雨天時の外壁工事対策が甘いと、品質も工程も崩れる
最近の現場はゲリラ豪雨と強風がセットで来る。外壁工事は「少しの雨なら続行」で判断を誤ると、長期の白化・剥離・漏水クレームに直結する。この記事では、現場監督が即使える「外壁工事 雨天 対策」と「施工可否の判断軸」を、実務のリズムで整理する。キーワードは〈降雨量〉〈風速〉〈含水率〉〈養生〉〈工程管理〉だ。
本論:雨天対策の施工方法と判断基準
施工可否の基本判断(外壁工事 雨天 可否)
天気予報ではなく現場の実測で決める。目安は以下。
- 降雨量:0.5〜1.0mm/h以上で「塗装・シーリング・プライマー」は中止。張付け系も基本停止。
- 風速:10m/s以上で「サイディング荷上げ・パネル建方」は停止。6〜8m/sでも面材のあおりに注意。
- 含水率:サイディング下地(木下地)15%超で張り不可。ALCは表面乾燥+含水率10〜12%以下を目安。
- 温湿度:気温5〜35℃、相対湿度85%以下(塗装・シーリング)。露点差3℃以上を確保。
判断は「1時間先までの降雨レーダー」と「露点計・含水率計」のセットで。曖昧なら中止が正解。
材料別の雨天時ポイント(サイディング・ALC・塗装・シーリング)
- 窯業系サイディング:カット面が濡れた状態での取付はNG。カット後は速やかにシーラー。コーキング打設はプライマー乾燥4〜6hを厳守。
- 金属サイディング:裏打ち断熱材の吸水と錆リスク。端部止水テープは乾燥面で圧着。気温10℃未満は粘着低下に注意。
- ALCパネル:雨掛かり直後の目地打設は可塑剤ブリードの原因。面含水率12%以下でプライマー→シーリング。
- 外壁塗装:上塗りは露点差3℃以上。水分残りはピンホール化。塗布量は上塗り0.12〜0.18kg/㎡(メーカー仕様)を守る。
養生と仮設足場の工夫(雨対策・品質管理)
続行できる作業も「養生が甘いと全部やり直し」。
- メッシュシートの重ね:縦100mm・横150mm重ね+1.5mピッチで結束。コーナーは二重張り。
- ブルーシート雨除け:軒先から1.0m張り出し、勾配1/10で排水。シート端部にφ8mmロープ、1.2mピッチで緊結。
- 排水ルート:各層に雨樋仮設または雨だれ受け。足場板に溜め水を作らない。
- 搬入動線:濡れ材と乾燥材を分離保管。パレット下に50mm角木、地面から100mm以上のクリアランス。
養生材・副資材の数量の拾い方(実務)
- メッシュシート:足場外周長L(m)×層数×床高H(m)で面積m²算定。例:周長90m×6層×1.8m=972m²。
- ブルーシート:吹き降り面のみ面積×1.2(重ね余裕)。
- 防水テープ:開口周り延長+シート重ね部。開口1カ所あたり5.6m(周長)×箇所数。
- シーリング:目地延長(m)×断面積(例10mm×10mm=100mm²)→必要量=延長×0.1L/m目安。
- プライマー:0.1〜0.2kg/㎡。目地底は刷毛、外面はウエスで余剰拭き取り。
事例・数字で見る雨天対策の効果
5階建て共同住宅、外壁1,200㎡(サイディング800㎡+ALC400㎡)、シーリング延長1,800mの現場。梅雨期の降雨日10日/30日を想定。
- 工程:通常サイディング張りは30㎡/日/班。雨天は20㎡/日まで低下(−33%)。
- 対策前:雨天でも続行し、後補修(塗り重ね・シール打ち替え)で3日増。コスト+38万円(手間25万円+材料13万円)。
- 対策後:含水率計2台導入(各3万円)、ブルーシート増設(20枚×1,500円)、シート二重張り(1面2万円)。追加コスト計約13万円。
- 効果:不良ゼロ、工程遅延1日に圧縮。1日停止=職人5人×2.5万円=12.5万円。結果、純増コストほぼ相殺+品質安定。
- 品質指数:雨染み・白華の補修ゼロ、引渡し前手直し工数−24h。
数値で見ると「止める勇気+養生投資」が最も安い。
現場監督のチェックリスト(雨天時 外壁工事)
- 6:30 気象レーダーで1時間先までの降雨確認(アプリは2〜3本併用)。
- 7:30 露点・湿度・気温を記録(写真保存)。露点差3℃未満は塗装中止。
- 8:00 含水率計で下地5点サンプリング(15%以下で張り可)。
- 8:15 足場シートの重ね・結束・排水ルート確認。風速8m/s予報なら二重張り手配。
- 午前作業:切断は屋内・テント下、端部シーラーは当日中に。
- 午後判断:降雨1mm/h予測→シーリング・プライマー中止、代替作業へ切替。
- 終業時:濡れ材料は別置き。開口部・取合いは仮止水を写真記録。
まとめ:明日から使えるTips
- 可否を数値で決める表を作る(降雨0.5mm/h・風速10m/s・含水率15%)。詰所に貼る。
- 含水率計・露点計を常備(各3〜5万円)。判断の客観証拠に。
- 「代替作業リスト」を雨天用に準備(開口回り役物加工、先行墨出し、端部ケレン、是正清掃)。
- 養生の数量は事前拾いで1.2倍手配。メッシュ二重・ブルーシートの在庫を1面分は常備。
- 写真と数値ログを日報にセット化。後日の品質説明とクレーム予防になる。
雨は敵ではなく「判断を試す試験」。外壁工事の雨天対策は、数値基準・養生・工程切替の三点セットで回す。現場監督の腕の見せどころだ。
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