配筋検査チェックリストを使うと、検査の抜けが減り、是正も早くなります。現場の段取りが安定し、品質と安全がそろいます。この記事では、若手監督が明日から使える要点と手順をまとめました。
なぜ見落とすのか(原因)
配筋は部位ごとに条件が多く、目視だけだと抜けやすいです。図面の読み違い、かぶり厚(コンクリート表面から鉄筋までの距離)の勘違い、写真不足が重なることもあります。時間が押すと記録が粗くなり、後で是正根拠が薄くなります。だからこそ、項目を固定化したチェックリストが効きます。
具体策:チェック項目10選(品質要点)
必須のチェック項目
- かぶり厚:部位ごとの規定値と実測。スペーサー(かぶり確保の部材)の種類と間隔も確認。
- 定着長さ:鉄筋の定着長さ(コンクリートに定着する必要長さ)の確保。フック有無と干渉の有無。
- 継手位置と長さ:重ね継手の長さ、千鳥配置、同一断面での集中を避ける。
- あき(鉄筋間隔):最小あきとピッチ。コンクリートの充填性も意識。
- 補強筋:開口・スリーブ周りの補強筋の本数、径、位置。
- スペーサー・サポート:種類(樹脂・モルタル)、ピッチ、転倒・沈みの防止。
- 結束状態:結束線の締め具合、ほどけ・飛び出し、足場との干渉。
- 鉄筋径・本数:径表示と数量の照合。異径混入の有無。
- さび・汚れ:付着モルタル、油、泥の除去。軽微な赤さびはブラシ清掃。
- インサート・スリーブ:位置・高さ、鉄筋切断の有無、切断時の補強手当て。
この10点は、どの現場でも効く共通軸です。見て、測って、撮る。三点セットで記録を残します。
検査手順(段取りと流れ)
1. 事前準備
- 図面・配筋リスト・標準仕様書を突き合わせ、部位別の要点をマーキング。
- 道具:スケール、差し金、かぶり厚ゲージ、チョーク、レベル、黒ペン、名板、予備バッテリー。
- 写真管理:撮影ルールを決める。全景→要点→実測→是正前後。ファイル名も事前定義。
2. 現地確認
- 全景で全体の歪みや段差を把握。型枠との離れ、通りを確認。
- 要点を順路どおりに測定。柱→梁→スラブの順など、動線を固定。
- 設備・型枠との干渉は早期に職長へ共有。安全に関わる箇所はその場で作業ストップを指示。
3. 指摘・是正・再確認
- 指摘は「場所・理由・是正案」を短文で。図面番号と写真番号をセット記録。
- 是正後は同じ角度で再撮。名板に「是正後」を明記し、時刻も入れる。
4. 記録化と承認
- チェックリストと写真台帳をひも付け。承認ルートに沿って電子保管。
- 次工程(型枠建込・コンクリート打設)への合図は、承認後に限定。
数値の見方と計算例(根拠を持つ)
定着長さや継手長さは、図面と標準仕様の値を必ず優先します。そのうえで、計算の考え方を持つと現場判断が早くなります。例えば、D16を例に「40d」を要求とする仕様なら、16mm×40=640mmという算定になります。あくまで考え方の例です。現場では該当図書の値で確認してください。
かぶり厚の許容差も、部位ごとに変わります。外部に面する梁・柱、スラブ下面、耐火の要求などで違います。迷ったら、設計図・仕様書・監理方針を突き合わせ、写真にスケールを入れて根拠を残します。
部位別のコツ(柱・梁・スラブ)
柱配筋
- 帯筋ピッチと端部の定着。フック向きは交互で干渉を避ける。
- 主筋の通りと建入れ。足元のスペーサーブロックの沈みをチェック。
- 柱梁接合部は密度が高いので、あきと打設通路(バイブ通し)を確保。
梁配筋
- 上端筋の定着と折曲げ位置。スラブ筋との取り合いを先読み。
- スターラップ(せん断補強筋)の重ね位置と継手の散らし。
- スリーブ補強は型枠に印を出し、写真で位置関係を残す。
スラブ配筋
- 下端筋のかぶり厚とサポートチェアのピッチ。踏み抜き養生を追加。
- 開口補強筋の方向と範囲。床端部の補強も忘れずに。
- 配筋上での資材仮置きを禁止。座屈やたわみの原因になります。
写真の撮り方(記録が命)
- 名板は「工事名・部位・図面No・項目・日時」。要点ごとに入れる。
- 全景→中景→実測の順で3点セット。スケールは読みが見える角度に。
- 是正前後は同じ画角で比較可能に。暗所はライトで影を消す。
よくあるNGと回避策(注意点)
- スペーサー不足:ピッチを守る。沈下しやすい箇所はチェア二重掛け。
- 継手集中:柱頭・柱脚に集めない。千鳥配置を図示して職人へ共有。
- 設備干渉:スリーブの遅れは致命傷。配筋前に墨出しと合番を完了。
- 写真不足:同じ部位を角度違いで複数枚。迷ったら多めに撮る。
- さび・油:打設直前に最終清掃。油は中性洗剤やウエスで確実に除去。
まとめと次アクション
配筋検査は「項目を固定」「手順を固定」「記録を固定」で安定します。今日紹介したチェックリストと手順を、自分の現場用に少しだけカスタムしてください。初日は時間がかかっても大丈夫です。慣れれば、品質とスピードが一緒に上がります。次は自社フォーマットに落とし込み、朝礼で共有してみましょう。
- 要点の復習:かぶり厚・定着・継手・あき・補強・スペーサー・結束・径本数・清掃・スリーブ。
- 手順の型:準備→現地→是正→再確認→承認→次工程。
- 写真の型:全景→要点→実測→是正前後。
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