コンクリート打設 手順を現場目線で整理します。失敗の原因を押さえ、すぐ使える具体策とチェックをまとめました。ムダなく安全に打てれば、仕上がりと工期が安定します。明日の段取りにそのまま落とし込みやすい形でお届けします。
失敗の原因を分解する(品質・工程・安全)
品質面の原因
よくあるのはスランプ(軟らかさの指標)のズレです。軟らかすぎると沈下やひびが出やすく、硬すぎると充填不良(すき間)を招きます。締固め不足はジャンカ(豆板)やコールドジョイント(打継ぎ不良)につながります。排出待ちや渋滞で時間が空くと、材料が分離しやすくなります。
工程・段取りの原因
打込み順序が曖昧だと人と機械がぶつかります。ポンプ車の設置位置が悪いと配管が長くなり圧送ロスが増えます。型枠や鉄筋の清掃不足でレイタンス(表面の弱い層)や付着不良を生みます。人員配分が偏ると締固めや均しが遅れ、時間に追われて品質が下がります。
安全面の見落とし
合図者不在でバック走行が重なり、接触リスクが上がります。高所や縁部の手すり不足は転落につながります。配管抜けや圧送の圧に対する理解不足は飛散事故を招きます。ここは妥協せず、立入制限と合図系統を必ず決め切ります。
具体策:計画と事前準備で7割決まる
打設計画書の勘所
- 打込み順序とゾーニングを図で見える化
- ポンプ車位置と配管ルートを現地で墨出し
- 人員表(打込み・バイブレーター・均し・仕上げ・片付け)を時間帯別に
- 必要機材の予備(バイブレーター1台+予備1台、ホースバンド、発電機)
- 退避動線と立入禁止範囲を事前に掲示
受入検査と配合・スランプ
受入時に出荷伝票を確認します。呼び強度、単位水量、空気量の許容を口頭で復唱します。スランプ試験は代表で終わらせず、初台車と中央の台車で確認し、18±2cmなどの指定を守ります。温度(コンクリ温度)も必ず取り、外気が高い日は余裕を見ます。
標準手順:現場チェックリスト付き
打込み〜締固め〜仕上げ〜養生
- 最終KY(危険予知):役割と合図を復唱。立入禁止をテープで明示。
- 型枠・鉄筋・清掃:ごみ、水たまりを除去。かぶり(鉄筋の被り厚)を再確認。
- 圧送前フラッシング:配管内を清掃。モルタル量を必要最小で管理。
- 打込み開始:高所は落下高さ1.5m以内を守る。層厚は30〜50cmで段階打ち。
- 締固め:バイブレーター(締固め道具)は10〜15秒/点。前層へ5〜10cm突き入れ。
- 表面均し:ブリーディング(水上がり)収まりを見てトンボで軽く整える。
- 仕上げ:コテ圧は最小限。早すぎる押さえは後のひびの原因です。
- 養生:散水やシートで保湿。風が強い日は早めに覆います。
- 片付け:配管の圧抜きを合図で実施。清掃は飛散ゼロで終える。
現場例:コールドジョイントを防ぐ段取り
大梁からスラブへ一気に行く計画でしたが、台車間隔が広く中だるみが生じました。そこでゾーニングを細かく切り、2班で“追い掛け”を実施。層厚を40cmで統一し、重なり部を5分以内に次層へつなぐ運用に変えました。結果、継目の色ムラが消え、削孔時の音も均一でした。
もう一つはスランプ管理です。午前の気温上昇で18cm→16cmへ硬化が進んだため、運搬時間を短縮するために車両導線を一方通行化。待機をゼロに近づけ、投入から締固めまでのサイクルを平均8分に短縮しました。
注意点:天候・温度・人員の三本柱
- 暑さ対策:外気30℃超は暑中コンクリート扱い。直射を避け、散水と打込み時間を前倒し。
- 寒さ対策:外気5℃未満は寒中扱い。防寒養生と早強(早く硬くなる配合)の検討を。
- 風対策:風速5m/s超は乾燥が速い。仕上げを遅らせ、蒸発低減剤も検討。
- 人員:打込み1、締固め2、均し1、仕上げ2を基本に、面積と形状で増減。
- 安全:合図者を必ず置く。重ねて言いますが、ここは譲りません。
暑中・寒中コンクリートの勘所
暑中は蒸発が速いので、打設直後の保湿が効きます。打込みスピードを意図的に上げ、休止を作らないのがコツです。寒中は硬化が遅いので、初期強度の立上がりを見越した型枠ばらし時期の調整が必要です。温度履歴計を1台でも入れておくと安心です。
まとめと次の一歩
打設の良し悪しは、原因の見極めと具体策の準備でほぼ決まります。手順はシンプルに、合図とゾーニングで乱れを減らします。明日へ向けては、打設計画書に“人と時間”の行を1本追加し、スランプと温度の記録欄を大きめに取ってください。小さな改善が、仕上がりの差になります。
- 要点:スランプ・順序・締固め・養生を外さない
- 要点:合図者と立入禁止は必ず設定する
- 要点:天候と温度は数字で管理する
次アクション:次回打設の前日までに、打込み順序の図と人員表をA3で1枚にまとめ、朝礼で全員に配りましょう。
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