24 引渡し・アフター|トラブル対処
- 段取り:竣工前1か月の段取り
- 施工中:—
- トラブル対処:この記事
1年点検の不具合で多いのは、クロス(壁紙)の割れとコーナーのコーク切れ、それにドアのラッチが最後まで掛からない不具合です(コークはすき間を埋める材料、ラッチはドアを閉めたとき受けに掛かる金物)。この2つは点検の前に「どう直すか・いつ直すか」を答えられるようにしておき、天井のシミのように雨漏りや配管の水漏れが疑われるものだけは、見える所を直す前に原因を調べます。この記事は、施主向けのセルフチェックではなく、元請の現場監督が1年点検で指摘を受けたときの読み方と動き方の話です。
結論
- 僕の経験では、1年点検で多いのはクロスの割れ・コーナーのコーク切れと、ドアのラッチが最後まで掛からない不具合。
- クロスの割れは場所の予測が難しく、ある程度は出るもの。ドアは季節で閉まり具合が変わるので、季節を通して閉まる調整点を探す。
- 天井のシミは、見える所だけ直さない。雨漏りか配管の水漏れを調べてから直す。品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の10年の責任は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」だけが対象(中身は「10年保証の範囲」の節で説明)。
来週ルーが初めて1年点検に行くので、前の晩に事務所で話している場面です。
来週の1年点検、何を言われるんですかね……。全部やり直しって言われたらどうしよう。
僕のときは、クロスの割れとコーナーのコーク切れ、それにドアがカチャンと最後まで閉まらない、が多かったよ。
ドアは季節で閉まり具合が変わるからな。
じゃあ、その場で何て答えればいいんですか?
「直し方と時期」を答えられるようにしておくこと。あと、天井のシミだけは見える所を直す前に原因を調べる。順番に話すね。
目次
- 1年点検でよく出る不具合は、クロスとドア
- クロスの割れ・コーナーのコーク切れは、点検の場でどう答えるか
- ドアのラッチが最後まで掛からないとき
- 指摘を受けたら:その場で直す/職人と出直す/原因を調べる
- 天井のシミは、見える所だけ直さない
- 10年保証の範囲は「構造」と「雨水」だけ(よくある誤解)
- 点検の前日までにそろえるもの
- よくある質問
- 読み終えたらやること
- 参考にした基準・資料
1年点検でよく出る不具合は、クロスとドア
僕の経験では、1年点検でいちばん多い不具合はクロスの割れと、コーナーのジョイント(ボードの継ぎ目)のコーク切れです。コークは、すき間を埋めるやわらかい材料(コーキング)のこと。次に多いのが、ドアのラッチ(閉めたときに受け側に掛かる金物の出っ張り)が最後までカチャンと閉まらない不具合です。
1年点検は、建物が初めて四季をひと回りしてから受ける健康診断のようなものです。夏と冬の両方を過ごしたあとなので、ドアのように季節で変わるものが顔を出します。
引渡し後のアフター全体でいうと、僕が指摘されてきたのは壁の傷がほとんどでした。たまにクロスの浮きを言われたり、床材を全部替えてほしいと言われたりすることもあります。そして、施主といい関係を築けているかどうかで、最後の指摘の多さは変わると僕は感じています。仲良くできていれば、指摘はそれほど多くありません。施主との話し合いのしかたは「完成後に「色がイメージと違う」と言われたとき」にも書きました。
点検で監督が見ておきたいのは、建具の開け閉め、クロスの割れ・浮き、天井や壁のシミ・水の跡です。この記事では、この3つを中心に扱います。
クロスの割れ・コーナーのコーク切れは、点検の場でどう答えるか
クロスの割れの原因は断言できないので、ここでは点検の場での答え方を書きます。クロスの割れは、どこで割れるかを前もって予測するのが難しく、ある程度は出るものだと僕は考えています。下地に補強を入れたりはしますが、それで全部を防げるわけではありません。だから点検の場では「割れない」と約束するより、「どう直すか・いつ直すか」を答えられるほうが大事です。

- 工事名
- ●●●工事
- 工種
- 内装工事
- 内容
- クロス下地 パテ処理
クロスを貼る前に、石膏ボードの継ぎ目をパテで処理している状況。縦の白い筋がパテを塗ったボードの継ぎ目。
割れが出る理由の一般論(材料の乾燥や継ぎ目の動きなど)は、この記事では言い切りません。メーカーの公開資料で確かめられていないからです。気になる人は、使ったボードやクロスのメーカーの施工資料で確かめてください。
直し方と時期は、会社によってアフターサービスの規準が違います。点検の前に、自社の規準で「1年点検で直すもの」「有償になるもの」を確かめておくと、その場で迷いません。クロス屋さんにいつ動けるかを聞いておけば、「何日ごろに直しに来ます」まで答えられます。
割れが大きい・広がっていく・斜めに走る・同じ所が繰り返し割れる・建具がいっぺんに狂った、など、ふつうの割れと様子が違うときは「よくある割れ」と決めずに、監理者・構造設計者に確認してください。
下地とコークの話は、別の記事に詳しく書いています。
- 下地のボード:内装ボードの選び方/ケイカル板の目地と見切り
- コーナーのコーク:コーキング(シーリング)の選び方
ドアのラッチが最後まで掛からないとき
ドアのラッチが最後まで掛からない不具合は、季節で閉まり具合が変わるので、季節を通して閉まる調整点を探します。僕の見てきた範囲では、季節で気圧や気温が違ううえに、冷暖房の風が直接ドアやサッシに当たったり、家の気密性が高すぎたりすると、開き戸が閉まりにくくなります。だから、いまの季節に合わせて一度で終わらせず、オールシーズンいける調整点を見つけるのが大事です。
まずは施主と一緒に、閉めたときにラッチが受けに入るかを見てください。その場で触るかどうかは、自社のルールと自分の手に負えるかで決め、迷うときは建具屋さんと出直します。振り分け方は次の「指摘を受けたら」の節に書きます。
指摘を受けたら:その場で直す/職人と出直す/原因を調べる
指摘を受けたら、まず現物を見て、「安全や設備に関わるか」「水が関わるか」「その場で直せるか」で振り分けます。この振り分けは、引渡し後に天井のシミの連絡を受けたときの僕の動き方(まず見に行く、連れて行く職人を決める、後からできたシミなら雨漏りか配管を確かめる)を、ほかの指摘にも当てはめて整理したものです。
手すりや階段のぐらつき、電気・ガス・給湯などの設備、換気の不具合は、その場で触らずに、担当の業者・メーカー・社内の安全担当につなぎます。「その場で直せる軽い調整」に何を入れるかは、会社のルールと、自分の手に負えるかで決めます。迷うものは、無理にその場で触らず、職人さんと出直すほうに振ります。下の表1は、僕がアフターで言われてきた不具合を、図1のどこに入るかで並べたものです。右の2列は僕の体験ではなく、図1に当てはめて整理した目安です。
| 不具合 | 僕が見てきたこと | 目安(筆者の整理) | 連れて行く人の目安 |
|---|---|---|---|
| クロスの割れ・コーナーのコーク切れ | 1年点検でいちばん多い。どこで割れるか予測が難しい | 職人と出直す | クロス屋さん |
| ドアのラッチが最後まで掛からない | 季節・冷暖房の風・気密で閉まり具合が変わる | —(Kony 確認の枠を参照) | —(Kony 確認の枠を参照) |
| 壁の傷 | アフターの指摘ではほとんどがこれ | — | — |
| クロスの浮き | たまに言われる | 職人と出直す | クロス屋さん |
| 天井のシミ | 後からできたなら雨漏りか配管の水漏れを疑う | 原因を調べる | 雨漏り・配管を見られる職人さん |
床材を全部替えてほしい、のように大きな話になったときは、その場で返事をしません。契約の内容と自社の規準を確かめてから、社内で決めた答えを持って行きます。
天井のシミは、見える所だけ直さない
引渡し後に「天井にシミが出た」と連絡が来たら、僕はまず見に行きます。どの職人さんを連れて行くかを決め、すぐに段取りして手直しに行きます。後からできたシミなら、雨漏りか配管の水漏れが考えられるので、そこを確かめます。
アフターの連絡は後回しにしてはいけません。忘れてしまったら最悪なので、そういう連絡ほど早く動くようにしています。雨漏りの可能性があるのに調査をせず、見える部分だけ直すと、また同じシミが出る可能性があります。
屋根・外壁・外壁の開口部の建具(サッシなど)は、次の節で書く品確法の「雨水の浸入を防止する部分」に入ります。サッシまわりの確認は「サッシ取付の手順と確認」にまとめています。
一般的な注意として、水が滴っているときや、シミが照明・換気扇の近くにあるときは、施主にその照明の使用を控えてもらい、電気設備の担当に確認してください。
雨漏りが疑われるシミは、品確法の10年の責任の対象になる部分に関わることがあります。原因の調べ方と直し方、保証の扱いは、自分だけで決めずに監理者・社内に確認してください。
10年保証の範囲は「構造」と「雨水」だけ(よくある誤解)
クロスと室内のドアは、10年の対象の部分を決めた施行令第5条の列挙に出てきません。品確法が定める10年の責任は、家の全部ではなく、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の瑕疵(かし:欠陥のこと)だけが対象です。検索で出てくる記事には「家本体は10年保証」「法律で定められた10年保証」と範囲を書かずに言うものがありますが、原文では範囲が決まっています。
品確法 第94条・第95条:引渡しから10年
住宅を新築する請負契約では、請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵について、担保の責任を負います(第94条第1項)[1]。ただし、構造耐力または雨水の浸入に影響のない瑕疵は除かれます。この規定に反する特約で注文者に不利なものは無効です(同条第2項)。
新築住宅を売る場合も同じで、売主は買主に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について責任を負います(第95条第1項)[1]。また、契約で、この期間を引き渡した時から20年以内まで延ばすことができます(第97条)[1]。
施行令 第5条:対象の部分の中身
「構造耐力上主要な部分」は、住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい・方づえ・火打材など)、床版、屋根版、横架材で、住宅の荷重などを支えるものです(施行令第5条第1項)[2]。「雨水の浸入を防止する部分」は、屋根・外壁と、その開口部に設ける戸・わくその他の建具、それに雨水を排除するための排水管のうち屋根・外壁の内部か屋内にある部分です(同条第2項)[2]。
施行令第5条の列挙には、室内の仕上げ(クロスなど)や室内の建具(室内ドアなど)は出てきません。つまり、1年点検でよく言われるクロスの割れやドアのラッチは、この10年の話とは別の、契約と自社のアフターサービス規準の話として扱うことになります。ただし、割れの原因が構造や雨水の側にあるなら話は別です。個別の不具合がどれに当たるかは、監理者・社内に確認してください。
住宅瑕疵担保履行法は「お金の備え」の法律
もう一つよくある取り違えが、10年の責任を住宅瑕疵担保履行法の定めだと書くものです。国土交通省の案内では、品確法に基づいて10年間の瑕疵担保責任を負うこととされているのを前提に、その責任を果たすための資力確保の義務付けが平成21年10月1日に施行された、と説明されています[3]。10年の責任を決めているのは品確法で、履行法はその備え(資力確保)の法律です。
民法:契約不適合は「知った時から1年以内」に通知
品確法の10年の範囲とは別に、民法にも期間の決まりがあります。請負では、注文者がその不適合を知った時から1年以内に請負人に通知しないと、追完(直してもらうこと)・報酬の減額・損害賠償・契約の解除を求められなくなります(民法第637条第1項)[4]。数えはじめは引渡しからではなく「知った時から」です。
ある不具合が瑕疵や契約不適合に当たるかどうかの判断は、この記事では書きません。契約書と社内の法務に確認してください。
点検の前日までにそろえるもの
点検の前に、引渡しのときの書類を机の上に出し、よく言われる不具合の職人さんにいつ動けるか声をかけておきます。僕は引渡しの前に、保証書の宛名・住所、鍵の本数、完成図書の図面、施工写真を机の上にそろえていました。1年点検の前にも、同じものを出しておくと、その場で図面や写真を見ながら話せます。
| もの | 点検の場で使うこと |
|---|---|
| 保証書 | 宛名・住所と、保証の範囲・期間を施主と一緒に見る |
| 完成図書の図面 | 指摘の場所が、どの部屋・どの壁・どの建具かを確かめる |
| 施工写真 | 下地や納まりがどうなっていたかを、仕上げをはがさずに確かめる |
| 自社のアフターサービス規準 | 1年点検で直すもの・有償になるものを確かめる |
| 職人さんの予定 | クロス屋さん・建具屋さん・設備屋さんが、いつ動けるか |
引渡しまでの段取りは「竣工前1か月の段取り」に、1年目の監督の仕事全体は「施工管理1年目の仕事」に書いています。
よくある質問
1年点検は法律で決まっていますか?
品確法の第94条〜第97条が定めているのは、新築住宅の10年の責任の期間と範囲です[1]。1年点検の時期や中身は、自社の契約書とアフターサービスの規準で確かめてください。
クロスの割れは10年保証の対象ですか?
10年の対象の部分を決めた施行令第5条の列挙に、室内の仕上げは出てきません[2]。個別の不具合の扱いは、監理者・社内に確認してください。
ドアが季節で閉まらなくなるのはなぜですか?
はっきりした原因は言い切れません。僕の見てきた範囲では、季節で気圧や気温が違うことや、冷暖房の風がドアに直接当たること、気密性の高さで、開き戸が閉まりにくくなることがあります。だから季節を通して閉まる調整点を探します。
1年点検を過ぎたら、もう直さなくていいですか?
点検の時期と、法律で通知できる期間は別の話です。民法第637条第1項は、注文者が不適合を「知った時から一年以内」に通知しないと請求できなくなる、という決まりです[4]。個別の扱いは社内の法務に確認してください。
10年の期間は延ばせますか?
契約で、引き渡した時から20年以内まで延ばすことができます(品確法第97条)[1]。
指摘が多い現場と少ない現場は、何が違いますか?
僕の感じでは、施主といい関係を築けているかどうかが、最後の指摘の多さに影響します。仲良くできていれば、指摘はそれほど多くありません。
読み終えたらやること
- 保証書・完成図書の図面・施工写真を、点検の前に机の上に出す。
- 自社のアフターサービス規準で、1年点検で直すもの・有償になるものを確かめる。
- クロス屋さん・建具屋さん・設備屋さんに、点検のあといつ動けるか声をかけておく。
- 図1の振り分け(安全・設備に関わるか→水が関わるか→その場で直せるか)を頭に入れて、点検に行く。
参考にした基準・資料
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第94条第1項・第2項、第95条第1項、第97条 e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000081(閲覧日 2026-10-25)
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令(平成十二年政令第六十四号)第5条第1項・第2項 e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/412CO0000000064(閲覧日 2026-10-25)
- 国土交通省「住宅瑕疵担保履行法」案内ページ https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/rikouhou/(閲覧日 2026-10-25)
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)第637条第1項 e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(閲覧日 2026-10-25)
この記事の確認日:2026年10月25日
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