逃げ墨の出し方|通り芯から1m逃げて、寸法と本墨の向きの矢印を書く

測量・墨出し:逃げ墨の出し方|寸法と本墨の向きの矢印を書く 03 測量・墨出し

03 測量・墨出し|施工中

  1. 段取り:オートレベルとトータルステーションの据え方
  2. 施工中:この記事/墨出しの進め方
  3. トラブル対処:レベル測定のミスを防ぐ

土間コンの打設が終わった翌朝、柱の墨を出しに行く前に。

ルー

柱が立つ所、どうやっても墨がまっすぐ打てないんです。

テツさん

だったら逃げ墨を打っとけ。通りから離せば、柱には当たらねえだろ。

ルー

逃げ墨、メモしました!何ミリ離せばいいんですか?

Kony

僕はたいてい1m逃げる。でも、数字より大事なことがあるんだ。

ルー

え、何ですか?

Kony

何ミリ逃げたかと、どっちが本墨かを墨の脇に書いておくこと。逃げ墨の出し方を、順に話すね。

結論から言うと、逃げ墨の出し方は、柱や型枠で本墨が打てない所を、通り芯から決めた寸法(僕の現場では1mが基本)だけ離して打ち、その脇に「X1通りから1m」のような寸法と、本墨の向きを示す矢印を書くことです。

この記事で分かること

  • 逃げ墨とは何か、何ミリ逃げるかの決め方
  • 逃げ墨に書く寸法と矢印
  • 通り芯の逃げと基準点を、消えない所に残すやり方

逃げ墨とは:柱や型枠で本墨が打てない所に出す線

逃げ墨は、柱などが当たって本墨(通り芯そのものの墨)が打てないから出す線です。本墨の位置から決めた寸法だけ離して平行に打ち、あとはその線から測って柱や型枠の位置を出します。本墨が見えなくなっても、逃げ墨と寸法が残っていれば位置は戻せます。

捨てコンの上でも土間の上でも、考え方は同じです。捨てコンの段階の墨出しは捨てコンと砕石地業の確認に、墨出し全体の順番は墨出しの進め方にまとめています。

模式図・寸法は例 X1 Y1 Y2 柱が当たって 本墨が打てない 逃げ墨 X1通りから1m 本墨の向きへ矢印 1,000
図1X1通りの逃げ墨と書き込み(模式図・寸法は例)。1mは僕の現場でのやり方で、決まった基準の数値ではありません

何ミリ逃げるか:僕は1mが基本、段差や間柱に当たるなら500も

僕の現場では、逃げ墨は通り芯から1mで出すことが多いです。ただし、これは僕の現場でのやり方で、何ミリ逃げなさいという決まりの数字ではありません。

困るのは、1m逃げた所にちょうど段差や間柱などがあるときです。そこに打っても、逃げ墨がまた打てなかったり、見えなくなったりします。そういうときは図面をよく見て、どこに逃げるのがいいかを決めます。僕は500でもいいと思っています。

1m逃げた所の状況逃げの寸法(僕の現場の例)書き込み
段差・間柱などがなく、問題なく打てる1m「X1通りから1m」と、本墨の向きの矢印
ちょうど段差や間柱などに当たる図面をよく見て決める(500など)「X1通りから500」のように、変えた寸法をそのまま書く
打設後に、逃げを変える・ずらす変えた寸法で出し直す新しい寸法と矢印を書き直す

どの寸法にしても、大事なのは書き込みで寸法を残すことです。1mの通りと500の通りが混ざっていても、墨の脇に寸法が書いてあれば、あとから見た人が迷いません。

逃げ墨に書くこと:「何通りから何m」と本墨の向きの矢印

逃げ墨には、「X1通りから1m」のように、どの通りから何m逃げたかを書きます。そして本来の通り芯がどちら側にあるかを示す矢印を、本墨の方向へ引っ張って書きます。寸法だけだと、通り芯が線の右にあるのか左にあるのか、あとから見た人には分かりません。

逃げ墨は、打った本人より、あとから使う人のための線です。寸法と矢印の2つがそろって、はじめて誰が見ても本墨に戻せます。

通り芯の逃げは各通りに、基準点は離れた所に3つ

通り芯の逃げは、各通りごとに取ったほうがいいです。逃げ杭はなくなりやすいので、多めに取っておくほうが間違いありません。1本なくなっても、ほかの杭から戻せるようにしておくためです。

基準点は、重機で潰されても復旧できるように、近くではなく離れた所に3つくらい取って、逃げを作っておきます。そうしておけば、残った基準点からトランシットで90度振るなどして復元できます。公共建築工事標準仕様書(令和7年版)2.2.3(1)にも、遣方を設けたら工事に支障のない場所に逃げ心を設けることが書かれています。ベンチマークも、移動しないように設置して周囲を養生することになっています(同 2.2.2(1))。

模式図・配置は例 重機の動線 X1X2X3Y1Y2 ■ 各通りの逃げ杭(多めに) 基準点 離れた所に3つ トランシットで90度振って復元
図2通り芯の逃げ杭と、離れた所に残す基準点(模式図・配置は例)。重機の動線から外して置く

基準を盛り替えたり、器械を据え直したりするときの勘違いは、レベル測定のミスを防ぐで書いています。

杭芯の位置を巻尺で確かめている様子。地面に赤い印と水糸
工事名
●●●工事
工種
地業・杭工事
内容
杭芯位置確認

写真1杭芯の位置を巻尺で確かめているところ。地面の印は重機に消されやすいので、逃げを離れた所にも残しておく(写真は鉄筋コンクリート造の共同住宅の現場)

打設のあとは逃げを出し直す前提で、トランシットの場所を空けておく

コンクリートの打設が終わって柱の墨を出していく段階では、逃げ墨を変えたり、ずらしたり、出し直したりが必ず要ります。最初に打った逃げ墨が、そのまま最後まで使えるとは考えないほうがいいです。だから資材を置く場所を決めるときも、「ここは将来トランシットを振っていく所だから」と考えて決めます。

Konyの現場メモ

僕はトランシットを据える場所をあまり考えていなくて、残土の山を作らせてしまい、トランシットが据えられなくなったことがあります。逃げの取り方は、この失敗と、先輩がどう出しているかを見て身につけました。

器械を据える前の段取りは、オートレベルとトータルステーションの据え方にまとめています。

消えた・寸法違いを防ぐ:墨汁はしっかり、任せた図面は打つ前に見る

土間の上に打つ墨は、薄い墨だとすぐ消えて見にくく、間違いのもとになります。だから僕は、墨汁をしっかり入れて打ちます。

薄い墨は、すぐ消えて見えなくなるぞ。墨汁はしっかり入れとけ。テツさん(職長)

もう一つは、後輩に墨出しを任せるときです。僕は後輩に墨出しの計画と図面を任せて、図面チェックをしないまま墨を出させたら、その図面に寸法の違う所があったことがあります。1つ1つの差は小さくても、並べる数が多いと積み上がって大きな差になります。任せた図面も、墨を打つ前に一度見てあげればよかったと思っています。

構造に関わるところ

逃げ墨から出した柱や型枠の位置が図面と合わないときは、構造に関わることがあります。現場監督の判断で済ませず、監理者に報告して、必ず構造設計者・監理者の指示を仰いでください。

次の墨出しでは、逃げ墨に「何通りから何m」と本墨の向きの矢印を必ず書き、基準点の逃げを重機の通らない離れた所に3つ残しておいてください。そうしておけば、逃げ墨が消えても基準点が潰されても、本墨に戻れます。

参考にした基準・資料

  1. 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版2章 仮設工事 2.2.2 ベンチマーク(1)、2.2.3 遣方(1)(工事に支障のない場所に逃げ心を設ける)

逃げの寸法(1m・500)は僕の現場でのやり方で、基準の数値ではありません。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準を確認してください。

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