03 測量・墨出し|段取り
- 段取り:この記事
- 施工中:墨出しの進め方
- トラブル対処:レベル測定のミスを防ぐ
午後、土間下の砕石の高さを見てきます。レベルは空いてる所に置いて、覗けばいいんですよね?
適当に置いたレベルは、適当な数字しか出さねえぞ。三脚もちゃんと踏んどけ。
……踏みます。でも、どの高さに据えればいいのかも、実はよく分かってないです。
据える前に「何を基準に、どの高さで据えるか」を決めるだけで、計算ミスはかなり減るよ。午後までに段取りを一緒に並べよう。
この記事で分かること
- 測る前日までに決めておくこと(基準・据え方・持ち物)
- オートレベルを「指定の高さ」に据える手順と、器械高の計算の型
- トータルステーションの据え方と、最後にもう一度鋲に合わせる理由
測量は、ほかの全部の工種の「基準」をつくる仕事
03 測量・墨出しは、着工直後のベンチマーク(KBM)や遣方から始まって、基礎・躯体・仕上げまで、竣工の直前まで続きます。山留めや杭の位置、基礎の天端、各階の墨、土間の高さ。どれも測量で出した位置と高さの上に載っています。だから一度ずれると、その上の工種が全部ずれます。
基準のつくり方は、公共建築工事標準仕様書(令和7年版)にも書いてあります。ベンチマークは木杭やコンクリート杭などで動かないように設けて、周りを養生します(動くおそれのない固定物があれば代わりに使えます)。位置や高さ、設け方は監督職員の検査を受けます(2.2.2)。遣方も、建物の位置と水平の基準をはっきり表示して検査を受けます(2.2.3)。
僕は社内の若手向けの測量実習で講師をしています。最初に話すのは、測量は土地や建物を「正確に知る」ための技術で、建物の品質と安全を左右する、ということです。そして測量の正確さは、器械を覗く前の段取りでかなり変わります。
測る前のタイムライン|前日までに決めること
実習では、測量を「計画 → 資料調査 → 現地で測る → データの整理 → 図や計画に反映」の順で考えるように話しています。現場の毎日の測量に置き換えると、こうなります。
- 計画
- 資料調査
- 現地で測る
- データの整理
- 図や計画に反映
| いつ | 決めること・やること | 相手 |
|---|---|---|
| 着工前 | 測る目的・範囲・精度・使う器械を決める。設計図で建物の配置、境界、基準の高さ(設計GL・FL)を確かめる | 社内、監理者 |
| KBMを設けるとき | 位置と高さを決め、動かないように設けて養生する。監理者の検査を受ける(標仕 2.2.2) | 監理者 |
| 測る前日 | 基準にする点(KBM、FL+1,000 の墨など)を決めて、野帳の1行目に書く。見たい点の図面上の高さを拾っておく | 自分 |
| 前日 | 器械の電池、三脚、持ち物をそろえる(最後のチェックリスト) | 自分 |
| 当日、据える前 | 足元(土間か土か)、振動(大通り沿い、重機)、雨と風を見て、据える場所を決める | 自分、近くの職長 |
| 測ったあと | 読みと計算を式のまま野帳に残し、図面の高さと並べてから報告する | 職長、所長 |
「図面上の高さを拾っておく」は、地味ですが一番効きます。測った数字が出たとき、すぐに「あり得る高さか」を比べられるからです。僕はこれを怠って、既存側溝の高さを大きく読み違えたことがあります(レベル測定で基準を盛り替えたときの読み違いに詳しく書きました)。
据え方を決める|バカで据えるか、指定の高さに据えるか
オートレベルの据え方は、大きく2つです。現場では「バカで据える」「指定の高さに据える」と言っています。
| バカで据える | 指定の高さに据える | |
|---|---|---|
| やり方 | 自分が据えやすい高さに据える | FL+1,000 などの決めた高さに、視準線を合わせて据える |
| 速さ | 早い | 合わせる分だけ時間がかかる |
| 計算 | 毎回「器械高−読み」を計算する。ややこしくなりがち | 単純。ミスしにくい |
| 向いている場面 | 2点の高低差だけ知りたいとき | 1か所に据えて、何か所もの高さを見るとき |
Q土間下の砕石の高さを、1か所に据えて何十点も見る。どう据える?
- Aバカで据える(据えやすい高さ)
- B指定の高さ(FL+1,000 など)に据える
- C1点ごとに据え直す
答えを見る
B 指定の高さに据えると器械高が切りのいい数字になり、読みを見ただけで高い・低いが分かります。計算が単純で、何点も見る日ほどミスが減ります。
どちらで据えても、高さの計算の型は同じです。まず KBM(または基準の点)に立てたスタッフを読んで、器械の高さ(器械高 IH)をつかみます。次に見たい点のスタッフを読みます(前視 FS)。見たい点の高さは「器械高 − 前視」です。
指定の高さに据えると、この「器械高」が最初から FL+1,000 のような切りのいい数字になります。FL±0 の点ならスタッフの読みは 1,000。読みを見ただけで「高い・低い」が分かるので、何点も見る日は特に楽です。
指定の高さへの据え方
- 三脚の高さを、だいたい見たい高さになるように立てて、レベルを覗く。
- 見たい高さの ±5mm 以内に入るまで、三脚の長さを3本とも調整する。
- 最後は整準ねじを3つとも回して、高さを合わせる(気泡が中心にあるかも確かめる)。
±5mm は、僕が実習で教えている追い込みの目安です。三脚で寄せきってから、ねじで仕上げる。ねじだけで寄せようとすると、ねじの回し代が足りなくなりがちです。
指定の高さに据えるとき、三脚で寄せる目安(僕が実習で教えている値)
三脚で寄せきってから、整準ねじで仕上げる
オートレベルの据え方|三脚と整準の2ステップ
オートレベルの「オート」は、視準線(覗いている線)を自動で水平にしてくれる機能のことです。中に振り子のように吊られたプリズム(コンペンセータ)があって、本体が少し傾いていても見ている景色は水平に保たれます。裏を返すと、振動や落下で狂いやすい器械です。落としたり強くぶつけたりしたものは、そのまま信用しないでください。メーカーや販売店の点検、または取扱説明書の点検方法で確かめてから使います。
1. 三脚を据える
- 脚を均等に広げて、上皿がなるべく水平になるようにする。
- 高さは、背伸びも中腰もしないで覗ける高さに。楽な姿勢のほうが読みの誤差も減ります。
- 石突に体重をかけて、しっかり踏み込む。土間の上のように石突が食い込まない所では、滑らないように気をつける。
- 本体を乗せて中心のねじで固定し、気泡を見ながらある程度水平にしておく。球面三脚なら、ここがかなり楽です。
2. 整準ねじで水平を合わせる
手前の2本は「同時に・逆向きに」が大事です。両手の親指を、内側どうし、または外側どうしに動かします。1本ずつ回すと気泡が斜めに逃げて、真ん中に寄せにくくなります。
トータルステーションの据え方と、測るときの3つの注意
トータルステーション(TS)は、角度を測るセオドライトと、距離を測る光波測距儀を一体にした器械です。角度と距離から、その場で座標を計算して記録できます。
| 器械 | 測るもの | ひとこと |
|---|---|---|
| トランシット/セオドライト | 角度(水平角・鉛直角) | 距離は直接測れない。今はデジタル表示のセオドライトが主流 |
| 光波測距儀 | 距離(斜距離) | 反射プリズムに光を当て、戻ってくるまでの時間などで測る |
| トータルステーション | 角度+距離 | 座標を計算・記録できる。今の現場の主流 |
TS はレベルと違って、器械を地面の鋲(基準点)の真上に据える必要があります。ここで気をつけたいのが、水平を合わせたあとに鋲からずれたまま測り始めることです。
据え終わったら、測るときに次の3つを外さないようにしています。
- 斜距離と水平距離を取り違えない。表示の切り替えを確かめてから読む。図面の寸法は水平距離です。
- 角度を見るときは、基準のポイントに合わせて0セットする。忘れると、その先の角度が全部ずれます。
- チルトで電子気泡管をこまめに見る。しばらく時間を置いたとき、大通り沿いや重機の近くで振動があるときは特に。
TS で出した位置は、そのまま型枠やアンカーボルトの位置の確認にも使われます。据え方の1か所の手抜きが、鉄骨の建方まで響くと思っておいてください。
監理者・協力会社と先に決めておくこと
- KBM は監理者の検査を受けて、全員が同じものを使う。位置・高さ・設け方の検査を受けます(標仕 2.2.2)。測る人が途中で別の基準に変えないことが大前提です。
- 遣方は、逃げ心と基準の表示まで確認する。建物の隅などの要所に遣方を設け、工事の邪魔にならない場所に逃げ心を設けます。位置と水平の基準を表示して検査を受けます(標仕 2.2.3)。
- 検査に使う基準巻尺を決めておく。標仕では、検査に使う基準巻尺は JIS B 7512(鋼製巻尺)の1級です(2.2.3)。墨出しを頼む協力会社の巻尺とも、この基準巻尺で照らし合わせておくと、後で「どっちのテープが正しいか」で揉めません。
- 据える場所と時間を、近くの職長と決める。重機が動く横や、資材の通り道に器械を据えると、振動で狂ったり、蹴られたりします。
高さの基準は、コンクリートの天端を均すときの確認にもそのまま使います。打設の日の高さの見方は打設当日に監督が見るところ、その前の段取りはコンクリート打設の段取りにまとめています。
準備物チェックリスト(印刷して使う)
何が要るかは、現場の状況と測り方で変わります。測る場面を頭の中で一度歩いてから、そろえてください。
オートレベルで測る日
- ☐ オートレベル本体・三脚(できれば球面三脚)
- ☐ スタッフ(バカ棒)
- ☐ スケール、差金、水平器
- ☐ ホルダー、油性ペン
- ☐ 養生テープ、ビニールテープ
- ☐ 電卓、野帳(1行目に基準を書いておく)
- ☐ 見たい点の図面上の高さのメモ
トータルステーションで測る日(上に足すもの)
- ☐ トータルステーション本体・三脚、予備の電池
- ☐ プリズム
- ☐ 水糸、巻き尺
- ☐ 基準にする鋲・ポイントの位置と座標のメモ
測量は、上手に覗けるかより、覗く前に何を決めたかで結果が変わります。基準を書く、据え方を決める、最後にもう一度確かめる。この3つだけでも、明日の測量から試してみてください。
参考にした基準・資料
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版2章 仮設工事 2.2.2 ベンチマーク、2.2.3 遣方(基準巻尺 JIS B 7512 1級)
この記事は、僕が現場で聞いたこと・やってきたことを書きためたメモをもとにしています。一つの現場での例なので、思い違いもあるかもしれません。基準の数値は資料で確かめて書いていますが、実際の工事では設計図・特記仕様書・メーカーの資料を優先し、監理者に確認してください。
器械の据え方と、±5mm・5″(5秒)の目安は、僕が社内の測量実習で教えている現場のやり方です。器械ごとの点検・調整は、各メーカーの取扱説明書を優先してください。記事中の器械高・読みの数値は説明のための例です。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準を確認してください。
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