導入|「型枠 数量拾い」でムダ見積りを止める
最近の現場で増えているのが、型枠工事の過剰見込みや不足手配によるコスト・工期ロスです。型枠面積の計算が曖昧、開口差引のルールが統一されていない、梁底とスラブ底の二重計上…よくある落とし穴です。本稿では、現場監督・施工管理技士向けに「型枠 数量拾い 方法」を、片面基準でブレない拾い方に絞って解説します。歩掛・材料・工期の目安も入れ、即実務で使えるようにしました。
本論|型枠面積の計算ルール(片面基準)
1)壁の型枠面積(片面)
基本式:周長(m)× 階高(m) − 開口面積(㎡)= 壁型枠面積(片面)。
・「片面」で集計し、見積り段階で必要なら×2で両面換算。
・打継ぎ水平・垂直ともに小口は原則含める(社内基準に合わせて係数設定)。
・開口は有効寸法で差引。袖壁・垂れ壁は別途(見落とし注意)。
2)柱の型枠面積
基本式:周長(m)× 高さ(m)。
・柱は四周が面材となるため、片面/両面の区別は不要(周長で一括)。
・柱頭・柱脚の段差や見切りは、見積条件により0.5〜1.0%を上乗せ。
3)梁の型枠面積(側・底)
・梁側:梁せい(m)×2 × 梁延長(m)。
・梁底:梁幅(m)× 梁延長(m)。
・スラブ底と重複しないよう、梁底を先に確定し、その分をスラブ面積から控除するのがコツ。
4)スラブの型枠面積(底)
基本式:スラブ面積(㎡) − 梁底面積(㎡) − ピット等欠損(㎡)。
・ドロップ、段差、勾配は拾い表で別行に分け、根太・大引のピッチ設計に反映。
5)開口・欠損の差引ルール
・建具開口は1,000×2,100など仕上げ寸法ではなく型枠有効寸法で差引。
・設備スリーブはφ150以上を差引対象とし、群集部は余盛りと相殺(社内標準化)。
・コア抜き予定は差引せず注記を残す(施工手順の影響大)。
6)小口・端部の取り扱い
・出隅・入隅は面積に含むが、端部加工・面木・目地棒は手間係数で調整(+1〜3%)。
・R壁や曲面は展開長で近似。R小口は換算係数(1.02〜1.05)を適用。
7)転用回数と材料計画
・合板(3×6=1.65㎡/枚)の転用回数:塗装合板で5〜8回、ラーチで3〜5回が目安。
・必要枚数=(面材総面積 ÷ 転用回数) ÷ 1.65。
・セパレーター本数の概算:壁面積(片面)×4.0〜5.0 本/㎡。
事例・数字で理解する|1フロアの概算拾い
前提:RC造、階高3.5m、1フロア床面積400㎡、コア壁周長48m、柱600×600×16本、主梁L=60m(幅300mm・せい800mm)、小梁L=80m(幅250mm・せい600mm)、壁開口は900×2,100が12枚+600×600が6枚。
1)壁(片面)
周長48m × 3.5m = 168.0㎡
開口差引:1.89㎡×12=22.68㎡、0.36㎡×6=2.16㎡、計24.84㎡
壁型枠面積=168.0 − 24.84 = 143.16㎡(片面)
2)柱
周長2.4m × 高さ3.5m=8.4㎡/本 ×16本=134.4㎡
3)梁
主梁側:0.8×2×60=96.0㎡、主梁底:0.3×60=18.0㎡
小梁側:0.6×2×80=96.0㎡、小梁底:0.25×80=20.0㎡
梁計=230.0㎡
4)スラブ底
400 −(主梁底18.0+小梁底20.0)=362.0㎡
合計(片面ベース):壁143.2+柱134.4+梁230.0+スラブ362.0=約869.6㎡
労務歩掛(参考):0.30〜0.35人工/㎡ → 869.6×0.33≒287人工。
人工単価25,000円とすると労務費≒7,175,000円/階。
合板面材必要枚数(転用6回・2,200円/枚):870÷6÷1.65≒88枚、材料費≒193,600円(面材のみ、桟木・角材・金物別)。
セパ本数(壁):143.2×4.5≒644本、@120円 → 約77,000円。
工期感覚:1フロア組立〜解体で7〜10日サイクル(スパン・支保工条件で変動)。
チェックリスト|型枠 数量拾い 方法のコツ
- 図面整合:意匠・構造・建具表・設備開口一覧の差異を先に潰す
- 基準統一:片面基準で拾い、両面は最後に係数化。社内ルールを冒頭に明記
- 開口差引:有効寸法で差引。コア抜き予定は差引せず注記
- 重複排除:梁底を先に確定→スラブ底から必ず控除
- 段差と勾配:別行で拾い、支保工ピッチ(根太@300〜450、大引@600〜900)に連動
- 端部手間:出隅・入隅・面木・目地は+1〜3%で手間補正
- 転用回数:面材ごとに差を付ける(梁側は汚れ・欠けが早い)
- セパピッチ:壁@450×450を標準に、厚200mm以上は支保条件で調整
- 脱型時期:柱・壁は早期脱型可、梁・スラブはスパンと強度発現で慎重に
- 拾い表:壁・柱・梁側・梁底・スラブ・開口・欠損を分シートで管理
実務Tip|精度とスピードを両立させる
Excel雛形でブレを消す
・「部位」「通り」「寸法(mm)」「係数」「片面/両面」「差引」「備考」の列を固定。
・床別にタブを分け、合計は自動集計。単価・歩掛セルを変数化して即見積り連動。
図面→数量の直結(BIM/CAD活用)
BIMモデル(Revit等)の壁・梁・スラブ数量をIFCで抽出し、Excelにリンク。開口タグを属性で拾い、差引の漏れをなくす。現場での改修は、モデル差分だけを再集計するフローにすると早い。
最新トレンドの押さえどころ
合板や金物の価格は高止まり傾向。直近の労務単価も上昇基調です。概算から本見積りに移るときは、合板単価・人工単価・転用回数の3点を最新相場に差し替えるだけで、過小見積りリスクを大幅低減できます。
まとめ|明日から使える型枠拾いの5箇条
- 必ず「片面基準」で統一し、両面は最後に係数化
- 梁底→スラブ底の順で拾い、重複ゼロにする
- 開口は有効寸法で差引、コア抜きは注記対応
- 端部・R・段差は%係数で見える化
- 歩掛・単価・転用回数は変数化し、相場更新を月次で
この手順を徹底すれば、型枠 面積 計算のブレが消え、手配・見積り・工程の精度が一段上がります。まずは自社の拾い表を片面基準で再設計し、1フロアの試算から回してみてください。
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