コンクリート打設 段取りをおさえれば、現場は慌てず、品質と安全を両立できます。よくある不具合の原因をほどき、すぐ実行できる具体策に落とします。若手さんでも迷わないよう、手順と数値の目安をはっきり書きます。
失敗の原因を見える化する(なぜ)
不具合は、たいてい準備の穴から生まれます。打設計画(打つ順番と数量の計画)が粗い、連絡が曖昧、装備の予備がないと、現場は止まります。結果、打込みのムラや遅れが出て、品質が落ちます。
受入検査の抜け(スランプ・温度・空気量)
スランプ(やわらかさの指標)やコンクリート温度の確認が甘いと、締固め不足やブリーディング(水上がり)を招きます。空気量も型枠(コンクリートの型)や配筋(鉄筋の配置)に影響します。検査が遅れて荷下ろしを急ぐのも、原因になります。
打込み・締固めのムラ(バイブレーター)
バイブレーター(締固め機)の挿入ピッチや引き上げ速度が一定でないと、空洞やコールドジョイント(打継ぎ不良)が発生します。層厚が厚すぎても振動が届きません。人員不足や役割の混線で起きやすいです。
具体策(事前準備でリスクを半分に)
打設計画の作り方のコツ
数量は立方メートルまで細かく算定し、損失係数2〜3%を上乗せします。圧送(ポンプ送り)は圧送距離と高さで能力を見積もり、台数とサイクルを固めます。配管経路と吐出口を図示し、打つ順番を番号で明記します。
人員配置と役割分担
- 指揮者:合図と安全確認、記録。
- 打込み:ホース先端管理、層厚キープ。
- 締固め:バイブレーター担当、ピッチ管理。
- ならし・仕上げ:面の整えと水平の確認。
- 補助:清掃、通路確保、工具受け渡し。
最低でも上記に1名ずつ。スラブは追加で仕上げ要員を増やします。休憩交代のペアも決めておきます。
リスク対策(天気・渋滞・機材)
雨天時はシート養生(覆う作業)と排水の逃げを先に用意します。暑い日は打込み温度上昇に注意し、散水や打設時間の前倒しで温度補正します。バイブレーターとホースは予備を1台、電源ルートも2系統で準備します。
当日の手順(チェックポイント付き)
- 受入検査:スランプ12±2cmのように発注値と合うか、温度は35℃超に注意、空気量4.5±1.5%の目安。試験結果は写真と記録を即時共有します。
- 型枠・配筋の最終確認:ごみ清掃、かぶり(鉄筋から表面までの厚さ)確保、スペーサ高さ、型枠の締付けを指差しで確認します。
- 打込み順序と層厚:柱・壁は下から上へ、層厚は30〜40cmをキープ。スラブは遠点から近点へ、通路を確保しながら進みます。
- 締固め(バイブレーター):挿入ピッチは30〜40cm、1点3〜5秒、引き上げ速度は10cm/秒を目安。前層へ5〜10cm食い込ませて一体化させます。
- 打継ぎ・レイタンス処理:予定外の中断は10分超で警戒。表面のレイタンス(弱い薄膜)を除去し、目荒し後に再開します。継ぎ面は濡らし過ぎに注意します。
- 仕上げ・養生:ブリーディングが収まったら押さえを実施。風が強い日は急乾燥を防ぐため、散水やシートで湿潤養生を確実にします。
数値でわかる具体例(スラブの想定)
条件は、200㎡のスラブ、厚さ150mm、夏日、スランプ12cm、25N。数量は200×0.15=30m³、損失3%で31m³を手配します。生コン車は4m³車×8台、最後は3m³で調整とします。
人員は指揮1、打込み2、締固め2、ならし2、仕上げ3、補助2の計12名。バイブレーターは2台+予備1台、ホースは5m。圧送は中型ポンプで打設速度12〜15m³/時を見込み、2時間で完了の計画です。
打設順序は遠点からゾーニングして3分割。各ゾーンを40分で回し、ゾーン間で10分の仕上げと通路確保を入れます。温度対策で開始時刻は8時、直射部はシートで日陰を作ります。
注意点(チェックリスト)
- 荷下ろし前に試験値を確認。合わなければ無理に受け入れない。
- コールドジョイントを出さないよう、打込みの中断は指揮者が管理する。
- バイブレーターの当て過ぎは材料分離の原因。1点3〜5秒を守る。
- ブリーディングが多い面は仕上げを急がない。押さえは沈みが止まってから。
- 暑熱・寒冷時は養生時間を延長。急乾燥や凍害を避ける。
- 配管の継手は漏れ点検を事前に。油やグリスは打設面に落とさない。
- 記録写真は手すり越しなど安全位置から。足場の荷重超過に注意。
まとめと次アクション
段取りの肝は「計画の精度」「役割の明確化」「当日の基準値」です。スランプ、温度、挿入ピッチなど、数値で合わせれば、品質は安定します。天候と人の動きに余白を持たせると、事故も減ります。
- 数量とサイクルを数値で計画する。
- 人員と予備機材を決めておく。
- 受入検査と締固めを基準で管理する。
- 養生は天候に合わせて上乗せする。
次の一手として、あなたの現場に合わせた「打設計画テンプレ」を作り、今日の数値と振り返りを追記していきましょう。毎回の改善が、次の品質と時短につながります。


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