最近の現場課題:外壁工事と雨のリスク
ゲリラ豪雨が増え、外壁工事の工程管理が難しくなっています。シーリングの白化や剥離、塗膜のかぶり水、モルタルのひび割れ、ALC目地からの浸水など、雨天起因の不具合は補修コストが高いのが現実。とはいえ止め続けると工期が崩れる。そこで、現場監督が明日から使える外壁工事 雨天 対策を、実務の視点でまとめます。
本論:雨天時の施工管理フロー
工程管理と気象条件の基準設定
まずは作業可否の基準を明文化します。私の基準例は次のとおり。降水量1mm/h以上予報でシーリングと塗装は中止。風速7m/s以上で高所の養生展張を中止。4時間以上の乾燥ウィンドウが確保できない日は下地処理中心に段取り替え。前日17時と当日6時に気象アプリとナウキャストを確認し、昼に再判定。工程表には週あたり1日のウェザーバッファを設定し、クリティカルパスにかからない順序でALCパネル建込みと目地打設を分離します。これで工程管理と安全管理の両立がしやすくなります。
下地含水率とシーリングの施工条件
シーリングは下地の乾燥が命。含水率の目安は、木部15%以下、ALCやモルタルは8〜10%以下を基準化。ピン式やCM法相当の含水率計で実測し、記録を写真台帳に残します。プライマーはメーカー仕様書の塗布量とオープンタイムを厳守。目地は10〜15mm幅、深さは8〜10mmでバックアップ材を正しく設置し、二面接着を確保。テープ幅は目地両側各10〜15mmを目安に。雨がかかる可能性がある日は、プライマー塗布後ただちに打設まで進めるか、見送る判断が妥当。JISやJASS、メーカー基準に整合した現場基準書を作り、可否の判断を人ではなく条件で回すのがコツです。
雨養生と仮設の工夫(足場・シート)
足場のメッシュシートだけでは吹き込みに弱い。外周に防炎シートを二重にして隙間をずらす、コーナー部はL型の養生フレームで風の巻き込みを抑える、開口部はチャック付開閉部で出入りを最小化。局所的に作業テントを立てるのも有効です。例えば幅12m×奥行2m×高さ2.7mの可搬テントをスパン単位で移動させ、上部は勾配を付けて水だまりを防止。床面は養生シートの端部を立ち上げて排水経路を確保。湿度が高い日は除湿機と送風機で局所乾燥を作り、結露と白化を防ぎます。
材料と品質管理(塗装・モルタル)
塗装は気温5℃以上、相対湿度85%未満、下地が乾燥していることが基本。再塗装間隔は製品ごとに異なるため、可使時間や指触乾燥の確認を現場試験片で行います。モルタルは水セメント比を守り、雨予報の日は厚付けを避ける。表面水が引く前の降雨は表面脆弱層の原因になるため、雨養生を優先。ALCは切断端部に浸透性シーラーを入れて吸水を抑え、目地シーリングの端部剥離を予防します。
事例・数字で見る雨天対策の効果
12階建て集合住宅、外壁面積2,400m²、ALC目地延長1,200mの現場。梅雨時期で降雨日10日想定。通常の足場シートのみだと、シーリング2人工で1日200m施工が雨天で半減し、6日遅延の見込み。ここで可搬テント24m²を導入(レンタルと人件込みで4.5万円/日)、除湿機50L/日を2台3,000円/台日。結果、降雨日でも平均160m/日を確保。遅延を2日に圧縮でき、人件費は2人工×2日×2.0万円=8万円を削減。テントと機材費4.5万円×4日+除湿機1.2万円=19.2万円に対し、工程短縮で足場延長2日分を回避(足場2,400m²×8円/m²日×2日=3.84万円)し、補修リスク減による是正費の想定削減5万円を加味すると、差引で実質コストはほぼ拮抗しつつ、引渡し遅延リスクを低減できました。数値が示す通り、雨養生は採算だけでなく品質と信頼を守る投資です。
手順・チェックリスト(外壁工事 雨天 対策)
- 週間工程にウェザーバッファ1日を設定し、クリティカルパスを回避
- 前日17時、当日6時、正午の三段階で気象確認と作業判定
- 降水量1mm/h以上予報でシーリングと塗装は中止、4時間乾燥窓がなければ下地作業へ段取り替え
- 含水率の記録化(木部15%以下、ALCやモルタル8〜10%以下目安)と写真台帳管理
- プライマーのオープンタイム厳守、目地形状は幅10〜15mm×深さ8〜10mm、二面接着の徹底
- 足場は防炎シート二重、コーナー部に風防、開口部は最小開閉
- 可搬テントと除湿送風で局所乾燥を作る、床排水経路を確保
- 塗装は気温5℃以上・湿度85%未満、再塗装間隔を試験片で確認
- 雨予報日は厚付け左官を避け、養生優先で品質確保
- 是正コストと工期のトレードオフを見える化し、所長と日次合意
最新トピック:気象API活用で工程管理をDX
1kmメッシュのナウキャストと1時間ごとの降水確率をAPIで取得し、外壁区画ごとに作業可否を可視化する事例が増えています。現場端末で色分け表示し、午前は北面シーリング、午後は東面塗装のように柔軟に組み替える。雨雲接近アラートをトリガに片付け開始の閾値を自動通知すれば、かぶり水のリスクを大幅に下げられます。
まとめ:明日から使えるTips
- 作業可否を人の勘ではなく数値基準で運用
- ウェザーバッファと段取り替えメニューをあらかじめ用意
- 含水率を測って記録、プライマーと養生時間を守る
- 局所テントと除湿送風で作業可能域を広げる
- 雨天対策のコストは足場延長や是正費とセットで評価
外壁工事の雨天 対策は、工程管理と品質管理の両輪で回すのがポイント。現場監督が意思決定の軸を数値で持てば、雨の日でも現場は前に進みます。
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