タイルの浮きの補修方法|打診で範囲を残し、張替えか注入か決める

左官・タイル工事:タイルの浮きの補修方法 打診で範囲を残して工法を決める 17 左官・タイル工事

17 左官・タイル工事|トラブル対処

  1. 段取り:タイル割付図の書き方
  2. 施工中:—
  3. トラブル対処:この記事

改修工事の外壁で、タイルの浮きを打診棒で調べながら足場を回っているところ。

ルー

テツさん、ここだけ音が違う所があります。

テツさん

そこ浮いとるな。範囲出して印つけよか。

ルー

印のところだけ、すぐ張り替えちゃえば早くないですか?

テツさん

同じタイルが手に入るんか、先にそれを聞いとけ。

Kony

全部叩いて図に残してから、直し方を監理者さんと決めよう。

タイルの浮きの補修方法は、まず打診で浮きの範囲を調べて図と写真に残し、範囲と程度に応じて張り替えか注入などの工法を、監理者・設計者と決めます。張り替えるなら、同じタイルが手に入るかを先に確かめます。

この記事で分かること

  • 浮きの見つけ方と、調べたあとに残すもの
  • 公共建築改修工事標準仕様書に載っている補修の工法と、その使い分け
  • 張り替えで困る色違いと、誰と工法を決めるか

タイルの浮きとは:放っておくと剥落につながる

タイルの浮きは、タイルや下地のモルタルが、その下の層から離れてしまっている状態です。叩いたときの音の違いで調べます。公共建築改修工事標準仕様書(以下、改修標仕)令和7年版でも、外壁改修の基本要求品質として「タイル及び左官工事で塗り付けた材料には、有害な浮きがないこと」を挙げています(4.1.2(3))。

浮きがどこで起きているかも大事です。改修標仕は、浮いた所を撤去するときの切り込み深さを、下地モルタルと構造体コンクリートの界面の浮きか、それ以外かで分けています(4.4.4(2))。補修範囲は「はく落のおそれがある浮き部」について確かめる、とも書かれています(4.3.4(1))。浮きは、放っておけば剥落につながるものとして扱います。

安全に関わるところ

浮きが大きい所、通路や出入口の上にある所は、剥落の危険度や、立入禁止・防護の要否の判断が必要です。現場監督の判断で済ませず、監理者に報告して、必ず構造設計者・監理者の指示を仰いでください。

浮きの見つけ方:打診で叩いて範囲を出す

浮きは打診で見つけます。テストハンマーや打診棒でタイルを叩き、音が違う所を探します。僕は新築では、施工後に決められた方法でタイルを叩いて、浮いていないかを調べました。改修工事では、外壁の全面のタイルを叩いています。

新築のタイル工事については、公共建築工事標準仕様書(以下、標仕)令和7年版の11.1.7(2)に、屋外のタイル張りなどは「モルタル及び接着剤の硬化後、全面にわたり打診を行う」とあります。浮きやひび割れが見つかったら、監督職員に報告して張り直します。あわせて引張接着試験も決められていて、試験体の数は100㎡ごと及びその端数につき1個以上、かつ全体で3個以上です(11.1.7(3))。

改修工事では、改修標仕4.3.4(1)(タイル張りは4.4.4(1)でこれによる)に、テストハンマー等ではく落のおそれがある浮き部を確かめ、アンカーピンニング等の位置をチョーク等で明示する、とあります。叩いて終わりではなく、壁に印を付けるところまでが打診です。

調べたら残すこと:面積と位置を図と写真に

僕は外壁タイルの浮きを、面積ごとに打診して記録を残しています。理由は、補修の工法や数量が面積で決まるからです。たとえば改修標仕のタイル部分張替え工法は、1か所当たり0.25㎡程度以下の場合に使う工法です(4.4.7(1))。アンカーピンの本数も、特記がなければ1㎡当たりの本数で決まっています(4.3.11(1))。

残すのは、立面図に浮きの範囲と番号と面積を書き込んだ調査図と、印を付けた壁の写真です。図1は、その調査図のイメージです。数字は例ですが、面積の出し方はこのとおりです。

外壁の立面(打診調査図の例) 6,000 窓 ① 0.4×0.5 =0.20㎡ ② 1.0×0.6 =0.60㎡ ③ 0.15×1.2=0.18㎡ 幅の狭い帯状の浮き X1 X2 浮き(打診で音が違った範囲) 寸法の単位:mm・m
図1打診の結果を立面に残す調査図のイメージ(模式図・寸法は例)。番号ごとに縦×横と面積を書いておくと、工法と数量の相談がしやすくなります

印だけで図がないと、あとでどこを直したか分からんぞ。テツさん(職長)

タイルの浮きの補修工法:張り替えと注入の種類

改修標仕令和7年版では、タイル張り仕上げ外壁の浮き部改修工法として次の9つを挙げ、「種類は特記による」としています(4.1.4(3)(ウ))。大きく分けると、タイルを張り替える工法と、タイルを残したままピンと樹脂で留める注入の工法です。

  • アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法/同 全面エポキシ樹脂注入工法/同 全面ポリマーセメントスラリー注入工法
  • 注入口付アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法/同 全面エポキシ樹脂注入工法/同 全面ポリマーセメントスラリー注入工法
  • 注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂注入タイル固定工法
  • タイル部分張替え工法/タイル張替え工法

張り替えの2つは、下地モルタルを残すかどうかで分かれます。タイル部分張替え工法は、既存の下地モルタル等を撤去せず、1か所当たりの張替え面積が0.25㎡程度以下の場合に適用し、0.25㎡を超える場合は特記によります(4.4.7(1))。タイル張替え工法は、下地モルタルを撤去する場合に適用します(4.4.8(1))。

タイル張りを撤去しない場合は、注入の工法になります(4.4.4(3)、4.4.9〜4.4.15)。アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法なら、ピンの本数は特記がなければ一般部分16本/㎡、見上げ面やひさしのはななどの指定部分25本/㎡、穿孔は構造体コンクリート中に30mm程度、注入量は特記がなければ1か所当たり25mLです(4.3.11)。タイル張りでは、穿孔位置がタイル陶片にかかるときは近くの目地に移します(4.4.9)。

タイル張り外壁の断面(浮きとアンカーピンのイメージ) 屋外側 → 躯体コンクリート タイル張付けモルタル下地モルタル浮き(躯体と下地モルタルの界面の例) 目地から穿孔してアンカーピンエポキシ樹脂で浮いた層を留める 30程度
図2浮きの位置と、アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法のイメージ(模式図・寸法は例)。穿孔は構造体コンクリート中に30mm程度、穿孔位置がタイルにかかるときは目地へ移す(改修標仕 令和7年版 4.3.11(2)、4.4.9)

注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂注入タイル固定工法は、特殊ドリルでタイルの中央に穿孔し、注入口付アンカーピンを打ち込んで樹脂を注入し、タイルを固定する工法です。適用できるタイルの大きさは小口平以上が目安です(4.4.15)。正直に書くと、僕は注入の補修はまだやったことがありません。僕がやったのは、改修工事で全面のタイルを叩き、浮きがあった部分だけ新しいタイルで張り替える補修です。

直し方の方向改修標仕の工法標仕に書かれた適用・決まり先に確かめること
タイルだけ張り替える(下地モルタルは残す)タイル部分張替え工法(4.4.7)1か所当たり0.25㎡程度以下。超えるときは特記による同じ品番のタイルと予備があるか
下地モルタルごと撤去して張り替えるタイル張替え工法(4.4.8)下地モルタルを撤去する場合に適用。切り込み深さは浮きの界面で決まる(4.4.4(2))浮きがどの界面か、タイルと予備があるか
タイルを残して、ピンと樹脂で留めるアンカーピンニング系・注入口付アンカーピンニング系の6工法(4.4.9〜4.4.14)ピンは特記がなければ一般部分16本/㎡、指定部分25本/㎡(4.3.11)。穿孔がタイルにかかるときは目地へ移すどの工法が特記されているか、全面か部分か
タイルを1枚ずつ留める注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂注入タイル固定工法(4.4.15)タイル中央に穿孔。小口平以上が目安。孔は化粧キャップ又は樹脂パテでふさぐタイルの大きさが小口平以上か

表の「先に確かめること」は、張り替えでも注入でも、話を始める前に分かっていると決めやすい項目です。どの工法にするかは、表から選ぶのではなく、特記仕様書と監理者・設計者の判断で決まります。

張り替えで困る色違い:品番と予備を先に確かめる

張り替えで一番困るのは色です。タイルは品番がよく変わるので、張り替えでは一番近いものを探しても色味が違います。そして、壁の一部だけ色が違うと、全然違って見えます。僕も張り替えで、色が合わなくて困りました。

風除室の壁にタイルを張り終えたところ
工事名
●●●工事
工種
タイル工事
内容
風除室 壁タイル張り

写真1張り終えた壁タイル。あとで一部だけ張り替えると、一番近い品番でも色味の違いが目立つ(写真は鉄骨造の店舗の現場の内装)

予備の数も先に確かめます。以前の現場で、1枚がとても高価な輸入タイルを壁に張ったことがあります。材料屋さんも多めに仕入れておけず、予備がほとんどありませんでした。張り間違えたらアウトで、本当に大変でした。

完成後に色が違うと言われたときの直し方は完成後に「色がイメージと違う」と言われたらに書いています。張り替える範囲の目地割りの考え方はタイル割付図の書き方が参考になります。

誰とどう決めるか:注入か張り替えか、監理者・設計者と

改修標仕は、浮き部改修工法の種類を「特記による」としています(4.1.4(3)(ウ))。つまり工法は特記仕様書で決まります。書かれていないときや現場の浮きの状況と合わないときは、監理者・設計者と協議して決めます。ひび割れから漏水している、ひび割れの周りのタイルが浮いている、錆汁が出ている、といった場合は、改修方法を事前に監督職員と協議することにもなっています(4.4.2(1))。

監理者さんと決めるときに持っていきたいのは、図1のような調査図と写真、番号ごとの面積、既存タイルの品番と手に入るかどうかです。範囲が分かれば数量と工法の話ができ、タイルの状況が分かれば張り替えか注入かの話ができます。外壁の伸縮調整目地もあわせて打ち替えるときは、コーキング(シーリング)の選び方で目地の考え方を確かめてください。

新築で竣工前の打診に引っかかったときは、張り直しの時間が要ります。検査から逆算した段取りは竣工前1か月の段取りにまとめています。

構造・安全に関わるところ

ピンの本数・注入量の変更、浮きが広い範囲に及ぶ場合の工法の選び方は、外壁の安全に関わります。現場監督の判断で済ませず、監理者に報告して、必ず構造設計者・監理者の指示を仰いでください。

タイルの浮きは、叩いて、図に残して、品番を確かめてから決めると、話が早く進みます。浮きを見つけたら、まず全面を打診して範囲と面積を図と写真に残し、同じ品番のタイルが手に入るかを確かめてから、監理者と補修の方法を決めてください。

参考にした基準・資料

  1. 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版(2025年5月12日改定版)4章 外壁改修工事:4.1.2(3)(有害な浮きがないこと)、4.1.4(3)(タイル張り仕上げ外壁の改修工法の種類)、4.3.4(1)(補修範囲の確認)、4.3.11(ピン本数・穿孔深さ・注入量)、4.4.2(1)、4.4.4(浮き部改修共通事項)、4.4.7(タイル部分張替え工法)、4.4.8(タイル張替え工法)、4.4.9〜4.4.15
  2. 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版11章 タイル工事:11.1.7(2)(打診による確認)、11.1.7(3)(引張接着試験の試験体の数)

基準の数値は版によって変わることがあります。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準を確認してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました