05 杭工事|トラブル対処
- 段取り:杭工事中に決める掘削の段取り
- 施工中:杭頭補強筋の納まり検討
- トラブル対処:この記事
既製杭の高止まり(たかどまり)が起きたとき、最初にやることは「切る」ではありません。この記事は既製杭の埋込み工法(セメントミルク工法など)の話です。止まった深さと掘削の記録(電流値)をそろえて、監理者・構造設計者に協議する。これが答えです。
結論
- 高止まりは、杭が予定より上で止まり、杭頭が設計の高さより上に残る状態。
- 自分で切る・継ぐを決めず、まず記録(深さ・電流値・積分電流値)をそろえて監理者・構造設計者と協議する。
- 切るときは、PHC杭・PRC杭ならプレストレスの損失と支持力の照査が要るので、構造設計者・監理者の指示で決める。
杭打ちの日の午後、継いだ上杭が予定より上で止まり、杭頭が地面から出たままになった場面です。
この杭、ここで止まったぞ。これ以上は入らん。
えっ……じゃあ、出てる分を切っちゃえばいいですか?
待って。切るかどうかは僕らが決めることじゃないんだ。先に、止まった深さと電流値の記録を見せてもらおう。
切るのは一瞬だが、切った杭は元に戻らんからな。
じゃあ僕は、記録をそろえて報告の準備をします!
目次
- 杭の高止まりとは|予定より上で止まって杭頭が残る状態
- 高止まりはなぜ起きる?支持層が浅いとき・孔壁の崩落などの異状
- 高止まりしたときの対処の順番|誰に・何を持って相談するか
- ここからは僕の話|高止まりした杭を切ったとき
- 杭頭は切っていい?切る・杭長を変える・根入れを延ばすの3択と注意
- 施工記録に残すこと|支持層深さ・電流値・杭頭の高さ
- まとめ
- よくある質問
- 参考にした基準・資料
杭の高止まりとは|予定より上で止まって杭頭が残る状態
杭が予定の深さまで入らずに上で止まり、杭頭が設計の高さより上に残ってしまう状態を、現場では一般に「高止まり」と呼んでいます。杭の長さは決まっているので、先端が浅い所で止まれば、そのぶん頭が上に出ます。図1の Δh が、その「高止まり量」です。
公共建築工事標準仕様書(以下、標仕)は、この状態を協議の対象にしています。4.1.3(6) に、次のどれかに当たるときは監督職員と協議する、とあります[1]。標仕は公共工事の仕様書なので相手が「監督職員」ですが、民間工事では工事監理者や、契約で決めた窓口に置き換えて読みます。
- (ア) 予定の深さまで到達することが困難な場合
- (イ) 予定の掘削深さになっても、支持層が確認できなかった場合
- (ウ) 予定の支持層への所定の根入れ長さを確認できなかった場合
根入れは、杭の先端が支持層に入り込んでいる長さのことです。高止まりは (ア) に当たります。つまり高止まりは「現場で処理する出来事」ではなく「協議する出来事」として標仕に書かれています。ちなみに「高止まり」で検索すると資材価格の話もたくさん出てきますが、杭のほうは待っていても下がってきません。
同じ杭工事のトラブルでも、位置がずれたときの話は別の記事にまとめています。→ 杭芯ずれの対処
高止まりはなぜ起きる?支持層が浅いとき・孔壁の崩落などの異状
高止まりの原因は、大きく「支持層が計画より浅い所にあった」場合と「施工中の異状で入らなくなった」場合に分けて考えます。どちらなのかで対処が変わるので、原因を現場の目で決めつけないことが大事です。
1つ目は、支持層が計画より浅い場合です。日本建設業連合会とコンクリートパイル建設技術協会の資料(埋込み工法の資料)には、計画より浅い深さで、オーガの掘削抵抗(電流値・積分電流値)が上がり、試験杭(本杭の前に施工して支持層を確かめる杭)で決めた管理指標の値くらいになった場合の例が書かれています[2]。電流値・積分電流値は、この掘削抵抗を見る目安です。
2つ目は、施工中の異状です。標仕 4.1.3(6)(オ) は、施工中に傾斜・変形・ひび割れ・異常沈下・掘削孔壁の崩落などの異状が生じた場合も、監督職員と協議するとしています[1]。転石などの障害物の場合もありますが、どれが原因かは現場の目で決めつけません。
ここで気をつけたいのは、止まった=支持層に届いた、とは限らないことです。資料の対処例は、電流値などが試験杭の管理指標の値くらいになり、しかも「設計者が定めた支持層であることに相違ない場合」という条件つきで書かれています[2]。
止まった深さが支持層かどうかは、現場の感覚では決めません。記録をそろえたうえで、構造設計者・監理者、杭メーカー・杭施工会社に確認してください。
高止まりしたときの対処の順番|誰に・何を持って相談するか
高止まりしたら、記録をそろえ、試験杭の管理基準と照らし合わせてから、元請として監理者に報告・協議します。決めるのは構造設計者・監理者で、現場はそのための材料をそろえる役です。順番を図2にまとめました。
1. 杭施工会社に施工記録を出してもらう
相談に行く前に、止まった杭の施工記録を杭施工会社に出してもらいます。中身は、止まった深さ(支持層深さ)と、アースオーガー駆動用電動機の電流値または積分電流値のチャート・帳票です。標仕 4.3.9 でも、これらは全ての杭について記録する項目になっています[1]。
2. 試験杭の記録・管理基準と並べて照合する
次に、その記録を試験杭の記録と管理基準に並べます。試験杭は、本杭の前に施工して支持層を確かめ、本杭の管理基準を決めるための杭です。管理基準は、その試験杭の結果から決める「本杭が支持層に届いたかを判断する目安」です。セメントミルク工法の場合、標仕では試験杭の結果に基づいて支持層の確認と管理基準等を定め、全ての本杭をその管理基準等と照合して支持層を確認することになっています[1](4.3.4(5)(ア)・(6)(エ))。
3. 元請が監理者に報告・協議する
協議の窓口は元請です。国土交通省の告示の概要では、地盤条件が設計図書と違うと分かったら下請は書面で元請に知らせ、元請は遅滞なく協議して対応策を定める、とされています[3](1④)。さらに元請は、工事監理者に施工記録を出して施工状況を説明し(1⑤)、下請から報告された施工記録が支持層到達などを証明する記録として適正かを確かめます(3①)[3]。同じ地盤の次の杭をそのまま進めてよいかも、この協議で確かめておくと安心です。
4. 判断は構造設計者・監理者がする
対策は、設計者・監理者の指示に従うのが基本です[2]。現場ができるのは、記録をそろえて、指示が出るまで切らずに待つことです。
切る・継ぐ・補強するの判断は、現場でしません。高止まりした杭は手を付けずに残し、構造設計者・監理者、杭メーカー・杭施工会社に確認してください。
指示を待つ間に気をつけること
指示を待つ間も、現場でできる注意があります。日建連・コンクリートパイル建設技術協会の資料 6-2 にも、杭工事管理者は独断で判断せず、元請技術者へ掘削時の状況を速やかに報告する、とあります[2]。
- 状況は速やかに元請・監理者へ報告する。根固め液などの時間の扱いは、杭施工会社・杭メーカーの施工要領に従う
- 無断で再押込みや引抜きを試みないほうが無難です
- 突き出た杭頭のまわりは、立入禁止にして養生しておくほうが無難です
- 同じ地盤の次の杭を進めてよいかも、協議で確かめておくと安心です
指示が出た後の掘削の動きは、杭工事中に決めておく段取りとつながります。→ 杭工事中に決める掘削の段取り
ここからは僕の話|高止まりした杭を切ったとき
ここからは、手順とは別に、僕の体験です。僕も、既製杭が高止まりして、止まった高さで杭を切ったことがあります。そのときは自分で決めずに監理・設計の側に相談し、支持層に達しているという判断をもらってから切りました。
正直に言うと、当時の僕は「高止まりした=支持層に届いた」と思っていました。このときは監理者にしっかり聞いています。今なら、それが「とは限らない」ことを、原因の節に書いた条件で説明できます。
新人に一つだけ伝えるなら、構造に関わることほど自分で判断せず、監理者に相談することです。反対に、支持層が想定より深いときも、僕はそのまま掘り進めずにまず設計者に確認しています。浅くても深くても、「予定と違う」と分かった時点で止まって聞くのは同じです。
杭頭は切っていい?切る・杭長を変える・根入れを延ばすの3択と注意
杭頭を切るかどうかは、現場ではなく特記と構造設計者・監理者の指示で決まります。特記は、設計図書に書かれた「その工事だけの指定」のことで、標仕 4.3.8(1) は「杭頭の処理は、特記による」としています[1]。上位の解説には「切って天端をそろえる」「わずかなら処理しない」と書いたものもありますが、どちらも誰が決めるかが抜けています。
日建連・コンクリートパイル建設技術協会の資料 6-2 には、支持層が計画より浅く、そこが設計者の定めた支持層で間違いない場合の対処として、次の3つが挙がっています[2]。表の PHC杭・PRC杭は、どちらもあらかじめコンクリートに圧縮力(プレストレス)を入れてつくる既製杭で、PHC杭はプレストレスト高強度コンクリート杭、PRC杭はプレストレスト鉄筋コンクリート杭です。
| 対処 | 何をするか | 注意すること | 決める人・確認先 |
|---|---|---|---|
| ①杭頭のカットオフ+必要に応じて補強 | 杭長を再設定し、止まった高さで杭頭を切る。必要なら補強する | 上杭がPHC杭・PRC杭なら、カットオフ時のプレストレスの損失を考慮する。支持力計算(摩擦力の低下の可能性)による照査・検討が要る | 構造設計者・監理者(確認先:杭メーカー・杭施工会社) |
| ②下杭・中杭の杭長変更 | 杭長を再設定し、杭の長さを変える。どの杭に当てはめるかは設計者・監理者の指示で決まる | 新しく製造して杭長を変えるなら、工程の遅れ・コスト増をあらかじめ監理者(施主)に了承してもらう。支持力の照査・検討が要る | 構造設計者・監理者(工程・コストは施主の了承も。確認先:杭メーカー・杭施工会社) |
| ③杭長は変えず根入れを延ばす | 杭長変更なしで、支持層への根入れ長を延ばす | やり方と可否は設計者・監理者の指示による | 構造設計者・監理者(確認先:杭メーカー・杭施工会社) |
表1 支持層が計画より浅い場合の対処の3択(日建連・コンクリートパイル建設技術協会「杭の施工管理における支持層到達の確認方法(既製コンクリート杭 埋込み工法)」6-2 をもとに作成)
切ることになった場合も、杭頭の処理は特記どおりに行い、杭の中空部にコンクリートなどが落ちないように杭頭に措置をします(標仕 4.3.8(2))[1]。切った後は杭頭補強筋の納まりの確認が要ることがあるので、あわせて読んでおくと安心です。→ 杭頭補強筋の納まり検討
①〜③のどれにするか、補強が要るか、支持力が足りるかは、構造設計者・監理者、杭メーカー・杭施工会社に確認してください。プレストレスの損失や支持力の照査は、現場で判断できる内容ではありません。
杭頭まわりの根切りなどの扱いも、設計者・監理者の指示に合わせます。→ 根切りの幅と余掘り
施工記録に残すこと|支持層深さ・電流値・杭頭の高さ
高止まりした杭は、支持層深さ・電流値または積分電流値・根入れ長さ・杭頭の高さ・杭頭処理の状態などを記録に残します。標仕 4.3.9 は、全ての杭についてこれらを記録するとしています[1]。高止まりした杭は、後で「なぜこの高さで切ったのか」を聞かれることがあるので、協議の結果とつなげて残しておくと安心です。
| 記録する項目(標仕 4.3.9) | 高止まりの協議でどう使うか |
|---|---|
| 支持層深さ | 計画より浅い所で止まったことを示す |
| アースオーガー駆動用電動機の電流値又は積分電流値 | 試験杭で決めた管理基準と照合する(セメントミルク工法の場合、4.3.4(6)(エ)) |
| 杭の根入れ長さ | 所定の根入れ長さが確認できるかを示す(4.1.3(6)(ウ)) |
| 杭頭の高さ | 設計の杭頭レベルとの差(図1の Δh)を示す |
| 杭頭処理の状態 | 協議で決まった処理(特記・指示)どおりに行ったことを残す |
表2 施工記録の項目と、高止まりの協議での使いどころ(標仕 令和7年版 4.3.9 の項目から抜粋。「等」とあるので全項目ではない)
元請は、この施工記録が支持層到達などを証明する記録として適正かを確かめ、工事監理者に出して説明します[3]。下請から受け取った記録をそのまま回すのではなく、協議の経緯と一緒に読める形にしておくのが元請の仕事です。
まとめ
既製杭が高止まりしたら、切る前に止まって、記録をそろえて相談します。やることは次の順番です。
- 止まった杭に手を付けず、杭施工会社から支持層深さと電流値・積分電流値の記録をもらう
- 試験杭の記録・管理基準と並べて照合する
- 元請として監理者に記録を出して報告・協議する(次の杭を進めてよいかも確かめておくと安心)
- 構造設計者・監理者の指示で、①カットオフ+補強/②杭長変更/③根入れ延長のどれかを行う
- 杭頭の高さと杭頭処理の状態を施工記録に残す
構造に関わることほど自分で判断しない。僕が新人に一つだけ伝えるなら、この一言です。
よくある質問
高止まりしたということは、支持層に届いたということ?
とは限りません。電流値などが試験杭で決めた管理指標の値くらいになり、そこが設計者の定めた支持層で間違いないかを確かめる必要があります[2]。孔壁の崩落などの異状で止まった場合もあるので、記録をそろえて構造設計者・監理者に確認してください。
少しの高止まりなら、切らなくていい?
現場では決めません。杭頭の処理は特記によるとされていて、予定の深さまで到達することが困難な場合は監督職員と協議することになっています[1]。何mmまでなら切らなくてよい、という数値は、僕が確かめた一次資料には書かれていませんでした。構造設計者・監理者に確認してください。
杭頭を切ったら補強が要る?
上杭がPHC杭・PRC杭の場合は、カットオフ時のプレストレスの損失を考える必要があり、資料では「必要に応じて補強」とされています[2]。要るかどうか、どう補強するかは構造設計者・監理者が決めます。
支持層が想定より深い(低止まり)ときは?
僕は、そのまま掘り進めずにまず設計者に確認しています。標仕でも、予定の掘削深さになっても支持層が確認できなかった場合は監督職員と協議する対象です[1](4.1.3(6)(イ))。
参考にした基準・資料
- 国土交通省 大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」4.1.3 施工一般 (6)、4.3.4 セメントミルク工法 (5)(6)、4.3.8 杭頭の処理等、4.3.9 施工記録 https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001888816.pdf(閲覧日 2026-10-25)
- 一般社団法人 日本建設業連合会・一般社団法人 コンクリートパイル建設技術協会「杭の施工管理における支持層到達の確認方法(既製コンクリート杭 埋込み工法)」平成29年2月、6-2 支持層への到達深度が計画深度よりも浅い場合の例 https://www.nikkenren.com/publication/pdf/233/sijisou_kakunin.pdf(閲覧日 2026-10-25)
- 国土交通省 土地・建設産業局「基礎ぐい工事の適正な施工を確保するために講ずべき措置(告示)概要」平成28年3月、1④・1⑤・3① https://www.mlit.go.jp/common/001122451.pdf(閲覧日 2026-10-25)
この記事の確認日:2026年10月25日
次に読む
- 杭頭補強筋の納まり検討(杭頭を切った後に確認が要ることがある話)
- 杭芯ずれの対処
- 杭工事中に決める掘削の段取り

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