床仕上げの数量拾い|施工管理がやりがちな誤差をゼロに
図面のまま拾って「材料が余った」「足りずに追い発注」は、床仕上げでよくある現場課題です。原因はロール方向や割付を無視した机上拾い、巾木・見切り・接着剤の副資材抜け、下地調整の歩掛見誤り。この記事では、床仕上げの数量拾い(タイルカーペット・長尺シート)を、現場監督の視点で実務手順に落とし込みます。SEOキーワードは『床仕上げ 数量拾い』『施工管理 拾い方』『ロス率 歩掛』です。
本論|床材別の数量拾いと注意点
タイルカーペットの数量拾い(500mm角想定)
基本は「有効面積(㎡)×ロス率」。面積は柱・PS・出入口の三方見切りなどの不可貼り部を差し引きます。タイルは割付でロスが変動するため、矩形多めなら3〜5%、屈曲が多い小割空間は5〜8%が目安。500mm角なら1㎡あたり4枚、枚数=面積×4×(1+ロス率)。流し方向や市松の指定がある場合、窓際や通路の通りを基準に芯出しして割付図を簡単にでも起こすと、端部の半端カット枚数が見えます。接着剤は感圧式で0.20〜0.30kg/㎡(メーカー仕様書を確認)。
長尺塩ビシートの数量拾い(巾1,820mmロール想定)
ロール材は「展開図」が肝。流し方向を決め、必要スパン数=(貼り幅÷1,820)を切上げ、各スパン長さに重ね代(一般に30〜50mm/片)を加算します。立上り(巾木一体やソフト巾木切回し)や巻上げがある場合は、壁周長(m)×立上り高(mm)で計算。ロス率は平場5〜7%、柱やRが多いと8〜12%。現実的には、製品ロール長(例:10〜20m/巻)を意識して1巻ごとの取り都合を算出し、ジョイント位置を通路中心や家具下に逃がします。接着剤は一般圧着0.30〜0.40kg/㎡、耐動荷重仕様は増し。溶接棒は目地延長(m)+端部予備3%。
副資材・下地調整の拾い(見落とし注意)
・巾木:壁周長から開口(ドア有効巾×枚数)を控除し、入隅・出隅の役物ロス2〜3%を上乗せ。
・見切り:素材別(アルミ・真鍮・塩ビ)、段差見切りは通路端部延長(m)で拾う。
・下地調整:パテは0.10〜0.25kg/㎡(下地ムラで変動)。自流平(SL)は1.6〜1.9kg/mm/㎡、厚み平均値(mm)を設定して袋数=面積×厚み×係数÷25kg。
・端部シール:巾木上端・水回りは延長(m)で+予備5%。
最新トレンド|BIM・DXで数量拾いの精度を上げる
BIMモデルの「部屋仕上げ表」から床仕上げ面積(㎡)と周長(m)を出力し、Excelへ連携する運用が増えています。注意点は仕上げ境界の形状(壁芯か仕上げ芯か)、立上りの設定、開口部の控除ルール。2D図面でも、仕上げ記号と境界ポリラインを揃えて属性化すれば、面積と周長を同時抽出可能。現場は最終的に割付で微調整するため、BIM数量×ロス率の初期見積→実施設計後の割付反映で確定見積、という二段階が無駄がありません。なお2024〜25年は床材・接着剤の価格が累計5〜12%上昇傾向。見積では単価更新と歩掛の再確認が必須です。
事例・数字でみる|650㎡オフィスの拾い方
条件:執務室・会議室計650㎡、タイルカーペット(500mm角・市松)、通路は同材。巾木90mmソフト、SLは執務室400㎡に平均3mm。
1) タイルカーペット:面積650㎡、ロス率5%→必要面積682.5㎡。枚数=682.5×4=2,730枚。
接着剤:0.25kg/㎡→682.5×0.25=170.6kg→18kg缶×10缶(端数切上)。
2) 巾木:周長360m−開口(0.9m×28枚)=334.8m→ロス2%で342m。2.5m/本→137本。
3) 見切り:段差・端部合計55m。
4) SL:係数1.8kg/mm/㎡→400㎡×3mm×1.8=2,160kg→25kg/袋×86袋。
5) 工期と歩掛:カーペット敷き100㎡/人日で3人編成→約2.2日+下地1日。
6) 概算コスト(参考):
・タイル材 2,900円/㎡→650㎡=1,885,000円
・接着剤 600円/kg→約102,000円
・巾木 材+手間 750円/m→256,500円
・SL材 2,100円/袋→180,600円
・施工手間(床敷き)900円/㎡→585,000円
小計:約3,009,000円+予備・共通仮設。単価は地域・仕様で変動します。
実務チェックリスト(施工管理の拾い方)
- 図面確認:仕上げ境界は仕上げ芯か?開口の控除幅(有効巾)を統一。
- 割付決定:通り芯・通路中心で基準設定。市松/同方向の流し方向を明記。
- ロス率設定:タイル3〜8%、長尺5〜12%。「形状難易度」で根拠を残す。
- 副資材:巾木(m)、見切り(m)、溶接棒(m)、端部シール(m)を漏れなく。
- 下地調整:SL厚み(mm)と面積(㎡)の根拠写真・レベル計測を添付。
- BIM/数量表:部屋ごとの面積・周長をCSV出力し、拾い根拠として保存。
- 搬入計画:ロール長・エレベーター内法(mm)・曲がり角Rを事前確認。
- 試験施工:接着剤の塗布量(kg/㎡)とオープンタイムを現地で確認・記録。
- 養生・引渡:目地通り、ジョイントシームの押さえ、端部シールの連続性を写真記録。
まとめ|明日から使えるTips
・数量拾いは「面積」だけでなく「周長」と「ロール展開」を同時に考える。
・ロス率は経験則ではなく、割付図で裏取りして根拠を残す。
・接着剤・SLはkgや袋数まで必ず算定し、缶・袋の端数は切上げる。
・BIM/Excelの数量を初期見積に活用し、実施段階で割付反映の二段階精度管理。
・価格上昇局面では単価と歩掛の年度更新を忘れない。
この手順を回せば、床仕上げの数量拾いはブレが減り、見積・発注・施工の全工程でロスと手戻りを抑えられます。
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