導入:現場で増える「数量ズレ」を止める
最近の現場でよくある課題が、外壁サイディングの数量ズレ。見積段階の拾い出しと実施工後の使用量に差が出て、材料追加や手配遅れ、コスト超過が発生しがちです。原因は「ネット面積だけで拾っている」「付属部材やコーキングm数を甘めに見ている」など。この記事では、現場監督・施工管理技士向けに、外壁サイディング 数量拾いを実務レベルで正確化する手順とコツをまとめます。
本論:外壁サイディング 数量拾いの方法
図面から拾う基本手順(サイディング拾い出し)
まず立面図・平面図・矩計を並べ、張り方向(横張り/縦張り)とモジュール(例:3030×455mmの窯業系)を確定。次に各外壁面の基準長さ(m)×軒天〜土台水切りまでの高さ(m)で総外壁面積(㎡)を算出し、開口部(窓・ドア・換気口)をmm単位で差し引きます。外角・入隅・目地位置、役物(スターター、見切り、コーナー、笠木)も同時にマーキングしておくと後工程がスムーズです。
ネット面積とロス率の決め方
ネット面積に対して「ロス率」を必ず上乗せします。張り方向やモジュール、開口密度で変動しますが、実務目安は横張りで5〜7%、縦張りや開口が多い面で7〜10%。同一現場でも面ごとにロス率を変えると精度が上がります。端部・切り回し・柄合わせ(意匠指定あり)でロスが跳ねるので、カタログの有効働き幅を必ず参照。
付属部材 数量拾いのコツ
スターターは外周長から入隅分を差し引いた延長で拾い、コーナー材は外角ごとの高さ(m)で本数換算。見切り(開口まわり・中間水切り)は寸法通りにm数で拾い、規格長さ(例:3,000mm/本)で本数に換算。笠木・胴差・サッシ下端の水切りは、役物の納まり図を確認し、重ね代(例:30mm)を考慮して余尺を確保します。
コーキングm数と見積精度
コーキングは「縦目地+横目地+開口取り合い+役物取り合い」の総延長で拾います。目地ピッチ(例:455mm)と階数を掛け、さらに四周シーリングの有無を反映。断面サイズ(例:10×10mm、12×12mm)で材料量が変わるため、設計仕様書とメーカー標準を照合します。単価は地域で差がありますが、400〜600円/mが目安。打設可能温度や養生期間も工期に影響します。
施工方法の工夫と注意点
・基準割付を先に決め、開口周りに半端が集中しないようスタート位置を調整。・土台水切りからの立ち上がり寸法(例:12mm)と通気層厚(例:18mm)を現場で実測し、役物の納まり干渉をチェック。・耐力壁釘ピッチとビス位置が目地と干渉すると割れの原因。・雨仕舞い優先で水平役物の勾配1/20程度を確保。
事例・数字で解説(モデル計算)
対象:2階建て住宅、外周長50.0m、軒天〜土台水切りの平均高さ6.0m。総外壁面積は50.0×6.0=300.0㎡。開口(窓・ドア)合計は18.2㎡(2.0㎡×6、1.2㎡×3、0.6㎡×4等の合算)。ネット面積は300.0−18.2=281.8㎡。横張り・標準ディテールのためロス率7%を採用し、必要面積は281.8×1.07=301.5㎡。
パネル規格:3030×455mm(働き幅約455mm、働き面積=3.03×0.455=1.380㎡/枚)。必要枚数は301.5/1.380≈219枚。端数を考慮し225枚手配。
付属部材:スターター外周長=50.0m(入隅2箇所分0.6m控え)→49.4m。3,000mm/本で17本。外角コーナーは4箇所×6.0m=24.0m→3,000mm/本で8本。中間水切り(1階と2階の見切り)=外周50.0m。見切り・開口まわり合計=72.0m(サッシ12箇所×四周合計)。
コーキングm数:縦目地は外周50.0m÷働き幅0.455m≈110スパン×階数2→220本。1本高さ3.0mで延長=660m。横目地は帯部・胴差等で計80m。開口・役物取り合い=72.0m。合計=812m。断面12×12mmを採用し、メーカー歩掛で約0.144L/m→必要量約117L。
概算コスト(参考):サイディング材料3,000円/㎡→301.5㎡×3,000=904,500円。手間2,500円/㎡→753,750円。コーキング500円/m→812m×500=406,000円。役物一式約280,000円。計約2,344,000円。もし拾いで5㎡不足すると、材料+手間だけで(3,000+2,500)×5=27,500円の追加、再手配・待機で1日(4人工)相当のロスが発生します。
チェックリスト(数量拾い・手順)
- 張り方向・モジュールを確定(働き幅を必ず確認)
- 面ごとに高さ×長さで面積化し、開口はmm単位で控除
- 面ごとにロス率を設定(5〜10%を根拠付きで)
- スターター・コーナー・見切り・笠木など付属部材はm→本に換算
- コーキングm数は縦目地・横目地・取り合いを全て合算
- 断面寸法(10×10/12×12)と単価、養生日数を記録
- 納まり図で重ね代・逃げ寸法・通気層厚を確認
- 拾い表に面番号・開口ID・材料規格を紐付け
- 発注前に現場実測差と設計変更を反映
- 余剰分の再利用計画(予備材の保管・次工程)を決める
まとめ:明日から使えるTips
・「外壁サイディング 数量拾い」はネット面積だけで終わらせない。面ごとロス率・役物・コーキングm数まで一枚の拾い表で一元管理。・最初に張り割付の仮伏せ図を作り、開口と目地の干渉を解消してから面積確定。・規格長さ3,000mmの役物は「重ね代+カットロス」で2〜3%上乗せ。・コーキングは断面サイズで材料量と単価が大きく変わるため、設計仕様の再確認をルーチン化。・拾い結果と実績の差を毎現場で記録し、次案件のロス率に反映。これだけで見積精度と工期の安定が一段上がります。
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