現場監督向け型枠数量拾いの鉄則

最近の現場で多い型枠数量拾いの落とし穴

図面変更が多い現場ほど、型枠 数量拾い の差異が後工程に効いてきます。開口の控除漏れ、梁底とスラブの二重計上、入隅出隅の扱い不統一、仮設支保工の割増忘れ。この4点で見積と実行が平気で5〜10%ズレます。2024年の時間外労働上限規制の本格適用でやり直しは致命傷。施工管理としては、拾い方のルール化とBIMや表計算のテンプレ化でスピードと再現性を担保するのが鉄則です。

型枠数量拾いの基本ステップ(RC造)

壁・柱・梁・スラブの拾い方(式と単位)

前提は㎡で統一。壁は両面か片面かを冒頭で決めます。

  • 壁型枠面積 = 壁長 m × 階高 m × 面数(両面は2、片面は1) − 開口面積㎡
  • 柱型枠面積 = 柱周長 m × 階高 m(角柱300×600mmなら周長1.8m)
  • 梁型枠面積 = (2 × 梁せい m + 梁幅 m) × 梁長 m(側面2面+下面1面)
  • スラブ型枠面積 = スラブ面積 ㎡ − 梁幅 m × 梁延長 m(梁底を別途計上する場合)

単位と小数点は図面の尺度に合わせ、最終は小数第2位で四捨五入(現場ルールで統一)。

開口・入隅出隅の扱いを統一

  • 開口控除は有効開口で拾う(例: サッシW2000×H2100は4.20㎡、額縁増しは別計上)
  • 入隅・出隅は外周側を優先し、内周は差し引く片寄せ方式で二重計上を防ぐ
  • 設備スリーブ群は1箇所0.2㎡未満は寄せて合算(ルール明記)

型枠システム別の係数と注意

  • 合板型枠(面材12mm): 曲がりやすく小割が増える。開口周りは10〜15%手間増を見込む
  • メタルフォーム: 回転回数が取れるフロアは有利。曲面や斜壁は別途見積
  • 支保工割増: 階高3.5m超、荷重集中部(梁成600mm超)は支保材本数と筋交いを増し

具体事例:25m×18m、H=3.2mの標準階

条件: RC造、外周壁は両面型枠、内側に角柱、梁成600mm×幅400mm、スラブ厚150mm。開口はサッシ2.0×2.1が8箇所、扉1.0×2.1が2枚。

  • 外周長 = 2×(25+18)= 86m
  • 壁面積(両面)= 86m × 3.2m × 2 = 550.4㎡
  • 開口控除 = サッシ 2.0×2.1×8= 33.6㎡ + 扉 1.0×2.1×2= 4.2㎡ → 計 37.8㎡
  • 壁正味 = 550.4 − 37.8 = 512.6㎡
  • 柱(600×600、12本)= 周長2.4m × 3.2m ×12= 92.16㎡
  • 梁延長 = 25m方向の梁4列→ 25×4=100m、18m方向の梁5列→ 18×5=90m、計 190m
  • 梁面積 = (2×0.6+0.4)× 190 = 1.6×190 = 304㎡
  • スラブ面積 = 25×18 = 450㎡
  • 梁底の重複調整 = 梁幅0.4× 梁延長190 = 76㎡
  • スラブ正味 = 450 − 76 = 374㎡
  • 型枠面積合計 = 512.6+92.16+304+374 = 1,282.76㎡(端数調整で1,283㎡)

参考単価と歩掛のレンジ(地域差あり):

  • 単価目安 4,800〜5,500円/㎡(材工、支保工込)
  • 労務歩掛 0.06〜0.10人工/㎡

概算コスト例(5,000円/㎡): 1,283㎡ × 5,000円 = 約6,415,000円。労務は0.08人工/㎡なら 1,283 × 0.08 = 102.6人工。大工8名編成で約13日相当。実際は鉄筋・コンクリートと重ねて7日サイクルに圧縮(先行梁・後行スラブで段取り)。

チェックリスト(拾い漏れゼロの手順)

  • 図面の確定版を確認(梁伏・軸組・躯体表と整合)
  • 両面・片面、梁底の計上ルールを冒頭で決定し、シート冒頭に明記
  • 壁は通り芯長で拾い、入隅出隅は外周に寄せる
  • 開口は有効寸法で控除。額縁・まぐさ・方立は別行で加算
  • 梁は延長を通り別に集計。交差部の重複は底幅で調整
  • スラブは総面積から梁底分を控除。段差や吹抜けは別管理
  • 支保工の割増条件(階高、荷重集中、通行動線)をチェック
  • 拾い表は㎡小計→部位合計→階合計の三段で検算。現場写真で実績フィードバック

最新動向と注意点(2024〜2025)

働き方改革で残業上限が厳格化。型枠工の不足も続く中、数量拾いの標準化が生産性の鍵です。BIMモデル(IFC)から壁・梁・柱の面積と延長を吸い上げ、スラブの梁底控除だけ手修正するワークフローが現実解。メタルフォームの回転管理は回転回数10回で面材損料を低減。高所支保工では先行手摺や墜落制止器具の取付点を計画段階で数量に反映(安全コストを見積から外さない)。

まとめ:明日から使えるTips

  • 梁は延長を先に決め、梁底控除をスラブ側で一本化
  • 入隅出隅の寄せ先をチームで固定し、拾い表に明文化
  • 開口控除は5㎡以上は単独行、未満は合算のルールでスピード化
  • 検算は部位別小計×係数のラフ見で±3%以内を目標
  • BIMやPDF数量化ツールを使い、手拾いは差分確認に限定
  • 歩掛は0.06〜0.10人工/㎡のレンジで初期計画、週次で実績補正

型枠 数量拾い はルール化と反復で精度が上がります。今日の拾い表を雛形化し、次の階で1割速く、1%精度高く。施工管理の積み上げが、工期短縮と原価低減に直結します。

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