コンクリート打設 雨天対応の判断と手順|迷わない中止基準と養生コツ

コンクリート打設 雨天対応で迷わないために、現場の判断基準と安全な手順をまとめます。読めば、中止と続行の線引きがはっきりします。品質と安全を両立させるコツも押さえます。

雨が与える影響(原因とリスク)

雨はワーカビリティ(扱いやすさ)を変えます。表面に余分な水が乗ると、見かけのスランプ(流動性指標)が上がり、仕上がりが不安定になります。水セメント比(強度を左右する比率)が局所的に増え、表層脆弱や色ムラの原因になります。

降雨は温度も下げます。表面温度が急に下がると、水和反応(固まる反応)が遅れて初期強度の立ち上がりが鈍ります。打込みが途切れやすく、コールドジョイント(不連続面)が出やすいのも雨天の典型リスクです。

施工環境も荒れます。滑りやすい床、視界不良、電動工具の漏電、ブルーシートのはためきで作業姿勢が崩れます。安全と品質の両方で、平時より余裕のある段取りが要ります。

準備でできる具体策(計画と装備)

まず、施工計画に雨天プロトコル(対応手順)を入れます。中止基準、続行時の人員増、打設順序の短縮案、養生材の数量まで事前に決めます。天気予報は前日・当日で二重チェックし、レーダーで降雨帯の動きを確認します。

装備は余裕を持って準備します。ブルーシート(防水養生材)は厚手を多め、サンドバッグとラチェットで確実固定。排水路を簡易U字溝や雑材で先に作り、ポンプ車のアウトリガー下は泥はね防止の敷板で安定させます。

  • 減水剤・AE剤(流動性確保の混和剤)は生コン工場と事前協議。現場での追加加水はしません。
  • 打設ブロックは小割りにし、打継ぎ位置(計画的な継目)を避難しやすい位置に設定。
  • 電源は漏電遮断器を再確認。延長コードは防滴タイプで吊り上げます。

当日の手順(判断→段取り→施工→養生)

朝礼で方針を共有します。直近1時間の降雨強度、風速、気温を読み合わせ、中止基準を皆で再確認します。目安として、降雨5mm/h超は原則中止、2~5mm/hは短時間・小面積での継続可、風速8m/s超はシート養生が不安定なので見直します。

  1. 判断:各班長が打設面の水たまり、型枠(コンクリートを形づくる枠)の漏れ、仮設足場の滑りを巡回チェック。
  2. 段取り:ブルーシートで上面を屋根状に仮覆い。排水を端部に集め、打設面に落水しない導線を作ります。
  3. 受入:スランプ・空気量は通常通り試験。値だけでなく外観と温度を見て、無理な可使時間延長は避けます。
  4. 打込み:低い位置から短い落差で。バイブレータ(締固め器具)は浅く細かく、過振動を避けます。
  5. 打継ぎ:やむを得ず止める場合は、見えやすく排水しやすい位置で計画的に。再開時はレイタンス(表面の弱層)除去と再締固めを徹底します。
  6. 仕上げ:ブリーディング(水の浮き)を見極め、慌てて金鏝を入れない。にじみが収まってから軽く押さえるにとどめます。
  7. 養生:初期は雨打たれ防止が最優先。シートと保温シートで二重に覆い、端部は風でめくれないよう低く固定します。

終了後は、打設面の水だまり、にじみ、ハガレの有無をその場で点検します。翌朝の温度・強度記録を残し、必要なら補修計画を即決します。写真は雨筋が分かる角度で多めに撮っておきます。

ケーススタディ(例で学ぶ雨天対応)

例1:小雨が続くスラブ打設

降雨1~2mm/hの弱い雨。予定通り実施し、シート屋根と排水確保で落水を避けました。ブリーディングが長引いたので、金鏝を遅らせ、トンボ仕上げ(軽い均し)を挟みました。表層強度は標準の95%程度でしたが、許容範囲に収まりました。

例2:急な雷雨で30分中断

レーダーで強いエコーを確認し、打継ぎ予定線で一時停止。表面はシートで保護し、再開時に表層を洗い出してレイタンスを除去。再振動と施工目地で応力を逃がし、コールドジョイントの目立ちを防ぎました。写真と記録で事後説明もスムーズでした。

例3:暑中×にわか雨の柱・壁

高温多湿でにわか雨。可使時間が短いので、班を増やし打込み速度を上げました。表面は打込み直後から速やかに覆い、打ち上がりごとに締固め間隔を詰めました。養生は保水シートで乾燥と雨打ちの両方を抑え、ひび割れを最小化できました。

注意点(NG集と安全)

  • 現場での追加加水はしません。強度低下と表層脆弱の最大要因です。
  • 雨中の長距離落下は避けます。分離(砂利とモルタルの分かれ)を招きます。
  • ブリーディング中の金鏝掛けは控えます。後のはがれにつながります。
  • 感電・滑りに注意。電工ドラムは高所吊り、通路はノンスリップ敷設を徹底します。
  • シートの固定不足は事故のもと。風向きと端部処理を二重チェックします。

まとめと次アクション

雨天は、品質と安全の両面でリスクが増えます。だからこそ、判断基準を前日に固め、当日は段取りで勝ちます。打継ぎ処理と養生の精度が、仕上がりを左右します。迷ったら「中止寄り」で検討し、記録を残しましょう。

  • 中止基準は数値と場所で定義する。
  • 落水を防ぐ屋根と排水の先出しが肝。
  • 追加加水NG、ブリーディング待ちを徹底。
  • 打継ぎは見える位置で計画的に。
  • 初期養生は二重で確実に固定。

次アクションとして、現場用の「雨天チェックリスト」と写真テンプレを班で共有すると、当日の迷いが減ります。今日の案件から、予報と段取りの見直し会を短時間でやってみましょう。

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