【2026年10月】過労死等防止対策白書 建設業の現場監督と相談先

2026年10月9日に公表された「令和8年版 過労死等防止対策白書」に、建設業で働く人へのアンケートの結果が載りました。技術職(現場監督)の46.3%が、K6という質問票で「うつ・不安障害の疑い」に当たる点数でした(診断ではなく、回答した現場監督は119人です)。11月は「過労死等防止啓発月間」で、11月7日(土)には無料の特別電話相談があります。1〜5年目の現場監督と、後輩を持つ先輩監督・職長に向けて、数字の読み方と相談先を整理します。

竣工まで2か月の現場事務所。夕方の片付けをしながら、ルーがスマホのニュースを見ています。

ルー

「現場監督の半分近くがうつ」っていう見出しを見ました。本当なんですか?

Kony

白書の数字は46.3%。ただ、それは質問票の点数で「うつ・不安障害の疑い」に当たった人の割合で、診断の数じゃないんだ。

テツさん

数字はともかく、言い方ひとつで現場の空気は変わるもんだ。

ミサキさん

11月7日に無料の電話相談があるみたい。番号を掲示板に貼っておこうか。

Kony

いいね、助かる。数字の読み方と相談先を、順番に整理しておこう。

この記事で分かること

  • 過労死等防止対策白書(10月9日公表)で、建設業について何が報告されたか
  • 「現場監督の46.3%」をどう読めばいいか(K6・回答者数・調査の回数)
  • 11月の過労死等防止啓発月間の電話相談の日時と番号

過労死等防止対策白書で何が発表されたか(10月9日公表)

厚生労働省は2026年10月9日(金)、「令和8年版 過労死等防止対策白書」を公表しました。同じ日に閣議決定された、過労死等防止対策推進法にもとづく年次報告で、今回が11回目です。正式な名前は「令和7年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」です。

白書では、過労死等が多いとされる業種を「重点業種等」として調べています。建設業はそのひとつで、ほかに自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、メディア業界、芸術・芸能分野が挙げられています。今回は、建設業・自動車運転従事者・IT産業の労働者アンケートの結果などが報告されました。

先に一つだけ押さえておきます。白書は調査と施策の報告で、新しい義務やルールが決まったものではありません。現場ですぐ変わるのは、後で書く11月の重点監督と相談窓口くらいです。

建設業アンケートの数字:現場監督のメンタルとパワハラの経験

アンケートは、労働安全衛生総合研究所の「令和7年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究」です。建設業の回答者は1,400人で、内訳は事務職300人、技術職(現場監督以外)81人、技術職(現場監督)119人、技能職900人でした。概要版には調査の実施月は書かれていないので、ここでは「令和7年度の調査」とだけ書いておきます。

K6という質問票で、うつ・不安の状態を4つの段階に分けています。「重度のうつ・不安障害の疑い」と「うつ・不安障害の疑い」を合わせた割合は、建設業全体で31.9%、技術職(現場監督)で46.3%でした。現場監督は「重度の疑い」が16.0%、「疑い」が30.3%で、ほかの職種より高くなっています。

重度のうつ・不安障害の疑いうつ・不安障害の疑いうつ傾向・不安ありなし疑い計全体n=1,40011.420.520.347.831.9%事務職n=30011.019.723.046.330.7%技術職(現場監督以外)n=8111.119.819.849.430.9%技術職(現場監督)n=11916.030.318.535.346.3%技能職n=90011.019.619.749.830.6%単位:%。疑い計=重度の疑い+疑い。K6の判定で、診断ではありません
図1建設業アンケートのK6(うつ・不安)の結果(職種別)。濃い色の棒が技術職(現場監督)。出典:厚生労働省「令和8年版 過労死等防止対策白書 概要版」p.9

ハラスメントを経験した割合も聞いています。パワハラは建設業全体で19.2%、技術職(現場監督)で22.7%と、職種の中でいちばん高い数字でした。建設業・自動車運転・ITのどれでも、経験した割合はパワハラ、カスハラ、セクハラの順に高くなっています。

パワハラカスハラセクハラ全体n=1,40019.210.66.9事務職n=30017.010.09.7技術職(現場監督以外)n=8114.87.411.1技術職(現場監督)n=11922.710.95.0技能職n=90019.911.15.90%10%20%
図2建設業アンケートでハラスメントを「経験した」割合(職種別、単位%)。濃い色が技術職(現場監督)。出典:厚生労働省「令和8年版 過労死等防止対策白書 概要版」p.8

図2を見ると、セクハラは技術職(現場監督以外)が11.1%、事務職が9.7%で、現場監督より高くなっています。数字は職種ごとに違う形で出ているので、「どの職種が悪い」という話として読むものではありません。どこで何が起きやすいかを知るための材料です。

数字の読み方:K6は診断ではない・回答者は119人・調査は1回分

K6は、米国のKesslerらが、うつ病や不安障害などをスクリーニング(ふるい分け)するために作った質問票です。6つの質問に0〜4点で答え、合計点が高いほど精神的な問題が重い可能性がある、という見方をします。46.3%は「疑い」に当たる点数だった人の割合で、医師が診断した人の割合ではありません。「現場監督の半分が病気」という読み方は、資料のどこにも書かれていません。

「疑い」と「診断」は別物なんですね。ルー(新人監督)

もう一つは回答者の数です。技術職(現場監督)の回答者は119人で、1人の回答で割合が約0.8ポイント動きます(1÷119で計算)。技能職900人や全体1,400人と比べると少ないので、小さな差まで細かく比べるのには向きません。

さらに、この数字は令和7年度の1回分の調査です。去年より増えたのか減ったのか、建設業の監督全体が同じなのかは、この結果だけでは分かりません。それでも、ほかの職種より高い数字が出たことは確かなので、「自分たちの職種の話」として相談先を知っておく理由にはなります。

背景:建設業の労災の傾向と勤務間インターバル

白書の概要版では、建設業の労災事案の傾向も示されています。脳・心臓疾患の事案は一度減ったあと直近で再び増えており、精神障害の事案は大きく増えています。全業種(民間)では、令和7年度の精神障害の労災支給決定は1,082件で、前の年度より26件増えました。

働く時間の面では、建設業の年間総実労働時間は調査産業計を上回っています。終業から次の始業までに一定の休息時間をとる「勤務間インターバル制度」について、建設業で「導入を予定又は検討している」企業は20.2%(令和7年)でした。導入していない理由で「制度を知らなかった」は、建設業で24.6%でした。

竣工前のように仕事が重なる時期は、どうしても帰りが遅くなりがちです。前もって段取りを組んでおくと、終わりの見えない日を少し減らせます。竣工前の段取りは竣工前1か月の段取りにまとめています。

なお、従業員50人未満の事業場へのストレスチェックの義務化は、改正労働安全衛生法で決まりました。ただし施行日は、公布後に政令で定めることになっていて、2026年10月18日時点では確定していません(未確定)。

11月の「過労死等防止啓発月間」で何があるか

厚生労働省は10月8日、11月を「過労死等防止啓発月間」として取り組みを行うと発表しました。長時間労働が行われていると考えられる事業場への重点的な監督指導(過重労働解消キャンペーン)、無料の特別電話相談、シンポジウムやセミナーがあります。業種の限定はなく、建設業だけの特別な取り組みとしては書かれていません。

取り組み日時・期間内容
過重労働解消相談ダイヤル11月7日(土)9:00〜17:000120-794-713(フリーダイヤル)。労働基準監督官が相談に対応
労働条件相談ほっとライン11月7日(土)9:00〜21:000120-811-610(フリーダイヤル)。ほっとラインの相談員が対応
重点監督(過重労働解消キャンペーン)11月長時間労働が行われていると考えられる事業場への重点的な監督指導
過労死等防止対策推進シンポジウム各会場の日程は発表ページで確認47都道府県48会場。過労死遺族の体験談、メンタルヘルスの専門家などの講演。無料でどなたでも参加可
過重労働解消のためのセミナー10月〜1月会場開催またはオンライン

表1 11月の過労死等防止啓発月間の主な取り組み。出典:厚生労働省「11月は『過労死等防止啓発月間』です」(2026年10月8日発表)

特別相談は11月7日(土)の1日だけです。相談の受け方の細かい案内は厚生労働省の発表ページで確かめ、番号は今のうちに控えておくと安心です。

1〜5年目の現場監督が今日からできること(メンタル・パワハラの相談先)

ここに書くのは、医療の助言ではなく「どこに相談できるか」です。つらいと感じたら、一人で抱えずに相談してください。相談するのに「これくらいで」と遠慮する必要はありません。

まず、相談先を三つ控えておきます。一つ目は表1の二つの電話相談で、11月7日(土)の特別相談のほか、労働条件相談ほっとラインはふだんも平日の夜間と土日祝日に受け付けています。二つ目は、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」で、白書の概要版では、メンタルヘルスの不調や過重労働による健康障害について電話・SNS・メールで相談できる窓口として紹介されています。三つ目は社内の窓口で、産業医、衛生管理者、ハラスメントの相談窓口がどこにあるかを、就業規則や社内の掲示で確かめておきます。

後輩を持つ先輩監督や職長は、相談先の番号を事務所に貼っておくだけでも、声をかけるきっかけになります。パワハラの数字は「誰が悪いか」を決めるためのものではないので、まずは相談できる道を見える所に置いておく、くらいの受け止め方で十分です。入社1年目の過ごし方は施工管理1年目の仕事にもまとめています。

それでも職場がしんどいとき:会社を変えるという選択肢

現場監督は、施主と職人さんのあいだで板挟みになることが多い仕事です。所長にも癖の強い人が少なくありません。それでも、同じ施工管理でも会社が変われば、現場の雰囲気ががらりと変わることがあります。

今の職場で体も心も壊すまで踏ん張るより、「仕事は続けたいけれど、この環境はつらい」なら、職場を変えるのも立派な段取りの一つです。施工管理という仕事そのものまで嫌いにならないでほしい、というのが先輩としての本音です。

ただし、順番は相談が先です。つらい状態が続いているなら、まず上の相談先へ。転職を考えるのは、少し落ち着いてからで十分です。

建設業界に絞ったエージェントなら、現場監督の働き方を前提に話を進めやすいです。面談を受けたらすぐ転職しなければいけない、というものでもありません。今の会社と比べる物差しを1本持っておく、くらいの使い方でいいと思います。

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まとめ

令和8年版 過労死等防止対策白書の建設業アンケートでは、技術職(現場監督)の46.3%がK6で「うつ・不安障害の疑い」に当たり、パワハラを経験した割合も22.7%と職種の中で最も高い結果でした。ただしK6は診断ではなく、回答した現場監督は119人、調査は令和7年度の1回分です。数字に驚くより、11月7日(土)の特別相談やこころの耳、社内の窓口といった相談先を、今のうちに確かめておくことが大事です。

この記事は2026年10月18日時点の情報です。

参考にした資料

  1. 厚生労働省「『令和8年版 過労死等防止対策白書』を公表します」2026年10月9日発表
  2. 厚生労働省「令和8年版 過労死等防止対策白書 概要版」p.2〜5(全体の状況)、p.6(建設業の労災事案の傾向)、p.8(ハラスメント)、p.9(K6)
  3. 厚生労働省「令和8年版 過労死等防止対策白書」第1章p.4(年間総実労働時間)、p.17 第1-1-1-18図・p.19 第1-1-1-20図(勤務間インターバル制度)
  4. 厚生労働省「11月は『過労死等防止啓発月間』です」2026年10月8日発表(特別相談・重点監督・シンポジウム・セミナー)
  5. 京都労働局「労働安全衛生法・作業環境測定法 等改正の主なポイントについて」令和8年3月(ストレスチェックの施行時期)

相談窓口の受付時間や内容は変わることがあります。利用する前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

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