導入(課題提示・なぜ今)
「長尺シートの数量拾い、原反の幅や巻き長で毎回計算がブレる…」という相談が増えています。材料単価が上がる中、ロス率の1〜2%はそのまま粗利に響く。この記事は、長尺シート数量拾いの検索意図=“原反幅と巻き長を踏まえ、実施工に沿って過不足なく見積・手配したい”に100%合わせ、現場でそのまま使える算出手順と数字を一式でまとめます。
本論(長尺シート数量拾いの要点)
狙いは「面積×係数」ではなく、原反幅(例:1,820mm/910mm)と巻き長(例:20m)を基準に“割付→本数→端材→副資材”まで連鎖で拾うこと。特に通路や居室で貼り方向が変わるとロスが急増します。長手方向を優先、目地位置は出入口から外す、立上げや巾木の有無で長さが変わる、ここを外さないのがコツです。
手順・段取り
- 1. 仕上範囲の確定:図面の床仕上記号を確認(例:塩ビ長尺シート2.0mm、原反W=1,820mm、巻きL=20m)。立上げか巾木かも先決。
- 2. 貼り方向の決定:原則、室や廊下の長手方向に合わせ、目地本数を最小化。柄方向が指定なら優先。
- 3. ストリップ(帯)本数の計算:室の有効幅/原反幅で必要帯本数を算出。端部の割付(左右の見切り)で調整。
- 4. 1帯あたりの有効長:室長+見切り/立上げ分(例:壁際見切りで+50mm、立上げ100mmなら+100mm)。
- 5. 巻割(何本から何カット取れるか):1巻20mなら、1帯長4.9m→1巻で4カット(4.9m×4=19.6m)。端材0.4mは別室で再利用可否を検討。
- 6. 総カット数と必要巻数:帯本数×室数→総カット数/巻から取れるカット数=必要巻数(端材転用は安全側に0.5巻上乗せ)。
- 7. 接着剤・パテ・プライマー:接着剤0.25〜0.35kg/m²(アクリル系目安)、下地調整パテ0.5〜1.0kg/m²(2回塗り想定)。
- 8. ジョイント延長と溶接棒:ジョイントは帯同士の突き合わせ延長。溶接棒はジョイント延長+端末処理分(必要時)。
- 9. 巾木・見切り・見切り金物:周長から開口部を差引き。ソフト巾木は60〜100mmが一般的。金物は定尺(例:L=1,820mm)で本数に換算。
- 10. ロス率の確定:矩形室で3〜5%、入隅/開口多で8〜12%、柄合わせや曲線納まりで12〜15%を初期係数に。端材の再利用が確定できる場合のみ係数を下げる。
コストと工期の目安(数値と前提)
前提:長尺シート2.0mm厚、W=1,820mm、L=20m。居室+廊下の混在100m²規模。
- 材工単価目安:5,500〜8,000円/m²(下地状態・溶接有無・夜間/病院稼働中で変動)。
- 接着剤:0.3kg/m²×100m²=30kg(18kg/缶→2缶)。
- 下地調整:0.8kg/m²×100m²=80kg(粉体+樹脂のセット換算)。
- 溶接棒:ジョイント延長40mなら、巻/棒の実長で換算(例:50m/巻→1巻)。
- 人員・日数:2人×1〜1.5日で貼り込み+翌日溶接・端部処理0.5日。合計実働2.5〜3人日。
含水率、気温、オープンタイムで歩掛は変わります。メーカー仕様(接着剤の開放時間・圧着条件)を必ず優先してください。
事例・数字(㎡、m、mm、人数、日数、単価、ロス率)
事例A:病院廊下 35m×2.2m=77m²、W=1,820mm貼り、L=20m。
- 帯本数:2.2m/1.82m=1.20→2帯。
- 1帯長:35.05m(見切り各+25mm)→巻からの取数:20m÷35.05m=0→1帯につき2巻必要。よって廊下は帯2本×各35.05m=70.1mのシート長が必要。20m巻なら4巻で余り約9.9m(端材)。
- ジョイント延長:中心で35m×1本=35m。
- 面積:77m²、ロス率5%(単純矩形)→発注面積81m²相当。
- 接着剤:0.3kg/m²×81m²=24.3kg(18kg/缶→2缶)。
- 人員:2人×1日(貼り込み)、翌日0.5日で溶接→計2.5人日。
事例B:居室 3.6m×5.0m=18m²、W=1,820mm、立上げ無し・巾木仕上げ。
- 帯本数:3.6/1.82=1.98→2帯。
- 1帯長:5.05m(見切り各+25mm)。
- 巻からの取数:20m÷5.05m=3カット(15.15m)→1巻で3カット。室2帯→1室あたり0.67巻。
- 10室なら必要巻数:0.67×10=6.7→7巻(端材で1室分リカバリできる可能性あり)。
- 発注面積:18m²×10室=180m²、ロス率8%(開口・入隅多め)→195m²。
- 巾木:周長(2×(3.6+5.0)=17.2m)×10室=172m、開口差引-2.0m×10室=-20m→152m。
端材の横使い(W=1,820の端材を狭所に910幅で再割付)を事前に設計すると、ロス率を2〜3pt下げられます。
チェックリスト(保存推奨)
- 貼り方向は長手優先か?柄・目地位置の指定は図面/内装承認で確定済みか。
- 原反幅・巻長(例:W=1,820mm、L=20m)を見積前にメーカーで確認したか。
- 立上げ or 巾木の方針決定済みか(立上げは帯長が+100〜150mm/壁面)。
- 帯本数は「室幅÷原反幅」を小数切上げで算出し、左右割付の見栄えを検討したか。
- 巻割は「巻長÷1帯長」でカット数を先に確定し、端材の再利用先まで割付図に反映したか。
- ロス率の初期係数(矩形3〜5%、複雑8〜12%、柄合わせ12〜15%)を根拠付きで設定したか。
- 接着剤・パテ・プライマーの仕様と使用量(kg/m²)をメーカー値で確認し、10%程度の余裕を積んだか。
- ジョイント延長から溶接棒数量を算出し、見切り・金物は定尺→本数に変換したか。
- 下地含水率・平滑度の基準を満たす計画か(含水率はメーカー許容以下、レベル差・ピンホール処理)。
- 工程:貼り込み日と溶接/端部仕上げ日を分け、通行制限時間(例:24時間)を関係者に共有したか。
最後に。長尺シート 数量拾いは「面積」ではなく「帯」で考えるとブレません。割付図を一枚描き、巻割と端材再利用を先に決める。これだけでロス率が目に見えて下がります。現場の粗利を1〜2pt引き上げる定石として、この記事をいつでも見返してください。
コメント