コンクリート打設 段取りで失敗しない暑中施工の実践ガイド

コンクリート打設 段取りを整えるだけで、トラブルが減り、品質も安全も安定します。暑い時期は不具合が出やすいので、原因から対策までを一気通貫で押さえます。今日の現場でそのまま使える形で、やさしく手順をまとめました。

暑中に不具合が起きる原因を知る

暑さで硬化が早まり、打重ね時間(層と層の許容時間)が短くなります。これが途切れると、コールドジョイント(継ぎ目不良)が起きやすいです。さらにスランプ(軟らかさの指標)が現場到着時に落ち、締固め(振動で密実化)が難しくなります。

運搬と圧送(ポンプで送る作業)の時間も伸びがちです。渋滞や配車ずれで受入検査(到着時確認)が遅れ、全体の打設順序が崩れます。情報が現場と生コン工場で共有されないと、温度や配合のズレも起きやすいです。

代表的な兆候

  • 打込み面がすぐ乾く、表面がざらつく
  • バイブレータ(棒状振動機)の反応が鈍い
  • 圧送圧が上がる、詰まり気味になる
  • 仕上げで泣きが出る、色むらが出る

具体策:計画と体制を前日に作る

まずは打設計画書(当日の運用台本)を簡潔に。数量、班編成、打設順序、配車と到着時刻、休憩と交代、撤収までを書き切ります。図面にポンプ位置とホースルート、退避経路も落とし込みます。

品質の指標を決めて共有

  • スランプ目標:例 18±2cm(部位の仕上げ性と圧送距離で設定)
  • コンクリート温度:受入時 30℃以下目標
  • 打重ね時間:上面露出から30分以内目標
  • 試験体本数:1ロット3本(圧縮強度確認用)
  • 散水・シート養生(乾燥防止の覆い)方法と開始タイミング

連絡網は一本化します。工場、ポンプ、圧送オペ、荷下ろし、検査員、仕上げの順で誰が誰に伝えるかを決めます。温度やスランプの外れは、現場判断での加水はしません(品質低下)。工場の責任で配合調整を要請します。

当日の手順:迷わない運用フロー

  1. 朝礼とKY(危険予知)で熱中症対策と退避を確認。塩分水とミスト、送風を配置します。
  2. 受入検査:スランプ、温度、空気量(気泡量の指標)を測り、記録します。外れは受入保留。
  3. 試験体の採取と番号管理。打設区分と時刻を明記します。
  4. 先行散水で下地温度を下げ、吸水を抑えます。日よけを張り、直射を避けます。
  5. 打設開始:遠い隅から高い方へ。層厚は40〜50cmで、打重ね時間内に次層へ。
  6. 締固め:バイブレータを規則正しく、挿入間隔は30cm程度、前層に5〜10cm差し込みます。
  7. 表面仕上げは過度な水撒きを避け、ブリーディング(水上がり)を見てタイミングを合わせます。
  8. 初期養生:散水とシート養生をすぐ開始。端部と日当たりを重点管理します。
  9. 記録:到着時刻、打込み開始終了、温度、仕上げ開始時刻を残します。

数値で見るモデルケース(基礎スラブ 30℃)

部位は基礎スラブ120m³、配筋(鉄筋組み)密な区画あり。配車は4m³車を3台ループ、到着間隔12分。圧送距離60mで水平長めです。目標スランプ18cm、受入温度28℃以下、打重ね時間は25分以内を設定します。

ポンプは中央寄りに1台、ホース2本で二方向打ち。打設順序は遠点→近点→中央戻り。層厚45cmで3パス。バイブレータは2丁常時、1丁予備。仕上げ班は先行待機で、1パス遅れで追従します。

養生は散水+養生マット(保水マット)で即時開始。日中は2時間おき散水、夜間は1回。打設後24時間でフォームチェック、端部乾燥が強ければ延長。試験体は1、3、7、28日で強度確認します。

安全と品質の注意点

  • 加水はしない。必要なら工場で配合調整を依頼する、と言い切ります。
  • ホース詰まりは無理に叩かない。減圧→逆送→分解の手順を守ります。
  • 熱中症対策は優先。30分ごと小休止、WBGT(暑さ指数)で運用を変えます。
  • 型枠(コンクリートの型)と支保工の点検は開始前と中間で二度行います。
  • 打重ね面の清掃と再振動は確実に。継ぎ目に気泡を残さないよう徹底します。

コミュニケーションのコツ

合図は手旗と無線を併用します。騒音や死角が多いので、単一の合図に頼りません。休憩と交代の時刻を全員で共有し、工程遅れを前倒しで潰します。

まとめ:明日から使えるチェック

  • 計画書に「順序・時間・温度・養生」を必ず記載
  • 受入でスランプと温度を即測定、外れは受入保留
  • 層厚45±5cm、打重ね25分以内を目安に回す
  • 仕上げは水撒きに頼らず、タイミング重視
  • 散水+シート養生を即時開始、端部は重点

次の現場では、まず「打設順序の地図」と「連絡の一本化」から整えるのがおすすめです。小さな段取りの積み重ねが、その日の品質と安全を支えます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました