コンクリート打設 段取りの基本と安全手順|遅れと不具合を防ぐ現場実務

コンクリート打設 段取りが決まると、現場は静かに回ります。遅れも手戻りも減り、品質も安定します。この記事は、原因の洗い出しから具体策、手順、例、注意点までを一気にまとめました。今日の配車と人員にすぐ活かせる形でお伝えします。

なぜ段取りでつまずくのか(原因)

原因はだいたい三つに集約されます。計画の粗さ、関係者の認識差、当日の変化対応です。計画が粗いと、打重ね時間(打継の限界時間)を超えやすく、品質が落ちます。認識差があると、配車と人員が合わず、待ちや空転が増えます。当日の気温や渋滞など変化に、代替案がないのも大きいです。

品質低下の引き金

スランプ(柔らかさの目安)のバラつき、締固め不足、打重ね遅れが定番です。夏は打重ね許容が短く、60分を目安に詰めて組みます。冬は初期強度の立ち上がりが遅く、保温と散水を迷う場面が増えます。小さな判断の遅れが、コールドジョイント(不連続面)を招きます。

段取り抜けの定番

型枠・鉄筋検査の是正残が当日まで残ること。生コンプラントへの配合・スランプ・空気量の発注条件が曖昧なこと。バイブレーター(締固め機械)の台数と電源、予備の準備が薄いこと。排水・洗い場・車両動線の交錯も見落としやすいです。

すぐ効く具体策(事前のすり合わせ)

生コン条件と試験体

配合、スランプ、空気量、塩分量、温度の条件を一枚にまとめます。立会い試験の段取りと、採取本数、保管場所も明確に。暑中はスランプを1cm硬め、減水剤の有無を先に合意すると安定します。試験体は通路を避け、転倒防止の木枠を用意します。

配車計画と打設計画

配車間隔は10〜15分で試算し、打設速度(10〜15m³/h)と合わせます。打重ね時間は気温25℃超で60分目安、20℃前後で90分目安とし、ゾーン割で逃げを作ります。ポンプ車の設置位置、吐出圧、ホース長さは、型枠の負担と転圧動線に直結。走行ルートと待機場所も図で共有します。

型枠・鉄筋・設備の整合

開口補強、インサート、スリーブの位置は、型枠大工と設備の現物合わせで最終確認。番線(結束線)の切り飛ばし残や、スペーサー(かぶり確保材)の数量も当日分まで確保します。締め固めの逃げ道として、上面の作業足場と照明も手配します。

標準手順(タイムラインで確認)

前日まで

  • 是正箇所のクローズ確認。写真と印。
  • 生コン条件、配車表、ゾーン割の掲示。連絡網の再確認。
  • 機材点検:バイブレーター×2+予備1、発電機、モッコ、柄杓。
  • 安全:立入禁止、誘導員配置、洗い場と汚水処理を確保。

当日朝

  • KY(危険予知)と役割分担。リーダー1、締固め2、先行ならし1、ホース1、試験1。
  • 試験機材、温度計、スランプコーンの準備。結果は場内共有。
  • ポンプ試し打ち。漏れ、圧、無線チェック。

打設中

  • 吐出は低い位置から。落下高さは1.5m以内を厳守。
  • 締固めは20〜30cmピッチで斜め差し。既往層へ10cm刺し戻す。
  • 打重ね時間を常時アナウンス。遅れたゾーンは先回りで救済。
  • ブリーディング(水上がり)を見て、ならし時期を調整。

打設後24時間

  • 仕上げ面の養生。散水またはシートで乾燥を防止。
  • 初期ひび割れ点検。温度差が大きい部位は保温優先。
  • 型枠の増し締め点検。漏れ跡は次回改善に記録。

ケース例:30m³・夏季・二階スラブ

気温32℃、面積120㎡、厚み25cm、設計スランプ18cmの想定です。配車は2台回しで12分間隔、ポンプ1台、打設速度は12m³/hを目標に。ゾーンは3分割し、中央→奥→手前の順に流します。打重ねは各ゾーン45〜60分以内に収め、先行ならしと締固めを一人ずつ追加。散水養生は2時間後から開始し、夜間はシート養生で温度差を緩和します。

よくあるつまずきと回避策(注意点)

  • 配車遅延:リード車の到着を10分前倒し。渋滞情報を30分間隔で更新。
  • スランプ高め:減水剤の投入判断は現場でなくプラントで。現場加水は避けます。
  • 型枠漏れ:初荷で要注意。漏れを見たらすぐ吐出を止め、ビス増し締め。
  • 鉄筋浮き:足元板と通路を固定。締固め時は足の置き場を指示。
  • 安全:ホース反動時は声かけ。無線用語を短く統一し、指差しで復唱。

まとめとチェックリスト

段取りは「条件の一枚化」「配車×速度の整合」「ゾーンと人員の見える化」で決まります。最後は当日の小さな判断の速さです。下の簡易チェックで、朝礼前に抜けを潰しましょう。迷ったら、打重ね時間と安全を最優先にしてください。

  • 発注条件(配合・スランプ・空気量・温度)を全員が把握
  • 配車間隔と目標打設速度が一致
  • バイブレーター台数と予備、電源の確認
  • ゾーン割、打重ね時間の共有
  • 洗い場・汚水処理・動線の確保
  • 試験体の採取・保管・記録の段取り

次のアクションとして、あなたの現場条件に合わせて配車表とゾーン割のテンプレを作り、朝礼で配ります。今日一本仕上げておくと、次回から迷いがぐっと減ります。

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