配筋検査 チェックリストを整えるだけで、見落としが目に見えて減ります。結論から言うと、重要寸法の絞り込みと現場での回し方を決めることが肝心です。この記事では原因から具体策、手順、実例、注意点までを一気に整理します。
なぜ見落とすのか(原因)
図面と現場のズレ
図面どおりの配筋でも、型枠やスペーサー(高さ保持材)の誤差で、かぶり厚さ(鉄筋とコンクリ面の距離)が変わりやすいです。寸法は合っても位置がズレることがあります。小さなズレが重なると、検査時に意外な不適合になります。
時間と人の制約
打設前は工程が詰まり、点検者も限られます。全てを均一に見るのはむずかしいです。優先順位が曖昧だと、肝心なポイントほど抜けます。
記録不足
記録写真が足りない、スケールが写っていない、どの部位か分からない。後追いで確認できず、是正の判断が遅れます。写真管理の型を決めていないことが、再発のもとになります。
具体策:チェックリスト設計のコツ
部位とゾーンで分ける
一枚に全部は詰め込みません。基礎・柱梁・スラブ・壁など、部位ごとにシートを分けます。さらに通り芯やスパンでゾーン化すると、抜けの確認がしやすくなります。
- 基礎:配筋ピッチ、定着長さ(鉄筋が定着するための長さ)、かぶり厚さ
- 柱・梁:主筋径・本数、あばら筋(スターラップ)のピッチ、フック方向
- スラブ・壁:メッシュやD13@200などの配筋間隔、貫通部補強
重要寸法をしぼる
全部は見切れません。重要三本柱を決めます。かぶり厚さ、定着長さ、継手(鉄筋のつなぎ目)の位置です。この三つは耐久と耐力に直結します。ここだけは全数、他は抽出でも可と決めます。
写真管理の型を作る
写真は「全景→中景→寸法」の3点セットで撮ります。スケールは必ず写し込みます。ファイル名は「日付_階_通り_部位_項目.jpg」と揃えます。Exifの位置情報は屋内で誤差が出るので、通り名プレートを活用します。
手順:現場での回し方
事前準備(前日まで)
- 図面にマーキング:チェック箇所をハイライトし、基準寸法表を作る。
- 道具セット:スケール、ノギス、かぶり測定ゲージ、チョーク、結束線、マーカー。
- 責任分担:監督と職長で「誰がどこを見るか」を紙で決める。
安全の基本は外しません。高所はフルハーネスを必ず着用します。手を伸ばして測らず、安定した踏み台を使います。
当日の流れ
- 全景確認:危険箇所を除去し、材料と道具の動線を確保。
- ゾーンごとに巡回:優先順位は「かぶり→継手→定着」の順で固定。
- 是正指示:口頭だけでなく、マーキング+写真で残す。
- 再確認:是正後に同じ人がもう一度チェックして記録。
時間が足りない時は、抽出検査の条件を事前に共有します。例えば「梁主筋の定着は両端全数、あばら筋ピッチは3スパン抽出」など、合意を先に取ります。
立会いのコツ
職長と「判定基準」を合わせます。設計図書を最優先とし、一般的な目安は補助に使います。グレーな点はその場でメモし、設計者に確認します。後回しは混乱のもとです。
例:部位別のチェックポイント
基礎
ベース筋のピッチ、主筋径、スリーブ周りの補強を見ます。かぶり厚さはスペーサーの数と種類を確認します。例えば「D13@200、かぶり60」を狙う現場なら、端部でのスペーサー間隔が広すぎないかを重点的に見ます。
柱・梁
柱主筋の本数と継手位置、帯筋(あばら筋)のフック方向とピッチを確認します。梁は定着長さとスターラップの集中帯を見ます。開口近傍は補強筋が図面どおりか、追加の当て筋が必要かを職長と話します。
スラブ・壁
上端筋の浮き上がりに注意します。馬(サポート材)やスペーサーブロックの配置が不足しがちです。壁は貫通部周りの補強筋と、縦横の定着が確保されているかを重点に見ます。
注意点と許容差の考え方
かぶり厚さの扱い
かぶり厚さは耐久に直結します。設計値を最優先にし、現場の一般的な許容は設計者の判断を仰ぎます。雨天時は養生を徹底します。濡れたスペーサーや泥は誤差の原因です。
継手とあばら筋
継手は定位置から外れると力が流れにくくなります。重ね継手の長さと段違い配置を確認します。あばら筋は端部のフック向きとピッチを必ず見ます。梁端や柱脚は特に密になるので、一本ずつ触って確かめます。
表示と呼び径
鉄筋の呼び径(D10、D13など)を現物と照合します。異形鉄筋のマーキングが見づらい時は、一本抜き出して確認します。寸法はスケールの0点を合わせ、写真に写し込んで証跡を残します。
まとめと次アクション
配筋検査は、重要寸法をしぼったチェックリストと、現場での回し方の型で大きく楽になります。かぶり・継手・定着を最優先にし、写真は三点セットで記録します。安全は妥協しません。高所はフルハーネス、無理な姿勢で測らない。この基本は言い切ります。
次アクションは、あなたの現場図面で「三本柱リスト」を作ることです。部位ごとにゾーンを切り、当日の流れを紙一枚にまとめて現場で共有しましょう。小さな整備が、打設前の迷いを減らします。
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