要枚数(約500枚)を確保すれば回せる。もし総延べ面積(各階合計)で購買数量を決めるなら、例えばコート合板の転用10回想定で「総必要面積 ÷ 10 ÷ 1.656」でおよそを掴む。ただしサイクルのピーク面積が基準になるため、総量計算だけで手当てすると中盤で不足しやすい。
コスト目安(地域差あり):12mmコート合板 1枚2,500〜3,200円 → 1m²あたり約1,510〜1,930円。型枠大工手間は3,500〜5,000円/m²。上記757.7m²なら、材料費 約114〜146万円、手間 約265〜379万円。離型剤・金物損耗・クレーン回数を加味して見積る。
よくある失敗と回避策
代表的なトラブルは次の3つ。
- 梁下面の二重計上:拾い表に「梁下面はスラブ側」と固定文言を入れる。
- 開口差し引きのバラツキ:1.0m²未満不控除など、社内基準を先に合意。
- 転用回数の過大見積り:端材・欠損率10%を標準で見込み、角・開口用の別管理を実施。
また、BIM連携する場合は、仕上げ厚みや梁成の属性差が数量に波及する。IFC取込み後に「梁下面はスラブに含める」などの集計ルールをクエリ化しておくと、毎回の手直しが減る。
現場監督用チェックリスト(保存版)
- 拾いの前提を明文化(梁下面の扱い、開口差引き、端材ロス率)
- 同時使用面積とサイクル計画を連動(型枠返し日程、クレーン回数)
- 合板の種類と転用回数の想定(ラワン/コート/メラミン)
- 離型剤の希釈・塗布量を標準化(試験施工で肌確認)
- 釘ピッチ・補強当て板・角当ての標準図を配布
- 端材置場と再利用ルール(寸法別ラック、1Fで集中管理)
- 出来高管理は面積×単価で週次確認(歩掛の実績化)
- BIM/数量表は版管理(Rev.No付与、差分を色分け)
明日から使えるTips(施工管理の即効薬)
- 拾い表の先頭に「前提条件ブロック」をテンプレ化(コピペ厳禁、案件ごとに編集)。
- 合板は「同時使用枚数+10%」を初期購買、端材・欠損の増加時のみ段階発注。
- 角部・開口用にメラミン数十枚を混ぜると転用回数が底上げされる。
- 1フロア目は歩掛トライアル日として実績を取り、2フロア目で手待ちのボトルネック(資材動線・クレーン割付)を潰す。
- 出来高写真は面積単位で撮る(壁m²、梁側面m²)。週次報告と連動させ、請負精算の揉めを予防。
型枠 数量拾いは、式そのものより「前提の揃え方」と「サイクルとの整合」が勝負どころ。拾いの精度、転用回数の現実解、歩掛の可視化ができれば、コストも工期もブレが小さくなる。明日の工程会議で、まずは「同時使用面積」と「転用想定」を皆で合わせよう。
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