なぜ土間コンクリートは“管理勝負”なのか
土間コンクリートは面積が大きく、一度に大量の生コン・人員・機械が動くため、数量拾いの誤差や段取りの遅れがそのまま品質低下とコスト増に直結します。とくに打重ね時間、スランプ管理、目地切りのタイミングは取り返しが利きません。本稿では「数量拾い」と「施工管理」を1本に束ね、現場で即使える具体値と手順を提示します。
数量拾いの基本とロス見込み
コンクリート数量の計算式
基本式:体積(m3)=面積(m2)×厚さ(m) − 埋設物体積(m3)+ロス(3〜5%)
- 例:倉庫土間 面積200m2、厚さt=120mm(0.12m)→ 200×0.12=24.0m3
- 埋設配管・ピットの差引:例)配管溝0.3m×10m×0.2m=0.6m3 → 24.0−0.6=23.4m3
- ロス見込み:5%を追加 → 23.4×1.05=24.57m3(発注は25.0〜25.5m3を検討)
ポイント:
- 埋戻しモルタル厚やカッター目地切欠分は通常わずかですが、ピット・集水桝は必ず差し引き。
- 排水勾配がある場合は平均厚さ=(最厚+最薄)÷2 で計算。
配筋・メッシュの概算重量
D6@100(φ6、100mmピッチ)メッシュの理論重量の目安:
- 単位重量(D6)=0.222 kg/m
- 1m2当たりの鉄筋延長=(1/0.1m)×1m×2方向=20m
- 重量=20m×0.222=約4.44 kg/m2
例:200m2 → 約888kg。結束線は鉄筋重量の1〜1.5%を目安に9〜13kg程度を準備。
伸縮目地・副資材の拾い
- カッター目地ピッチ:3〜5m(走行荷重・日射条件で調整)
- 200m2(10m×20m想定)で4mピッチなら、長手方向4列・短手方向2列程度。切断延長の概算=10m×4+20m×2=80m。
- 目地深さ:版厚の1/3〜1/4(t=120mm → 30〜40mm)
施工手順と管理ポイント(実務値)
受入検査と配合の目安
- スランプ:屋内土間で12±2cm(仕上げとポンプ圧送性で調整)
- 空気量:4.5±1.5%(耐凍害不要な屋内は3〜5%を目安)
- コンクリート温度:夏季35℃以下、冬季5℃以上を目安
- 納品書確認:呼び強度、粗骨材最大寸法、単位水量、混和剤種類、出荷時刻
到着後はスランプ・空気量の現場試験、温度測定を実施。出荷後時間が長い荷が続くと打重ね管理が厳しくなるため、配車間隔も同時にチェック。
打設計画(打重ねと配車)
- 打重ね可能時間の目安(現場感):
・外気30℃前後:45〜60分
・外気20℃前後:60〜90分
・外気5℃前後:90〜120分
部位や配合で変動するため、同一ブロックは連続打込みが基本。 - 配車例:必要量25.2m3の場合
・8m3車×3台(計24m3)+4m3車×1台(2m3積)を20分間隔でローテーション
・打設人員:ポンプ1、ホース2、トンボ2、バイブ2、レベラー1、仕上げ2(計10名前後) - ブロック割:目地位置でブロック化し、1ブロック2時間以内で完了する規模に抑える。
バイブレータと締固め
- 内部バイブ周波数:9,000〜12,000振動/分(約150〜200Hz)
- 挿入ピッチ:影響半径の1.5倍以内(一般的に30〜40cmピッチ)
- 1点あたり5〜15秒、過振動での材料分離に注意(表面にモルタル浮きすぎはNG)
- 前打込み層へ5〜10cm食い込ませて打重ね継目の気泡を消す。
レベル・平坦性管理
- レベル基準:レーザーレベル+受光器でガイドピンを10mグリッド(もしくは柱スパン)に設置
- 社内基準例:±3mm/10m、2m定規で隙間5mm以下(求められる仕上げ精度で調整)
- 仕上げ手順:均し→トンボ→パワートロウェル(1回目硬化前、2回目は浮き水消失後)
収縮ひび割れ抑制とカッター目地
- 切断タイミング:12〜24時間後の「早切り」を基本(指跡がわずかに付く程度の硬化)
- 深さ:版厚の1/3〜1/4(t=120mm → 30〜40mm)
- ピッチ:3〜5m、開口・柱際はコーナーから45°方向に補助目地を1〜2本
養生の勘所
- 湿潤養生:夏期3〜7日、最低でも24〜48時間は乾燥風・直射日光を遮る
- 養生剤散布:0.2〜0.3L/m2の目安で均一塗布(仕上げ仕様と両立確認)
- 冬期保温:表面温度5℃以上を48時間確保。断熱マットや早強配合を併用。
実例で確認:200m2×t=120mmの倉庫土間
前提:10m×20m、埋設配管溝0.3m×10m×0.2m、D6@100メッシュ、カッター目地4mピッチ、夏期AM打設。
- 数量拾い:24.0−0.6=23.4m3 → ロス5% → 24.57m3(発注25.2m3)
- 配車計画:8m3車×3台+4m3車×1台(2m3積)、20分間隔。初車8:30着、最終10:30着目安。
- 人員計画:10名(前述構成)。昼前には均し完了、午後にパワートロウェル2回。
- スランプ・空気量:現場試験で12cm・4%程度を確認、温度32℃→遅延剤添加有無をプラントと即時連絡。
- 目地:4mピッチ→切断延長約80m、深さ40mm。翌朝8時に一斉切り。
- 養生:散水+養生剤0.25L/m2、直射養生ネットで3日間。
結果イメージ:2m定規で最大隙間4mm、表面気泡・レイタンス軽微、ひび割れは柱際でヘアクラック1本(補助目地追加で回避可能だった点を次回改善)。
品質・コストを両立させる記録術
- チェックリスト:納品書、試験成績、配車時刻、荷受時スランプ・温度、打設開始・終了時刻、バイブ担当、仕上げ開始時刻、目地切断時刻
- 歩掛と実績の突合:ポンプ圧送量(m3/h)、均し面積(m2/h)を記録し次現場の配車を最適化
- 概算コスト例(地域差大):生コン18,000円/m3、圧送3,000円/m3、仕上げ1,000円/m2 → 25m3・200m2で約(18,000+3,000)×25+1,000×200=約845,000円
よくある失敗と対策
- 配車が詰まり打重ねアウト→配車間隔を20分→15分へ短縮、または2系統配管で受け口を増設
- 早期ひび割れ→仕上げ前の過度なモルタル押さえを避け、早切り目地+湿潤養生を徹底
- レベルバラツキ→基準ピン密度を倍増(10m→5mグリッド)し、均し担当へ誤差フィードバック
まとめ
土間コンクリートは「数量拾いの精度」×「打設・仕上げの時間管理」でほぼ勝負が決まります。面積×厚さの単純計算に埋設差引と3〜5%ロスを乗せ、目地・養生まで一体で計画すること。具体的な数値(スランプ、配車間隔、目地深さ、養生日数)を現場基準として持ち、当日の温度・人員・荷動きで微調整できる組み立てが、品質とコストの最短距離です。
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