導入 雨天時の外壁工事 判断ミスが招く品質低下と工程崩壊
ここ数年、にわか雨やゲリラ豪雨で外壁の段取りが崩れる現場が増えた。雨でもやれる作業を探すのは現場監督の腕の見せどころだが、無理に進めた結果、白華や塗膜のふくれ、シーリングの未接着、ALCの含水による後期トラブルなど、結局高くつく事例が後を絶たない。今日は雨天時 外壁工事 対策を、施工管理の視点で数値基準と段取り替えの実務に落とし込む。
雨天時 外壁工事 対策の基本方針
降雨量 湿度 露点差 含水率の判断基準
現場の可否は雰囲気ではなく数値で決める。
- 降雨量の目安 中止基準は概ね 1 mm毎時以上で外装仕上げ全般中止 小雨でも表面が濡れる場合は不可
- 気温と湿度 塗装は気温 5 ℃以上 相対湿度 85 パーセント以下 露点差 3 ℃以上が目安
- 下地含水率 木質系下地や胴縁は 15 パーセント以下を目安 ALC は表面乾燥に加え内部含水に注意
- 風速 8 m毎秒で足場シートは巻き取り検討 10 m毎秒で高所作業を原則中止
判断は朝だけでなく 10 時 13 時 15 時の定時で再評価する。雨雲レーダーは 15 分更新を活用して移動帯の到達時刻を読む。
工種別の可否 サイディング ALC タイル 塗装 シーリング
- 金属 サイディング 張り 雨天は切断粉じん処理や下地墨出しは可能 ただしジョイント部の防水テープやシーリングを伴う行程は不可 開口部周りは完全乾燥後に
- 窯業 サイディング 張り 自体は小雨でも可能に見えるが、切断面の吸水と釘 頭の防水処理が不完全になりがち 原則中止を推奨
- ALC 取付 自体は可能でも、雨で内部に水を溜めると後の塗装で膨れが出る 取り合いシールは厳禁 面台との取合いは養生を徹底
- タイル張り セメント系接着剤は雨で流出しやすく中止 下地調整と通り出し 墨出しは可能だが濡れ面へのマーキングは不可
- 外壁塗装 下塗り 中塗り 上塗りともに上記の湿度 気温 露点差を満たさない限り中止 養生やケレンは屋根付き足場内のみ限定的に可
- シーリング 打設は雨天不可 プライマーは露出 24 時間以内に打設の原則 下地含水率と表面乾燥を徹底
気象データの使い方と連絡基準
降水確率ではなく降水量で判断する。ラインや施工体に 7 時 30 分までに可否連絡、降雨帯接近時は 2 時間前に段取り替えを宣言し、空振りでも早め判断を優先する。
養生数量の拾い方と概算コスト
雨天時のコスト差は養生面積で見える化すると腹落ちする。
- 養生面積 立面ネット面積 から 開口面積 を差し引く 例 南面 250 ㎡ 開口 55 ㎡で 195 ㎡
- 単価相場 メッシュ養生 300 円毎㎡ 厚手防水シート 450 円毎㎡ テープ 20 円毎m
- 排水養生 樋への仮設誘導 8000 円毎スパン
雨が強いほど厚手シートで再養生が必要になり、晴天 2 日分の待ちに比べて高くつく場合が多い。
事例 数字で見る段取り替えの効果
物件 木造 3 階共同住宅 延床 2500 ㎡ 外壁サイディング 1100 ㎡ 足場 9 スパン 梅雨時期
計画では 5 人班で張り 220 ㎡毎日 5 日間。週間予報で 2 日連続の降雨 5 から 15 mm毎時 が見込まれた。監督は前日 16 時の段取り会議で外壁を全面停止、代替で屋内のPB捨て張り 180 ㎡毎日、外部は樋位置の通り出しと開口水切り金物の工場前加工に切り替えた。
- 中止による仮設費 足場共通仮設 8 万円毎日 × 2 日 16 万円
- 養生費 厚手シート 200 ㎡ × 450 円 9 万円 テープ等 1 万円 合計 10 万円
- 段取り替え効果 屋内で 360 ㎡進捗 相当外注手間 18 人日を前倒し
- 品質リスク回避 サイディングの白華補修想定 1 戸 2 万円 × 30 戸 60 万円の潜在損失を回避
結果 総工期は変わらず、外装の仕上がりクレームゼロ。早めの決断と数値基準の共有が効いた好例だ。
雨天時の外壁工事 チェックリスト
- 前日 16 時 段取り会議 気象 代替作業 人員配置 搬入品の延期連絡
- 当日 7 時 現地計測 気温 湿度 露点差 下地含水率の測定 シール缶の温度確認
- 足場と安全 風速 8 m毎秒でシートの巻き 締め直し 10 m毎秒で高所作業中止 感電対策として漏電遮断器の確認
- 仮設排水 足場根枠の水切り 縦樋仮設ホース 接地養生の立ち上がり 150 mm以上
- 材料保管 シーリング材は 5 から 35 ℃で保管 開缶当日使い切り 端材や断熱材の濡れ物はタグ管理で乾燥区画へ
- 工程切替 午前 10 時と 13 時にレーダー確認 可否を再通知 サブコン出来高の配分調整
- 記録 写真と計測値を同一フォルダに保存 ファイル名に日付 気象 値を付与
まとめ 明日から使える実務Tips
- 工種別の可否基準表を現場掲示 雨天時 外壁工事 対策 施工管理 のキーワードで社内共通化
- 露点差を現場で即算できる簡易表をラミネート もしくはスマホで計算
- 段取り替え候補リストを常備 外部停止時は 内部下地 開口金物加工 設備墨出し 立上り防水の再点検に自動切替
- 養生数量の拾いと概算を前日までに算出 養生 300 円毎㎡ 厚手 450 円毎㎡を基準に稟議を早出し
- 連絡のデッドラインを明確化 7 時 30 分までに可否を決める 空振りでも早め判断を評価軸に
- シーリングと塗装は露点差 3 ℃以上を合言葉に 迷ったらやらないが最終的に安い
雨天は敵ではなく、段取り力を見せるチャンスだ。数値で語り、早く決め、写真で残す。この三点を徹底すれば、品質クレームと余計な出費は確実に減る。次の雨から、ぜひ現場で試してほしい。
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