コンクリート打設 段取りの基本と実務手順|現場で迷わないコツ

コンクリート打設 段取りは、品質と工期と安全を左右します。先に全体像をおさえると、当日の判断がぶれません。この記事は原因から手順までを一気に整理し、明日の段取り表にそのまま使える形でまとめます。

コンクリート打設の段取りが破綻する原因

よくあるのは、前提のズレです。数量や配合(配合は強度ややわらかさの計画)が曖昧で、配車が合いません。結果として待機や打ち継ぎが増え、品質もコストも落ちます。

次に、関係者の認識差です。元請、ポンプ、生コン、鉄筋・型枠、設備の順番がそろわないと、現場は止まります。口頭だけの伝達は避け、図と時刻で合意します。

最後に、余裕不足です。道路事情や気温、雨の揺らぎを見込みません。現場は理想どおり動きません。ゆとり時間と予備案を必ず用意します。

具体策:段取りの考え方とチェックリスト

段取りは「数量→手段→人→時間→品質→安全」の順で固めます。逆流しないことがコツです。数字を先に置けば、会話が早くなります。

  • 数量:打設量m³、打設面積、厚さ、ポンプ到達距離
  • 手段:ポンプ車の型(配管径、能力)、バケット併用可否
  • 人:指揮1、打設2〜3、バイブ2(バイブは締固め器具)、均し3、仕上2
  • 時間:開始時刻、配車間隔(例:8〜10分)、昼前後の調整
  • 品質:配合(例 25N、スランプ18cm。スランプはやわらかさの指標)、温度、打重ね時間
  • 安全:KY(危険予知)と立入区分、動線、照明、換気

チェックリストは1枚にします。A3に工程面(平面図)と時間軸を並べ、色で役割を分けます。誰が見ても同じ行動になる形にします。

手順:前日〜当日の流れ

前日まで:確認と手配

  1. 数量確定:配筋・型枠図で厚さと打ち止まりを再確認。端部の増し打ちも含めます。
  2. 配合と試験:設計基準強度、スランプ、空気量、塩化物量を発注票に明記します。
  3. 配車計画:目標打設スピード(m³/h)から台数と間隔を算出。渋滞時間を避けます。
  4. 手段確認:ポンプ車の到達と支持地盤(アウトリガーの足元)を実測で確認します。
  5. 人員割付:経験者を要所に入れ、交代要員も確保します。昼食はずらし配置にします。
  6. 資機材:バイブ、レーザー、トンボ、散水、養生材、照明、保温材を数量で手配します。
  7. 周知:段取り表を関係各社に配布。電話だけでなく画像で送り、既読を確認します。

当日:開始前〜打設〜養生

  1. 着手前点検:配筋かぶり、型枠の締付、止水材、スリーブ位置を相互確認します。
  2. 安全ミーティング:KYを5分で実施。立入区分と誘導員を明確にします。
  3. 受入検査:温度、スランプ、空気量、塩化物を確認。異常があれば入れません。
  4. 打設開始:遠い所、狭い所から。流動で鉄筋が動かない量でこまめに入れます。
  5. 締固め:バイブは上下30cm重ね、1点5〜15秒。打重ね時間は目安30分以内を守ります。
  6. 均し・レベル:見切り(仕上げ高さの基準)を先に通し、段差を作りません。
  7. 仕上げ:表面水が引いたら金ゴテ。寒暑に応じて時期をずらし、焼きません。
  8. 養生:湿潤養生と保温をすぐ開始。風と直射日光を避け、初期ひび割れを防ぎます。

例:躯体スラブ100m³の段取り(参考)

条件はスラブ厚200mm、面積500m²、設計25N、スランプ18cmとします。気温は25℃、搬入路は片側交互通行とします。あくまで一例です。

  • 目標スピード:25〜30m³/h(仕上げ負荷を見て抑えめ)
  • 配車:10m³車を9〜10分間隔で手配。渋滞時間帯は間隔を12分に広げます。
  • 手段:36mクラスのポンプ車1台。吐出能力80m³/hだが、現場は30m³/hに制御。
  • 人員:指揮1、ホース2、バイブ2、均し3、仕上2、受入1、合計11名+予備2名。
  • 開始:8:30受入、8:45打設開始、11:30小休止、13:00打設完了、17:00最終仕上げ。
  • 品質:試験体3本/50m³、計6本。温度は受入時と中盤で再確認。

段取り表には、区画ごとの打設順と完了目安時刻を書きます。仕上げ隊の山を作らないよう、2区画ごとにペースを調整します。見学者は導線を分け、写真撮影の時間も先に入れておきます。

注意点:品質・安全・コストの落とし穴

品質

  • 過振動に注意。バイブの入れ過ぎは分離を招きます。時間と間隔を守ります。
  • 打重ねは30分以内が目安。遅れる場合は界面処理(打継ぎ面の処置)をします。
  • 高温時は受入温度が上がります。朝方の配車と日陰の待機を徹底します。

安全

  • ホースの跳ねに注意。合図者を置き、周囲1mは立入禁止にします。
  • アウトリガー下は堅土や敷板を必須とします。沈下が疑わしければ設置し直します。
  • 夜間や地下は照明と換気を増設します。視認と熱中症対策を同時に行います。

コスト

  • 待機費は秒で積み上がります。配車の間隔調整で抑えます。
  • 過剰なスランプ変更はNG。設計で出る配合を使います。水増しは品質を落とします。
  • 試験体の本数は根拠で決めます。過不足なく、仕様に沿います。

まとめと次アクション

段取りの肝は「数字で固め、図で共有し、余裕で守る」です。原因を先に潰せば、当日は流れます。安全と品質の優先順位は変えません。ここは言い切ります。

次の打設では、A3一枚の段取り表を作り、前日16時までに全社へ共有してください。終わったら実績を追記し、配車間隔と人員の係数を自分の基準に育てましょう。小さな現場ほど効きます。

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