導入:梅雨・ゲリラ豪雨でも止めない外壁工事
最近の現場で増えているのが、線状降水帯やゲリラ豪雨で工程が蛇行するケース。外壁工事は「濡れ」に弱く、雨天の判断を誤ると、白化・膨れ・剥離・シール不良といった品質事故に直結します。一方で、やみくもに順延すると工期とコストが膨らむ。この記事では、外壁工事 雨対策と雨天 施工管理を、数値基準・仮設養生の数量拾い・施工方法別の工夫まで、現場監督が今日から使えるレベルで整理します。
雨天判断と工程管理のコツ
中止・再開の数値基準(品質と安全の両立)
雨天の意思決定は「定量化」すると迷いが減ります。目安は以下。
・降雨量:5mm/h以上で塗装・シールは原則中止。1~2mm/hでも壁面が濡れる風向なら中止。
・露点差:シール工事 露点は重要。下地温度と露点温度の差が3℃未満は結露リスクが高く中止。温湿度計で露点を確認。
・施工温度:塗装・コーキング 施工条件は多くが5~35℃。冬季は下地温度が5℃未満なら加温を検討。
・含水率:木下地は15%以下、ALC・モルタルは表面含水が乾燥状態(ピン式/電気抵抗式含水率計や布テスト)で再開。
・風速:足場 メッシュシート展張時は風速10m/s超で落下・倒壊リスク増。シート一部たたみや作業停止を判断。
気象データの活用(予測で段取りを先回り)
高解像度降水ナウキャスト(1km格子・5分更新)やXRAINを朝礼と10時・15時の2回で確認。30分先のセルの動きで塗り段取りを微調整します。現場に簡易雨量計(最小目盛0.5mm)とデータロガー(温湿度)を常設し、Slack/LINEで自動通知すれば判断が属人化しません。
仮設養生と数量拾い(コストを可視化)
雨を避けるのではなく、降る前提で仮設養生を設計します。数量拾いの基本は以下。
・足場メッシュシート面積=外周長(m)×軒高(m)。重ね代・開口部・二重張りを見込み1.05~1.15の係数を掛ける。
・トップカバー(仮設屋根)面積=建物の投影面積(㎡)×1.1(張り出し・重ね)。排水を考え傾斜1/50、仮設樋φ75で端部に集水。
・端部重ね:シート重ねは200mm以上、ジョイントは防水テープで二次止水。
概算コストの目安:メッシュ養生350~500円/㎡、防炎シート二重650~800円/㎡、トップカバー1,200~1,800円/㎡、仮設樋800~1,200円/m。半端材と予備10%を忘れずに。
施工方法別の雨対策(外壁種別でやることが違う)
塗装:下地含水の確認→雨筋・チョーキング除去→プライマー→上塗り。希釈率は規定内、乾燥時間は4h以上(20℃・65%RH時)。湿度85%超は中止。赤外線ヒーターで局所加温、風を当てるとスキンだけ乾くので注意。
シーリング:目地底の水分・粉塵除去。バックアップ材径は目地幅の1.3~1.5倍で密着確保。プライマーは露点差3℃以上を確保してから塗布。スキンタイム20~60分を超える雨は打替え覚悟。
サイディング/ALC:切断面シールと留付ビスの錆対策を先行。ALCは目地内の水溜まりを避け、仮設屋根下で埋め戻し。雨後は含水チェックのうえ透湿シートの破れを補修。
タイル/モルタル:濡れ面への貼付は白華・付着低下の元。雨前は張付けモルタルの吸水調整を軽く、雨後は再ミストで吸水状態を均一化。養生は風抜けを確保しつつ吹き込みを遮断。
事例・数字で見る効果
3階建て集合住宅(外周90m、軒高12m、外壁面積約1,450㎡)。梅雨時、30日中10日が降雨予報。
・メッシュ二重養生:面積=90×12×1.1=1,188㎡、@700円で約83万円。
・トップカバー:投影面積600㎡×1.1=660㎡、@1,400円で約92万円。仮設樋40m、@1,000円で4万円。
総養生費=約179万円。
導入前は雨天順延で月6日停止。導入後は塗装・シール・ALC目地内作業を継続でき、停止は月2日に縮小。人工は8人×4日=32人工を回収(@22,000円で約70万円)。さらに工期4日短縮で足場賃料(@350円/㎡・日×1,188㎡×4日=約166万円)を圧縮。合計効果は約236万円、養生費を差し引いても約57万円のプラス。
現場監督チェックリスト(雨天 施工管理)
- 前日17時:高解像度降水ナウキャストで翌朝のセル進路を確認、工程表に「雨天時の代替作業」を併記(屋内段取り・搬入・検査)。
- 当日朝:温湿度・露点差・風速・降雨量を記録。外壁工事 雨対策の中止基準を全員で共有。
- 作業前:シール・塗装は試験打ち/試験塗りを1㎡実施、乾燥時間と付着を記録。
- 養生:メッシュの重ね200mm、コーナーはL字で二重。トップカバーの勾配1/50、仮設樋の詰まり確認。
- 材料:塗料・シーリング材は現場温度で粘度が変わる。保管は15~25℃、開缶後は吸湿防止。
- 安全:シート濡れ滑り対策にノンスリップ養生、感電対策で電工ドラムは防雨型。
- 終業:気象ログと写真を日報に添付。未乾燥部は二次養生を追加、翌朝の再試験を予約。
まとめ:明日から使えるTips
- 判断を数値化(降雨量・露点差・含水率・風速)し、誰が見ても同じ結論になる基準表を作る。
- 「部位切替」計画を工程に標準装備。外装が止まる日は屋内下地・検査・搬入に自動で切り替える。
- 仮設養生は面積×単価の見える化で稟議を通しやすく。トップカバーとメッシュ二重の費用対効果を数字で示す。
- 現場に簡易雨量計と温湿度ロガーを常備し、データで中止・再開を証跡化する。
- 塗装・シールはメーカーの施工条件を朝礼で読み合わせ。迷ったら試験塗り/打ちで判断。
- メッシュシートは風対策を優先。強風予報日は一部たたみで倒壊リスクを下げる。
- アプリでナウキャストを班長まで共有し、30分先の雨雲で段取りを微修正する。
雨は止められませんが、工程と品質のコントロールはできます。雨天時の外壁工事対策を仕組み化して、止まらない現場をつくりましょう。
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