コンクリート打設 事前準備が整うと、やり直しが減り、品質と安全が安定します。準備で決まる作業なので、ポイントだけは先に押さえておきましょう。この記事では、原因→具体策→手順→例→注意点の流れで、現場で実行しやすい形に落とし込みます。
よくある失敗の原因を知る
原因が見えると、準備で手を打てます。大きくは「設計と現場条件のズレ」「段取り不足」「品質管理の見落とし」です。どれも珍しくはありませんが、重なるとトラブルになります。
設計と現場条件のズレ
図面の配合(セメント・水・骨材の割合)と現場の受入れ条件が合わないと、打設中に迷いが出ます。スランプ(やわらかさの指標)や空気量の指示を読み飛ばすのも定番です。打設量の算定ミスで車両が足りず、コールドジョイント(継ぎ目)になることもあります。
段取り不足
人・機械・車両の時刻が噛み合わないと、待ちが発生します。打重ね時間(前回打ちとの間隔)の管理も曖昧になりがちです。型枠や配筋の最終チェックが抜けると、当日の手直しで時間を失います。
品質管理の見落とし
納入書(出荷伝票)の確認が甘いと、配合違いに気づけません。受入れ時のスランプ試験を省くと、締固めや仕上げの負荷が読めずに品質がぶれます。温度管理がないと、暑中・寒中で強度発現に影響します。
今日からできる具体策
難しいことは要りません。以下を事前に決めて、紙一枚にまとめます。全員が同じ紙を見ることがコツです。
- 打設計画書の要点抜き出し(配合、スランプ、数量、車両台数、順路)
- 人員配置表(職長、受入れ、試験、締固め、仕上げ、清掃の担当)
- 機材リスト(バイブレータ〈締固め機〉、ホース、レーキ、トンボ、発電機)
- 受入れチェック票(納入書照合、スランプ・空気量試験、温度)
- 型枠・配筋の最終写真チェック(かぶり、スペーサ、貫通穴の止水)
- 緊急時手順(車両遅延、雨天、機械故障、打重ね時間超過の判断)
打設量は余裕1〜3%を見て、戻り最小化の段取りを取ります。打重ねは連絡役を一人置き、タイムキーパーにします。安全は「合図者」と「立入禁止養生」を必ず設定します。
当日の手順とチェックリスト
当日は流れをシンプルにします。手順は次の通りです。安全と品質の要所だけは言い切っておきます。
- 朝礼・KY(危険予知)で役割と合図を共有。気象と搬入時刻を再確認。
- 型枠・配筋の復唱確認。開口、スリーブ、止水、バイブ挿入可能クリアランス。
- 試験機・用具セット。受入れ場所を平坦にし、洗浄水の行き場を確保。
- 1台目到着。納入書の配合・スランプ・空気量を設計と照合。差異は受入れ前に連絡。
- 受入れ試験を実施。結果を記録し、写真も撮影。許容は規格・指示に従います。
- 打設開始。端部から均一に、振動棒はピッチ短め、貫入は前層に10cm重ねます。
- バイブは引き上げゆっくり。過振動は骨材分離の原因です。間隔・時間を管理。
- レイタンス(上澄み)除去と仕上げは、硬化進行を見ながら無理なく。
- 打重ね時間の記録。遅延時は責任者判断で部位を区切る、止め目を丁寧に。
- 養生開始。散水やシートで湿潤を保ち、初期ひび割れを防ぎます。
必ず行うことは三つです。受入れ試験、打重ね時間の記録、養生の開始です。ここが抜けると、表面はきれいでも中身が伴わなくなります。
具体例でイメージする
小規模基礎(20m³程度)の平日打設
車両は6台想定で、先行2台・後続4台に分けます。1台目でスランプ・空気量・温度を測定し、3台目で再確認します。人員は10名(受入れ2、打設3、締固め2、仕上げ2、周囲整理1)で十分です。
ポンプの圧送量は控えめに設定し、端部から均して流します。昼前に打設を終え、午後は仕上げと養生に集中します。撤収は洗浄水の回収を含めて30分を見込みます。
夏場(暑中)での床打設
開始時刻を前倒しし、直射の少ない時間帯に主工程を終えます。コンクリート温度が高いと硬化が早いので、受入れ後は待ち時間を短縮します。散水と風よけで急乾燥を避け、ひび割れを抑えます。
急結対策として遅延材の使用が指示にある場合は、納入書で確認します。打継ぎ周りは保水を厚めに行い、仕上げのタイミングは小まめに触って判断します。
注意点とリスク管理
- 雨天対応:打設直前の降雨は、上面に水膜を作ります。雨脚が強い時は無理をせず、責任者判断で中止・延期を検討します。
- 寒中対策:気温が低いと初期強度が遅れます。保温養生(シートや発泡材)を用意し、凍結の恐れがある時は必ず実施します。
- 安全動線:ポンプ車・ミキサ車のバック時は、合図者を固定配置。立入禁止を明示し、荷重のかかる仮設材を再点検します。
- 近隣配慮:洗浄水や泥の流出は苦情の種です。受け皿・集水・清掃の段取りを事前に作っておきます。
- 記録:受入れ試験、打設開始・終了、打重ね時刻、養生開始の時刻は写真とともに記録します。
まとめと次アクション
打設の良し悪しは、当日の腕前より「準備の質」で決まります。配合・スランプ・数量・人員・機械・手順を一枚にまとめ、全員で共有してください。受入れ試験、打重ね管理、養生の三点は必ず実施します。
次アクションとして、現場用の「打設チェックシート」を作り、朝礼で読み合わせましょう。班ごとの役割表も同じ紙に載せると、迷いが減ります。最初は簡単でも、使いながら育てていけば十分です。
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