杭芯ずれが出たら、現場監督がやることは「測る・図にする・すぐ監理者へ報告する」の3つです。補強が要るか、フーチングをどう変えるかを決めるのは監理者と構造設計者で、監督ではありません。杭芯ずれの許容範囲も、公共建築工事標準仕様書には数値がなく「特記による」とされているので、特記仕様書と杭の施工要領書で確かめます。
05 杭工事|トラブル対処
- 段取り:—
- 施工中:—
- トラブル対処:この記事
杭打ち2日目の夕方、杭打ち機の横で。
今日の杭、少しずれてましたよね。ちょっとずれたくらいなら、基礎で吸収できますよね?
それを決めるのは、僕たち監督じゃないんだ。杭の位置は構造設計の前提だから、直し方は監理者と構造設計者が決める。
じゃあ、ずれたとき監督は何をすればいいんですか?
まず測って、元の杭の位置と並べて図にすること。X・Y・斜めに何mmずれたかが一目で分かると、話が早いよ。
それって、明日の朝の打合せで伝えれば間に合いますか?
報告はすぐに、が基本だよ。今日は、報告・測り方・許容範囲・決まるまでの流れ・ずれを小さくする段取りの順番で話すね。
この記事で分かること
- 杭芯ずれが出たときに、監督が最初にすること
- ずれの測り方と、報告に使う図の書き方
- 許容範囲・フーチングの補強がどこで決まるか、決まるまでの流れ
杭芯ずれが出たら、最初にすることは「すぐ報告」
新人に一つだけ伝えるなら、僕は「杭芯がずれたら、報告はすぐに」と言います。ずれをどう扱うかは監督の判断で決められないので、監督が抱えていても話は一歩も進みません。決める人に早く渡すことが、監督のいちばんの仕事です。
標仕(公共建築工事標準仕様書)でも、4.1.3(5) で施工状況は随時監督職員に報告する、4.1.3(6)(エ) で「所定の寸法、形状及び位置を確保することが困難な場合」は監督職員と協議する、とされています。民間の工事なら、監理者への報告・協議と読み替えて考えます。
Konyの現場メモ
僕の現場で、杭を打ち込んでいるときに杭芯が大きくずれたことがあります。地中に打ち込めないほど硬い層があったのが原因でした。そのときは手を止めて、すぐ監理者に伝えました。
杭芯ずれの確認方法|元の位置とX・Y・斜めの距離を図にする
報告に使う図には、元の杭の位置(設計の杭芯)と、施工後の杭の芯を並べて描きます。そのうえで、X方向・Y方向に何mmずつずれたかと、斜め方向の直線距離を書き込みます。僕の現場でも、この形で測った図面を監理者に出しました。
X・Yを分けて書くのは、どちらの通りにどれだけ寄ったかで、フーチングや梁への影響の出方が変わるからです。斜めの直線距離は、X・Yのずれから三平方の定理(√(X²+Y²))で求められます。測るときは、通り芯から出した逃げ墨を基準にすると、杭のまわりが掘られていても位置を出し直せます(逃げ墨の出し方は逃げ墨の出し方で書きました)。
図とあわせて、記録に残す項目を決めておくと、報告のたびに迷いません。標仕 4.3.9(既製コンクリート杭の施工記録)でも、全ての杭について「水平方向の位置ずれ寸法」や「建込み中の鉛直度」などを記録することになっています。下の表は、僕が報告のときに書いておきたい項目です。
| 項目 | 書くこと | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 杭の番号 | 杭伏図の番号と通り | どの杭の話かを取り違えないため |
| 元の位置 | 設計の杭芯(通り芯からの寸法) | ずれの起点をはっきりさせるため |
| X方向のずれ | どちら向きに何mmか | どの通りへの影響かを見るため |
| Y方向のずれ | どちら向きに何mmか | 同上 |
| 斜めの直線距離 | 元の芯から施工後の芯まで何mmか | ずれの大きさを1つの値で伝えるため |
| 原因として分かっていること | 硬い層に当たった、など見たこと | 次の杭の打ち方を考える材料にするため |
| 報告した日と相手 | いつ、誰に伝えたか | 指示待ちの期間を工程に反映するため |
杭芯ずれの許容範囲は「特記による」|標仕に数値はない
「何mmまでなら大丈夫か」が気になるところですが、標仕 令和7年版の第4章には、杭芯ずれの許容範囲の数値は書かれていません。既製コンクリート杭のセメントミルク工法(4.3.4(6)(ア))も、場所打ちコンクリート杭(4.5.5(3)(ア))も、「杭の水平方向の位置ずれの精度は、特記による」とされています。特定埋込杭工法(4.3.5(4))は、工法ごとに定められた条件によります。
つまり許容範囲は現場ごとに特記仕様書と杭の施工要領書で決まるので、ネットで見た数値をそのまま当てはめてはいけません。杭打ちが始まる前に、特記と施工要領書で許容値を確かめ、施工記録の様式に書き込んでおくと、ずれたときにすぐ判断材料がそろいます。許容値の中に収まっていても、ずれが出た事実は記録と報告に残します。
杭芯ずれのフーチング補強や梁の鉄筋追加は、監理者・構造設計者が決める
ずれた杭をどう受けるかは、杭・フーチング・基礎梁の力の流れに関わるので、構造設計者が検討して監理者から指示が出ます。僕の現場では、監理者からフーチングの形を変える指示と、梁にD22を1本追加する指示があり、変更の設計図をもらってから施工しました。どんな補強になるかは、ずれの大きさや建物ごとに変わります。
構造に関わるところ
杭芯ずれに対するフーチングの変更や鉄筋の追加は、構造の性能に関わります。「少しだから基礎で吸収できる」と現場で決めず、監理者に報告して、必ず構造設計者・監理者の指示を仰いでください。
変更図が出たら、杭頭補強筋とフーチング・基礎梁の鉄筋の納まりもあわせて見直します。杭芯がずれると杭頭補強筋の位置も一緒に動くので、梁やフーチングの主筋とぶつからないかを先に確かめておくと、配筋のときに慌てません(杭頭補強筋の納まり検討)。
報告から変更図・施工までの流れと期間
流れは、測る→図にする→監理者へ報告→構造設計者が検討→変更図を受け取る→変更図どおりに施工、の順です。監督が動くのは前半の3つと、最後の施工の段取りです。僕の現場では、図面を出してから決まるまで2週間くらいかかりました。
この待ちの期間は、工程表に指示待ちとして入れておきます。変更が決まらないうちは、その杭まわりのフーチングや基礎梁の配筋・型枠に進めないからです。ほかの杭や掘削の段取りで進められるところを先に回すと、全体の遅れを小さくできます(掘削の段取り|杭工事中に決める重機の出し方)。
杭芯ずれを小さくする段取り|杭心棒・逃げ・測量機器
僕の現場では、杭芯に杭心棒を打ち、杭打ち機がなるべくその上を踏まないように動いてもらっていました。それでも踏まれたり飛んだりしそうなところは、杭芯から1m・2mの逃げの位置に、別の杭心棒を2本打っておきます。逃げからの引き出し寸法も図面上で出して確認しておくと、杭心棒がなくなっても芯を戻せます。
杭ナビのような新しい測量機器を活用するのもいいと、僕は思っています。これは僕の意見なので、使い方や精度は機器ごとにメーカーの資料で確かめてください。どの機器でも、据え付けと基準点の確認が雑だと出した芯もずれるので、基本の扱いは押さえておきましょう(オートレベルとトータルステーションの据え方)。

- 工事名
- ●●●工事
- 工種
- 杭工事
- 内容
- 杭芯位置確認(巻尺)
杭芯ずれは、出てしまったあとに監督が直し方を決めることはできません。だからこそ、測って図にして、すぐ監理者へ渡すことに集中してください。次の杭打ちの前には、杭心棒の逃げを2本ずつ打つ位置を決めて、図にしておきましょう。
- 杭工事の次に考えること|掘削掘削の段取り|杭工事中に決める重機の出し方
- 杭頭まわりの配筋杭頭補強筋の納まり検討
- 位置出しの基本逃げ墨の出し方
参考にした基準・資料
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版4章 地業工事:4.1.3(5)(6)(報告・協議)、4.3.4(6)(ア)・4.3.5(4)・4.5.5(3)(ア)(杭の水平方向の位置ずれの精度)、4.3.9(施工記録)
基準の数値は版によって変わることがあります。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準を確認してください。

コメント