コンクリ打設 配車計画と打重ね管理術

導入|最近増えている打設トラブルの根っこ

猛暑、渋滞、職人不足。ここ数年の現場で増えているのが、コンクリート打設の遅れと打重ね不良です。配車が詰まってスランプが落ちる、ポンプが止まって層間が荒れる、結果として仕上がりと強度に影響—どれも「配車計画」と「打重ね管理」が崩れたときに起きます。本稿では検索キーワード「コンクリート打設 施工管理」「配車計画」「打重ね時間」「チェックリスト」を狙い撃ちしつつ、明日すぐ現場で使える設計・段取り・検査の勘所を一本に絞って解説します。

本論|配車計画と打重ね時間を科学する

配車計画の基本式と考え方

配車計画の肝は「目標打設量[m3/h]」「車両容量[m3]」「回転時間[h]」の三点です。必要台数は、必要台数=目標打設量×回転時間÷車両容量。ポンプのカタログ能力でなく、型枠・配筋・人員を踏まえた“有効打設速度”を採用するのが実務。壁・梁で1.0〜1.5m/h、スラブで30m3/h前後が現実的です。渋滞やゲート混雑を織り込んで回転時間は実測ベース(往復+待機+荷卸)で見積もり、8分間隔で入る流れを作れれば安定します。プラントは極力2拠点での二段構えにし、片側トラブル時も流量が50%で維持できるように設計します。

打重ね時間の現場目安

コールドジョイントの回避は「層厚」と「時間管理」。層厚はスランプ18cmなら300〜400mmで段切り、内部振動機で層間までしっかり届かせます。打重ね時間は配合と外気温で変動しますが、現場目安として20℃で60〜90分、30℃で30〜60分を死守。事前に試験室から初凝推定を入手し、当日のコンクリート温度を受入時に記録して判断の根拠を残しましょう。最悪ラインが止まったら、小口止めで面を整え、再開時にレイタンス除去と再締固めを徹底します。

品質と安全を落とさない道具立て

内部振動機はφ50mmを主、梁筋密の部位はφ28〜35mmを併用。周波数は8,000〜12,000vpm、挿入ピッチ300〜400mm、滞留5〜15秒が目安。スランプ・空気・温度は開始直後に2台連続で確認、以降30〜50m3ごとに再確認。ポンプ配管は水平部で5〜10mごとにエルボを避け、圧送抵抗を下げます。暑熱期は遮光・散水で配管温度を抑え、受入スランプの落ち幅を小さくします。

事例・数字で見る|150m3の基礎スラブ打設

条件:30m×25mのスラブ、t=200mm(面積750m2、コンクリート量150m3)。配合は呼び強度24N/mm2、スランプ18cm、粗骨材20mm。ポンプ能力は40m3/hだが、実効30m3/hで計画。

所要時間=150m3÷30m3/h=5h。4m3車を使用、回転時間は工場往復40分+現場荷卸20分で60分。必要台数=30×1.0÷4=7.5→8台。予備2台を別プラントで待機し計10台体制、投入間隔は約8分。壁際・柱廻りの手間を見込み、前半は27m3/h、後半は33m3/hでならし、全体6.0hで完了目標。

人員:ポンプオペ1、誘導2、配管2、バイブ3、コテ2、仕上1、検査記録1の計12名。機材:12t級ブームポンプ1台(予備配管一式)。

コスト目安:ポンプ車1台100,000〜120,000円/日、運賃1,500円/m3、車両費3,000円/台、仕上げ一式200,000円前後。150m3なら生コン運賃約225,000円+車両費概算60,000円。暑熱期の養生材(散水・遮光・被覆)で50,000円程度を別途確保。

品質:受入スランプ18±2cm、空気4.5±1.5%、温度35℃以下を目標。かぶり40mm確保のため、スペーサーピッチ600mm、端部300mmとし、試し振動で沈下量を事前確認。仕上げはレーザーレベルで±3mm以内、表面平整度は3m当たり波打ち3mm以下を狙う。

手順・チェックリスト|当日迷わないために

前日まで

  • 配車計画を確定(目標m3/h、回転時間、台数、予備2台、二つのプラント)
  • 配合・温度対策を工場と合意(暑熱期は受入温度対策、遅延剤の要否)
  • ポンプ動線・退避スペース・車両導線を図面化し関係者に配布
  • 振動機は主・細径・予備を用意、発電機容量も確認
  • 打重ね時間の基準(目安表)と記録様式を配布

当日(開始前)

  • ミーティング10分:打設順路、非常停止、合図系統の確認
  • 受入検査:最初の2台でスランプ・空気・温度・塩化物迅速試験
  • 配筋・型枠・かぶり・ジャンカリスク部位の最終確認

打設中

  • 投入間隔を8分基準でコントロール、渋滞時は一時待避
  • 層厚300〜400mm、挿入ピッチ300〜400mm、梁端部は重ね気味
  • 30〜50m3ごとに品質再確認、コンクリート温度の推移記録
  • 停止時は小口止め整形、再開時に再振動とレイタンス除去

打設後

  • 表面が硬化前に散水・被覆開始、初期乾燥を抑制(最低24h)
  • 出来形測定:レベルで±3mm以内、かぶりは電磁カバーで抜き取り
  • ポンプ配管の残圧抜きと洗浄を安全手順で実施

まとめ|明日から使えるTips

・配車は“台数”でなく“間隔”で管理。8分間隔が作れれば現場は回る。・有効打設速度は人員と納まりで決まる。カタログ値に引きずられない。・打重ね時間は温度と配合で変わる。初凝の情報を事前に入手。・二つのプラントで予備2台を常備。トラブル時の停止を最小化。・暑熱期は配管の遮光と受入温度の記録でスランプ低下を抑える。・記録担当を1人専任化し、スランプ・空気・温度・投入時刻を全台追尾。これだけで次現場の配車精度が一段上がります。

打設は「計画8割、当日の微調整2割」。配車計画と打重ね管理を数値で語れるようになれば、現場は驚くほど安定します。ぜひ自現場の条件に当てはめ、今日のうちに配車表とチェックリストをアップデートしてください。

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