16 金属工事|トラブル対処
- 段取り:準備中
- 施工中:準備中
- トラブル対処:この記事
完成した所を見てもらったら、お客さんに「思っていた色と違う」と言われました。図面どおりに作ったんですけど……。
その色、見本で承認をもらっていましたか。どの記録に残っているかで、話の進め方が変わります。
……探します。メモしました。
図面どおりでも、お客さんが納得していなければ終わりじゃない。僕が増し張りで直したときの話をしながら、順番に整理しよう。
この記事で分かること
- 「色がイメージと違う」と言われたとき、最初に確かめること
- そのまま・塗装・交換・増し張りの、直し方の比べ方
- 増し張りで目立たせない納まりと、合意の残し方・再発防止
僕の現場:完成後に「色がイメージと違う」と言われた
自動車販売店の現場で、車の撮影スペースを作ったときの話です。撮影スペースの左右は黒いフェンスで、完成したあとに、お客さんから「色がイメージと違う」と言われました。
お客さんがイメージしていたのは、黒ではなく白っぽい壁でした。色は事前に決めて、了承ももらっていました。ただ、決めたのがかなり早い段階だったので、お客さんもそのことを忘れていたんです。
記録の上では「決めたとおり」です。それでも、このままだとお客さんは思っていた色と違う壁を使い続けることになります。そこで直し方を考えて、黒いフェンスの上に白いスパンドレルを増し張りすることにしました。フェンスを撤去せずに、上から壁を作るやり方です。


まず確かめること:何が「違う」のか
「色が違う」の中身は、人によってばらばらです。色そのものなのか、明るさなのか、照明が当たったときの見え方なのか。ここを聞かずに直し方の話を始めると、直したあとにまた「違う」と言われます。
確かめることは、次の表の4つです。
| 確かめること | なぜ |
|---|---|
| 何が、どう違うと感じているか(色・明るさ・つや・見る場所) | 直す範囲と方法が、ここで決まる |
| 色を見本で承認していたか。誰が、いつ、どの見本で | 標仕でも、材料の見本を提示して色合などの承諾を受けることになっている(1.4.2(6))。記録があるかで、費用の話が変わる |
| 図面・仕上表・打合せ記録に、色の指定があるか | 「図面どおり」を説明できるかどうか |
| その場所を何に使うか | 撮影の背景、店内から見える壁など、用途によって色の重みが違う |
記録が「図面どおり」でも、お客さんが納得していなければ、話は終わりません。どちらが悪いかを決めるより先に、直すかどうか、直すならどう直すかを一緒に決めます。
直し方の選択肢:4つを比べる
色の指摘への直し方は、だいたい次の4つです。どれを選ぶかは、直す範囲、工程の余裕、費用、それに既存の物をどこまで残せるかで決まります。
| 案 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| そのまま使ってもらう(説明して納得してもらう) | 見本の承認があり、照明や見る位置で印象が変わっているだけのとき | 納得してもらえないまま進めると、引渡しのあとまで残る |
| 塗装で色を変える | 素地が塗れる材料で、範囲が小さいとき | 既存の仕上げに塗料が付くか、耐久性が落ちないか、メーカー・塗装業者に確認する |
| 撤去して交換する | 製品の色違いなど、作り直すしかないとき | 撤去・処分の手間と、交換品の納期がかかる |
| 上から増し張りする | 既存の物を残したまま、見た目だけを変えたいとき | 重さと風を受ける面が増える。下地の留め方は、既存の物の強さを設計者・メーカーに確認してから決める |
僕の現場では、フェンスの面板を張り替える案も考えました。でも構造的に難しく、金額も増し張りの方が安く仕上げられたので、増し張りにしました。既存の物に手を入れるか、上から足すかは、見た目だけでなく構造と費用で決まります。
増し張りは、フェンスや壁に「もう一枚」載せる工事です。見た目の話に見えても、既存の物に重さと風の力が足されます。どこに何で留めるかは、必ず設計者・監理者やメーカーの確認を取ってください。
増し張りの納まり:上から張ったように見せない
増し張りでいちばん気をつけたのは、「後から上に張った」ように見せないことです。納まりは図2のとおりです。
- 下地:スタッド20×40を、縦に900mm間隔で横に流しました。
- 周囲:40mmずつあけました。廻り縁と水切りを納めるためです。
- ビス:下地を留めるビスは、フェンスのリブを狙って打ち、表から目立たないようにしました。
- 材料:スパンドレルは厚さ0.5mm、幅150mm。下部には水切りを入れています。
数値は僕の当時のメモの値です。既存の物によって下地の間隔や留め方は変わるので、そのまま真似せず、自分の現場の条件で確かめてください。

手間は、下地が1人で9時から15時、スパンドレル張りが2人で9時から17時でした(材料待ちの時間を含む)。完成後の手直しは、お客さんが使い始めている場所での工事になりがちです。何日、どの時間帯に入るかを先に伝えておくと、話がこじれません。
もう一つの失敗:届いたスパンドレルが傷だらけだった
この増し張りでは、もう一つつまずきました。届いたスパンドレルの束のバンドが甘く、ほぼ全部にスレ傷が入っていたんです。100枚中80枚ほどが使えない状態でした。

このときは、すぐに製品を交換しました。撮影の背景になる壁なので、傷物を張るという選択肢はありません。標仕でも、検査で不合格になった材料は直ちに工事現場外へ搬出することになっています(1.4.4(3))。
見え掛かりの材料で傷を見つけたら、張らずに止めるのが鉄則です。1枚でも張ると、届いたときの傷なのか張るときの傷なのか、説明できなくなります。受け取ったその場で束を開けて数枚見ておく。外れたものを現場に入れてから悩まない、という考え方は、生コンが受入で外れたときに、その場でやる順番と同じです。
報告と合意:直す前に書面で決める
手直しの内容が決まったら、着手の前に、お客さんと監理者に次のことを書面で確かめます。口約束で始めると、終わったあとに「そこまでとは言っていない」が出ます。
| 決めること | 書き方の例 |
|---|---|
| 直す範囲 | 撮影スペース左右のフェンス面(図示する) |
| 直し方と色 | 既存フェンスの上にスパンドレルを増し張り。色はメーカーの色番で書き、見本を添える |
| 工程 | 作業日、作業時間、使えなくなる範囲 |
| 費用 | 誰がどれだけ持つか(見本の承認記録があるかで変わる) |
| 確認の仕方 | 完成後に、お客さんと現地で一緒に見る日 |
報告と根回しの考え方は、アンカーボルトの位置ズレを直すときの報告と根回しにも書いています。トラブルの種類が違っても、「事実→基準→対応→案」の順で話すのは同じです。
再発防止:色は「決めたとき」と「作る前」の2回見せる
色の行き違いは、完成してからでは高くつきます。次の現場から、色の決め方に確認を入れます。
| 段階 | 変えること |
|---|---|
| 色を決めるとき | 小さな色見本だけで決めない。できるだけ大きな見本を、実際に付ける場所で、周りの色と並べて見てもらう |
| 見る条件 | 昼と夜、照明を点けたときで印象が変わる。撮影スペースのように照明を当てる場所は、その光で見る |
| 承認の記録 | 見本を提示して承諾を受けたことを、日付・見本・色番つきで残す(標仕 1.4.2(6)) |
| 施工の前 | 早い段階で決めた色は、発注や施工の前にもう一度見本を見せて確かめる。決めてから時間が空くほど、お客さんの記憶とずれやすい |
| 用途の確認 | 「何に使う場所か」を最初に聞く。背景になる壁、店内から見える面は、色の重みが大きい |
| 材料の受入 | 見え掛かりの材料は、受け取ったその場で束を開けて確かめる。金属製品は必要に応じてポリエチレンフィルム等で養生して搬入する(標仕 14.1.4(1)) |
「図面どおりだから大丈夫」は、作る側の思い込みになりやすい言葉です。思い込みを確かめてから進めるのは、レベル測定のミスを防ぐ確かめ方とも根っこが同じです。
完成後に「イメージと違う」と言われると、かなりこたえます。でも、何が違うのかを聞いて、直し方を一緒に決めれば、最後は納得してもらえる形にできます。次に色を決める打合せでは、見本を持って現地に立ってみてください。
参考にした基準・資料
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版1章4節 材料:1.4.2(6) 材料の見本(材質、仕上げの程度、色合、柄等の承諾)、1.4.4(3) 不合格材料の搬出
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版14章1節 金属工事 共通事項:14.1.4(1) 養生その他(ポリエチレンフィルム等で養生して搬入)
基準の数値は版によって変わることがあります。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準を確認してください。納まりの寸法は筆者の現場での一例です。
- 前の工程|15 建具工事15 建具工事の記事一覧
- 同じ考え方|11 鉄骨工事・トラブル対処アンカーボルトの位置ズレ・埋込み不足はどう直す?
- 次の工程|17 左官・タイル工事工程表から探す


コメント