コンクリート打設 雨天時の対応ガイド|判断基準・手順・養生

コンクリート打設 雨天時の対応は、判断が早いほど品質が守れます。この記事では、現場監督1〜5年目の方向けに、天気と段取りの見極め、具体の手順、養生までをやさしく整理します。進むか止めるかのラインをはっきりさせ、やり直しや手戻りを減らしましょう。

雨が品質を崩す原因とメカニズム

雨は表面をたたき、モルタル分を流して「雨だれ」や色むらを起こします。水が余るとW/C(水セメント比)が上がり、強度や耐久が下がるおそれがあります。ブリーディング(上面に浮く水)が増えると、レイタンス(粉の膜)が厚くなり、打継ぎの付着も弱くなります。

打設直後〜初期凝結(固まり始め)までの30〜90分は特に弱い時間帯です。水平面のスラブは雨の影響を受けやすく、壁柱は型枠が盾になるぶん有利ですが、打込み口からの雨混入には注意です。原因をつかめば、対策は選びやすくなります。

中止か続行かの判断基準

降雨強度と継続時間の目安

目安として、1mm/h前後の弱い雨で短時間なら、養生を強化して続行の余地があります。3mm/h超が継続する場合は、水平面は原則見合わせが安全です。突風をともなう雨や、前線通過など急変の予報は、止めの判断を優先します。

部位別リスクと仕上げ有無

露出スラブや仕上げ床は雨跡が残りやすく、中止寄りが無難です。壁柱や埋戻し後に隠れる基礎は、型枠や屋根で守れれば続行の選択もあります。ポーチや外部階段など滑りやすい部位は、意匠と安全の両方で慎重に決めます。

受入と配合の確認

スランプ(やわらかさ)の増し水は厳禁です。製造所と事前に協議し、AE剤(空気連行剤)や単位水量の管理を徹底します。受入検査でスランプ・空気量・温度を確認し、外れたら無理に使わず返却も選択します。

具体策:準備と段取り(前日まで)

  • シート養生の計画:ブルーシートや透湿シートを面ごとに寸法出し、留め具と重ね幅を決めておきます。
  • 排水経路の確保:勾配確認、集水マスや側溝の清掃、ポンプの待機場所を決めます。
  • 打継ぎ候補の設定:万一の途中停止に備え、構造的に良い位置で打継ぎ(次回につなぐ面)を設計者と合意。
  • 人員増と役割:養生班、表面仕上げ班、打込み班を分け、合図と連絡手段を決めます。
  • 資機材チェック:シート、養生釘、サンドバッグ、ワイパー、散水機(仕上げ調整用)、照明、発電機をリスト化。

当日の手順:安全と品質を両立

  1. 朝会でルール共有:中止基準(例:3mm/h超が30分継続で停止)と避難経路を全員に伝えます。気象アプリと雨雲レーダーの更新担当も決めます。
  2. 受入検査を厳格に:スランプ・空気量・温度を測定し、記録。数値が外れたら即協議し、判断を迷わないこと。
  3. 打込みの工夫:ポンプ車の圧送は無理をせず、層厚は標準を守ります。バイブレータ(締固め機)は差しすぎに注意し、余計なブリーディングを出さないようにします。
  4. 表面仕上げのタイミング:たたき雨の間は無理にコテ押さえをせず、雨脚が弱まったタイミングで一気に整えます。上面の水はワイパーで軽く切り、モルタルを流し出さないこと。
  5. 養生と確認:シートを低く張り、風であおられないよう隅を重ね止め。翌朝は浮き水や色むら、はらみ(膨らみ)を点検し、必要なら表面研磨や補修を計画します。

例で学ぶ:よくある場面と対処

外部スラブでにわか雨。10分で止む予報なら、打込みを一時中断し、上面に触れずにシートで覆います。雨が上がったらワイパーで水だけ切り、タイミングを見て軽いコテ押さえで整えます。

壁の最上部で雨混入。最上段のコンクリートが薄まる心配があるので、雨脚が弱まるまで口元をシートで覆い、必要に応じて上端数十ミリを撤去して打ち直します。監理者へ即報連絡が基本です。

スラブ仕上げで筋状の雨跡。初期凝結前に強い雨を受けた可能性が高いです。表面を乾かし、レイタンスを軽く除去後、必要なら薄塗り補修材で平滑に。構造に影響がないかは圧縮強度試験体の結果も合わせて判断します。

注意点とやってはいけないこと

  • 増し水はしない。軟らかさは工場で配合調整、現場は規格内で使います。
  • シートを高く張らない。風であおられ、型枠や安全に危険が出ます。
  • 雨水を打込み区画へ流さない。仮設堰やスポンジで区画外へ逃がします。
  • 打継ぎ処理を省かない。レイタンス除去と目荒らし(表面を粗す)を確実に。
  • 写真記録を怠らない。判断の根拠と後日の説明に必須です。

まとめと次アクション

雨の影響は「いつ・どれだけ・どこに」当たるかで決まります。中止基準を決め、養生と人員を前日までに整え、当日は受入検査と手順を丁寧に進めれば、品質も工程も守れます。迷ったら安全側で一度止め、関係者で短い合意を取るのが結局は近道です。

次の打設までに、自現場の中止基準と連絡フローを1枚にまとめ、工具・資材の定数を棚卸ししておきましょう。写真テンプレとチェックリストを班で共有すると、急な雨でも落ち着いて動けます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました