夏の現場で「コンクリート打設 施工管理」を外さないコツは、温度と水分の同時管理です。事前に計画、当日は測定、終わったら養生。この三本柱で品質と工期を守れます。手戻りとコストもやさしく減らせます。
なぜ夏期に不具合が起きやすいのか(原因)
気温と風で水が早く飛び、表面が先に乾きます。これが初期ひび割れの主因です。
またコンクリート温度が高いと、硬化が速くなり、打込み時間の余裕が減ります。いわゆるスランプロス(軟らかさの低下)も進みます。
加えて圧送(ポンプ送り)時の摩擦が増え、閉塞や分離のリスクも上がります。
蒸発速度とスランプロスの関係
気温・風速・相対湿度で蒸発速度が上がります。一般に0.2kg/㎡/hを超えると注意です。表面が白く粉っぽくなる前に対応します。
スランプ(軟らかさの指標)が設計値から外れると、仕上がりと耐久性に響きます。現場で安易な加水は絶対にしません。
コンクリート温度と初期ひび割れ
受入温度が高いほど温度応力が大きくなります。昼の直射や型枠の蓄熱も要因です。
暑中期は、運搬時間と待機を短くし、日陰や散水で周囲温度を下げます。仕様書の基準を守り、数値は現場で必ず測ります。
具体策:打設計画と配合計画を先に決める
まず打設計画(数量・順路・人員)を細かく詰めます。次に配合計画(セメントや混和剤の比率)を生コン工場と握ります。
早朝着工や台数増車、区画分けなど、時間の余裕をつくります。必要なら試験練り(事前の配合確認)でデータを持っておきます。
配合の工夫と温度対策
減水剤や高性能AE減水剤(流動性を上げる薬剤)でスランプを確保します。単位水量は増やさずに流動性を上げます。
骨材や練混ぜ水の冷却、遮光、工場出荷時間の調整も有効です。仕様は設計者と工場と三者で合意しておきます。
受入検査をルーチン化する
受入検査では、スランプ、空気量、温度、塩化物量を必ず測ります。温度計は校正済みを使います。
記録は写真と数値で残します。基準外は受入れません。現場判断での加水はしません。
当日の手順チェックリスト(手順)
段取りを整え、流れを止めないことが要です。安全と品質は同列で管理します。
- 朝礼で配車時間、圧送系統、退避路を共有します。熱中症対策も指示します。
- 型枠・鉄筋の散水で表面温度を下げます。水溜まりは残さず払います。
- 1台目で受入検査。スランプ・温度・空気量を測り、記録します。
- 打込みは区画ごとに「端から奥へ」。打継ぎ(次の打込みとの境)位置を明示します。
- バイブレーター(締固め機)を垂直に入れ、過振動を避けます。ピッチと時間を守ります。
- 表面仕上げは乾き具合に合わせて迅速に。ブリーディング(水の浮き)を待ってからコテ入れします。
- 散水、湿潤シート、養生剤(乾燥を防ぐ薬剤)で即時養生します。
- 温度と風を継続測定し、打込み間隔を調整します。休止は最小にします。
例:35℃予報のスラブ打設をどう回すか(例)
平場スラブ25m³、予報35℃、風3m/sの想定です。早朝6時スタートに前倒しします。
配車は30分間隔から20分へ短縮。圧送は径を一段太くして圧損を抑えます。人員は仕上げ要員を1名増員します。
受入スランプは18±2cm、空気量4.5±1.5%を目安に、温度も同時確認します。1区画10m²で目地代わりの打継ぎを設定します。
表面は蒸発が早いので、コテ前に霧状散水を軽く入れます。コテ後はすぐに養生シートで覆います。
注意点と安全のポイント(注意点)
加水はしません。設計強度と耐久性を落とします。流動性は混和剤で調整します。
打継ぎ面はレイタンス(弱い層)を除去して、確実に処理します。仕上げ遅れはひび割れの元なので、人員で補います。
安全面では、打設ホースの振れと足元の滑りに注意します。合図者を置き、合図体系を統一します。
熱中症は早期対応が最優先です。水分と塩分、休憩、ミスト扇風機を用意し、異変があれば止めます。
養生と記録で品質を閉じる(まとめ前の要点)
養生は仕上げ直後から始めます。湿潤シートと養生剤の併用が効果的です。直射は遮光ネットで避けます。
記録は「受入→打込み→仕上げ→養生」の時刻、温度、風、写真をセットで残します。後日の説明責任に備えます。
まとめと次アクション(まとめ)
夏期のリスクは、温度と水分のアンバランスにあります。計画で余裕を持ち、当日は測定と即応、最後は丁寧な養生です。
この流れを標準化すれば、品質のバラツキはぐっと減ります。班ごとにチェックリストを作り、朝礼で確認すると定着します。
- 温度と蒸発を事前に想定し、計画で潰す。
- 受入検査を徹底し、数値と写真で記録する。
- 打継ぎと締固めはルールを守り、人で遅れを補う。
- 養生は即時に開始し、乾燥を防ぐ。
- 安全は合図と足元、熱中症対策を最優先。
次アクションとして、自現場の「夏期打設チェックリスト」を今日中に作り、協力会社と共有しましょう。配車計画と受入検査票もひな形で準備しておくと安心です。
コメント