現場監督必見 雨天の外壁工事対策

最近増える“にわか雨リスク”にどう対応するか

ゲリラ豪雨や線状降水帯で、外壁工事の段取りが崩れる現場が増えています。塗装の白化、タイルの付着不良、ALC目地シーリングの泡・剥離…どれも「雨の読み違い」「養生の甘さ」が原因のことが多い。この記事では、現場監督が明日から使える「外壁工事 雨天 対策」の実務ポイントをまとめます。キーワードは“数値で判断”と“仮設標準化”。

雨天時の外壁工事対策(施工管理の要点)

1. 施工可否の数値基準(塗装・タイル・サイディング・ALC)

現場の共通言語にするため、可否を数値で決めます。

  • 降水量:1mm/h以上で外壁塗装・タイル張り・シーリング打設は原則中止。0.5〜1mm/hの弱雨でも、飛沫・養生内結露が懸念される場合は見合わせ。
  • 風速:8m/s以上で足場上の大判材(サイディング、養生シート)取扱い中止。メッシュ掛け替えも不可。
  • 相対湿度:85%超は溶剤型塗料の白化・乾燥遅延リスク。水性は特に不利。下地温度5℃未満も不可。
  • 下地含水率(目安):モルタル・コンクリート8〜10%以下、木下地15%以下。ALCは表層乾きでも内部含水に注意。
  • シーリング:プライマー塗布後、乾燥時間30〜60分(20℃)。可使時間内に降雨が予測される場合は着手しない。

この「数値基準」を朝礼で共有し、作業中止の判断を感覚ではなくデータで行うのが肝です。

2. 仮設・養生計画の標準化(雨養生の設計)

  • メッシュ+防水シートの二層:外側にメッシュ、内側にターポリン0.35mm厚をジョイント重ね300mm、ブチルテープで止水。裾は150mm折返しで水返しを作る。
  • 開口部庇:L=1,800mmの簡易庇(角パイプ+ターポリン)。雨筋の直撃を回避し、塗装・ALC目地の乾燥を守る。
  • 排水計画:足場段ごとに水抜き位置を意図的に設置。1スパンに1か所(約1.8mピッチ)でシート下の溜まり水をゼロに。
  • 材料仮置き:地面から200mm以上嵩上げ。サイディングは外周部から500mm離し、ブルーシートは二重掛け(上層に勾配)。

3. 工種別の施工方法の工夫

  • 外壁塗装(JASS18目安):下地温度10〜35℃、湿度85%以下、含水率10%以下。雨上がり直後は露戻りがあるため、送風+赤外線ヒーターで下地温度を+3〜5℃上げて露点を回避。塗布量は標準0.12〜0.15kg/㎡を厳守。
  • タイル張り(JASS19目安):雨滴で接着剤の皮張り・水希釈が起きるため、張付け1〜2時間は無雨が条件。下地吸水調整は含水率10%以下で行い、白華対策として目地詰めは24時間以上乾燥後。
  • サイディング:胴縁含水率20%超は取付け見合わせ。釘・ビス頭は締め込み過ぎを避け、板の熱伸縮を考え1mm浮かせ気味に。目地防水テープは濡れ厳禁、貼付後プライマーは乾燥を確認。
  • ALC:搬入時の吸水を避け、90mm角材で離隔。目地は幅15〜25mm、厚さ10mmを確保。プライマー乾燥30〜60分、打設後24時間は無雨養生。

4. 工程の見直しと“天気を読む”段取り

気象APIのNowcast(降雨強度5分更新)を活用し、10〜15時の“乾き時間帯”に湿式作業を集中。前後は乾式・内作業に切替えます。クリティカルパス上の外壁工程は「予備日+1日」を初期から確保。週次でP6やガントチャートに降雨シナリオ(5mm/h×2日)を織り込み、残業や人員増を避けるのがコスト最適。

5. 品質管理・検査ポイント

  • 含水率は各面ごとに3点測定し、最大値で判断。
  • 塗膜厚はウエットゲージで0.10〜0.12mm/回を確認。二度塗り間隔は製品規定+環境補正(湿度高で+30%)。
  • シーリングは三面接着防止のボンドブレーカーが濡れで剥がれやすい。貼付後、指触で粘着を確認。

事例・数字で見る“雨対策”の効果

外壁塗装500㎡の現場。降雨予報をもとに、赤外線ヒーター2台(5,000円/台・日)+送風機2台(2,000円/台・日)を手配。雨上がり2時間後から再開し、1日あたり180㎡→250㎡へ生産性向上。追加機材費14,000円/日に対し、工期短縮1日、現場共通経費削減6万円で差引+4.6万円の効果。

別現場(ALC目地600m、幅25mm×厚さ10mm)。弱雨下で強行した結果、泡・接着不良が発生し再施工に35万円、工期+2日。プライマー後の降雨回避(24時間)を厳守し、以後はNowcastで“連続無雨3時間”を確保してゼロクレームに。

雨天対策のチェックリスト(当日朝の判断フロー)

  • 前日17:00:気象アプリで1時間降水量と雷注意報を確認。降水量基準(1mm/h)と風速(8m/s)の中止閾値を班長と共有。
  • 前日17:30:代替作業(室内墨出し、アンカー検査、サッシュ調整)を工程表に追記。材料仮置きの防水二重化。
  • 当日07:00:現地で温湿度計・含水率計を使用。外壁3面×3点の含水率を測定し最大値で判断。
  • 当日08:00:足場の雨養生シート、重ね300mm・裾折返し150mm・水抜き位置を目視チェック。
  • 当日10:00:雨雲レーダーで5分先の降雨セルを確認。湿式→乾式へ切替えるならこのタイミングで指示。
  • 作業中:塗装はウエット膜厚を各50㎡で1回測定。シーリングは試験片で硬化確認。

最新トレンド:デジタルと小機材で“乾かす”

・気象API連携の工程管理(Nowcast+ショートレンジ予測)で、班編成を午前・午後で可変化。・バッテリー式送風機+赤外線ヒーターで下地温度を一時的に上げ露点を回避。・防炎メッシュとターポリンのハイブリッド養生が標準化。小さな投資で大きな品質安定を得られます。

まとめ:明日から使えるTips

  • 可否は数値で決める(降水1mm/h、風速8m/s、湿度85%、含水率10%)。
  • 雨養生は“設計”する(重ね300mm、裾150mm、水抜き1.8mピッチ)。
  • Nowcastで“連続無雨3時間”を確保して湿式作業を配置。
  • 送風+赤外線で露点対策、下地温度を+3〜5℃。
  • 含水率は面ごと3点測定、最大値で判断。
  • 代替作業リストを常備し、朝礼で意思決定を5分で。

「雨だからできない」から「雨でも進める」へ。現場監督の一手で、外壁工事の品質と工程はまだ伸ばせます。

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