06 土工事|段取り
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杭、今日で半分まで来ましたね。掘削のことは、杭が終わってから考えれば間に合いますか?
掘り終わったユンボ、穴の底からどうやって上げるんだ。そこが決まってない現場は、掘ってから止まるぞ。
……クレーンで吊る、ですか? メモしました。
そのクレーン、どこに据えるんだ。敷地の中に場所はあるのか?
掘削の段取りは、杭を打っている間にやるんだ。僕が杭工事中に書いたメモを広げて、掘る前に決めることを並べよう。
この記事で分かること
- 杭工事中に決めておく掘削の段取り(重機の出し方・レッカー・残土)
- 土工さんとの打合せに持っていく図面と議題
- 手すり・はしごを、法令の数字と現場の事情の両方から決める考え方
掘削は「杭が終わってから」では間に合わない
山留め(矢板・腹起し・切梁)がある現場では、杭工事のあとに一次掘削、切梁の架設、二次掘削と進み、杭頭の処理と捨てコンクリート(捨コン)を経て、基礎・地中梁の配筋に入ります。杭が終わった次の週には、もう土工さんの重機が入ってきます。
ところが杭工事の間は、杭屋さんの重機と車両で敷地がいっぱいです。掘削の準備は、紙の上と打合せでしか進められません。だから杭を打っている間に、掘削の段取りを決め切っておく必要があります。
数年前の冬、杭工事の最中に、僕はノートの1ページ目に「杭工事の次に考える事は?」と書きました。同じ時期のメモには「今後の事が予想できない」「何をしたらいいのか分かっていない」とも書いています。この記事は、そのとき書き出した項目を、いま読み返して整理したものです。

写真基礎の掘削状況(S造の店舗の現場)
杭工事中に書いた「次に考えること」
当時のメモを、そのまま項目にしたのが下の表です。右の列の「決める相手」は、記事にするときに足したものです。こうして並べると、掘削そのものより「掘る前と掘った後」の項目がずっと多いことが分かります。
| 区分 | メモに書いたこと | 決める相手 |
|---|---|---|
| 一次掘削 | 腹起しの天端から1,200下げる。何日で終わるか | 土工さん |
| 掘削後の重機 | 掘ったあと重機をどう出すか。1,200なら自力で上がれるか。重機のサイズを確認 | 土工さん |
| 矢板 | 矢板とのからみは大丈夫か。矢板の高さがバラバラ | 土工さん・鳶さん |
| レッカー | レッカーを据えられるか。歩道に据えるなら何tで来るか。アウトリガーを張り出す話をしていたか | 土工さん・揚重業者 |
| 腹起し・捨コン | 腹起しを取るのは捨コンをした後。捨コンは矢板際まで打つ。矢板を抜かない所はコンパネ(枚数を拾う) | 所長・土工さん |
| 二次掘削 | 切梁を架けたら掘削のじゃまになりそう。特に真ん中 | 土工さん |
| 安全 | 1.2m下がるからはしごが要るか。単管手すりは2段。通路の GL-50 の所はどうするか | 鳶さん |
| 車両 | 車両配置計画をつくる。最後の回送は歩道で | 土工さん・所長 |
Konyの現場メモ
一番不安だったのはレッカーでした。メモの最後に「とりあえずレッカーさえなんとかなれば不安なし」と書いています。敷地の中に据える場所がなければ歩道に据えることになり、そうなると道路を使う許可の段取りまで一気に増えます。
掘る前のタイムライン:いつ・何を・誰と決めるか
僕のメモには日付つきで項目が残っているので、それを時期ごとに並べ直しました。「1〜2週間前」の区切りは、よくある目安として置いたものです。現場の規模と、許可の手続きにかかる日数で前後させてください。
| 時期 | 決めること・やること | 相手 |
|---|---|---|
| 杭工事が始まったら | 一次・二次掘削の深さと日数。重機のサイズと、掘ったあとの出し方。レッカーの据え位置と規格。残土の出し方(ダンプの大きさと回し方) | 土工さん、所長 |
| 掘削の1〜2週間前(目安) | 土工さんとの打合せ(議題は次の章)。歩道や車道を使うなら道路使用許可の段取り。車両配置計画。手すり・はしごの材料拾い | 土工さん、鳶さん、所轄の警察署 |
| 重機搬入の前日 | 搬入の時刻とダンプの動線。手すり・はしごの設置。作業員の車の置き場所 | 土工さん、鳶さん |
| 二次掘削の最終日の前 | 杭頭の位置出しをいつやるか。捨コンの段取り(抜板・はしご)。安全パトロールの準備 | 所長、土工さん |
最後の行は、二次掘削の最終日を翌週に控えた週末のメモです。「杭頭の位置出しは朝からした方が良い?」と書いて、その日のうちに確かめることにしています。掘削の最終日は、次の工程(杭頭処理・捨コン)の初日でもあります。前の工程の終わりを、次の工程の段取りの締め切りとして見ておくと、現場が止まりにくくなります。
根切り底のレベルを当たるときは、基準の取り違えに気をつけてください。僕がやったミスはレベル測定で基準を盛り替えたときの読み違いに書きました。
土工さんとの打合せで話す議題
土工さんとの打合せに向けて、僕は「土工打合せ 不安な事は?」と「用意する物は?」を2ページ書いています。不安のほうは「誰が打合せに来るか」「工程は何日かかるのか」「図面は何があればいいのか」。来る人が職長なのか会社の担当なのかで、その場で決められることは変わります。
| 議題 | 確認すること | 持っていくもの |
|---|---|---|
| 掘削の範囲と深さ | 一次・二次それぞれの深さ。どこから掘り始めて、どこで終えるか | 基礎伏図、山留めの図面(僕の現場は掘削図がなかったので、基礎伏図を用意) |
| 重機 | 機種とサイズ。切梁の下で動けるか。掘り終わったあと、どこからどう出すか | 山留めの図面、敷地の配置図 |
| 最後の掘り方 | 重機が出たあとに残る土をどう出すか(メモには「レッカー、ホッパー?」) | レッカーの据え位置の案 |
| 残土の搬出 | ダンプの大きさ(何tか)、台数、ピストンの回し方、待機場所 | 車両配置計画の案 |
| 日数 | 一次・二次それぞれ何日か。天候で延びたときの考え方 | 全体工程表 |
日数は、聞くだけでなく自分でも測ると精度が上がります。杭工事の途中、僕は翌日の段取りのメモに「杭1本でどれくらい時間かかるか測る」と書いていました。1本あたりの時間が分かれば、残りの日数を自分で読めます。掘削も同じで、初日に1時間あたりのダンプの台数を数えておくと、二次掘削の日数の読みが変わります。
掘った穴から「出られない・降りられない」をなくす
掘削の段取りで抜けやすいのが、穴の出入りです。人が安全に降りられるか、重機が最後に出られるか、縁から人が落ちないか。ここは法令の数字と、現場の事情の両方で決めます。
はしご:1.2mでも用意を考えた
労働安全衛生規則526条は、高さまたは深さが1.5mを超える箇所で作業するとき、安全に昇降するための設備を設けるよう求めています。僕の現場の一次掘削は約1.2mで、この数字は超えません。それでも、メモには「1.2m下がるから、はしご?」と書いて、取引先のカタログで使えるものがないか確かめることにし、降りる位置(敷地の角)の案も書いています。二次掘削でさらに深くなるので、最初から降りる位置を決めておくと、あとで動かさずに済みます。
はしごの上は単管で組み、固定は2か所。降り口の手すりを開けるときは、開けた分の手当て(下の項)もセットで考えます。
手すり:搬入口だけは悩んだ
杭工事が終わったあと、矢板の天端に沿って単管手すりを2段で回す計画にしました。単管の建地をキャッチクランプで矢板に留め、仮囲いへの固定も合わせて鳶さんに頼んでいます。矢板の高さがバラバラだったので、手すりの高さは現地で確かめることにしています。
悩んだのは、通路で地盤が GL-50 になっている所です。メモには「手すりしてしまったら搬入できない」「手すりなしも怖い」と並べて書いています。その日は「とりあえずロープして帰る?」と書いて、どうするかは鳶さんに相談することにしました。
手すりは、労働安全衛生規則519条が高さ2m以上の作業床の端や開口部などに囲い・手すり・覆いなどを求めていて、作業の必要で臨時に外すときは、防網や墜落制止用器具の使用などの措置を求めています(同条2項)。搬入口のように「外す前提の場所」は、外せる納まりにしておき、外している間の措置まで先に決めておくのがよくあるやり方です。どこまで必要かは掘削の深さと場所で変わるので、会社の安全担当と確かめてください。
作業主任者:深さ2mと、切梁・腹起し
掘削面の高さが2m以上になる地山の掘削は、作業主任者を選ぶ作業です(労働安全衛生法施行令6条9号、労働安全衛生規則359条:地山の掘削作業主任者)。切梁・腹起しの取付けや取外しも同じく作業主任者が要る作業です(同施行令6条10号)。誰が資格を持っているかは、打合せの議題に入れておきます。
二次掘削は切梁との相性で決まる
一次掘削のあとに切梁が架かると、重機の旋回とアームの動きが一気に窮屈になります。僕のメモには「切梁したら掘削時じゃまになりそう。特に真ん中」とあります。切梁の位置は山留めの図面で決まっているので、二次掘削の順番(どこから掘って、重機をどこへ逃がすか)を、土工さんと図面の上で先に決めておきます。
構造に関わるところ
腹起しを外す時期について、僕のメモは「取るのは捨コンした後」です。捨コンは矢板際まで打ち、矢板を抜かない所にはコンパネを入れる予定だったので、その枚数も拾っています。山留めをいつ、どの順で外すかは、山留めの計画と構造の安全に関わります。必ず山留めの計画書に従い、構造設計者・監理者の指示を仰いでください。現場監督の判断だけで前倒しする話ではありません。
捨コンの打設そのものの段取り(生コンの手配、ポンプ、当日の段取り)は、コンクリート打設の段取り|2週間前から前日までに決めることと同じ考え方で進められます。
僕のやり方:「不安な事は?」と題を書いて全部出す
このやり方のメモは、杭工事の時期だけでなく何年分も残っています。紙の上に「〇〇の不安な事は?」「〇〇の段取りは?」と1つだけ題を書き、日付を入れて、思いつくことを全部出します。杭工事中のあの日は、「杭工事の次に考える事は?」から始めて、「一次掘削 不安な事は?」「腹起し 気をつける点は?」「単管手すり 詳しく」と、1つの項目が次のページの題になっていきました。
FIELD NOTE杭工事中のある日
杭工事の次に考える事は?
→ 一次掘削 不安な事は?
→ 腹起し 気をつける点は?
→ 単管手すり 詳しく
書き出すと、不安が「決めればいい項目」に変わります。「レッカーが怖い」は「据え位置と規格を決める」になり、「手すりなしも怖い」は「外せる納まりと、外す間の措置を鳶さんと決める」になります。分からない項目について、メモには「所長に聞いてみる」が何度も出てきます。正直に言うと、年末のメモには「同じ事を何日も書いている気がする」ともあります。同じ題が何日も続くときは、たいてい「誰と決めるか」が抜けています。
準備物チェックリスト(印刷して使う)
杭工事の途中で、掘削の前に一度通してください。現場によって要らないものは消して使います。
- ☐ 基礎伏図・山留めの図面(掘削図がなければ、伏図に掘削の範囲と深さを書き込む)
- ☐ 一次・二次掘削の深さと日数(土工さんと合意)
- ☐ 重機の機種・サイズと、掘り終わったあとの出し方
- ☐ レッカーの据え位置と規格(歩道や車道に据えるなら道路使用許可の段取り)
- ☐ 残土の出し方:ダンプの大きさ・台数・待機場所
- ☐ 車両配置計画図(作業員の車の置き場所も)
- ☐ 単管手すりの材料(数量)と固定方法(矢板・仮囲い)、搬入口の扱い
- ☐ はしごの位置と固定(上部の単管、固定2か所)
- ☐ 作業主任者(地山の掘削、土止め支保工)の確認
- ☐ 捨コンの段取り(抜板、矢板際のコンパネの枚数)と杭頭の位置出しの日
- ☐ 墜落制止用器具(安全帯)の置き場所
掘削は、掘っている時間より、掘る前と掘った後の段取りで決まります。杭の音を聞きながら、紙の上で一度、穴を掘って出てくるところまで歩いてみてください。そこで引っかかった項目が、あなたの現場の段取りです。
参考にした基準・資料
- 労働安全衛生規則(e-Gov 法令検索)第359条(地山の掘削作業主任者の選任)、第519条(作業床の端・開口部等の囲い等)、第526条(昇降するための設備の設置等)
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov 法令検索)第6条第9号(掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削)、第10号(土止め支保工の切りばり・腹起こしの取付け・取り外し)
- 道路交通法(e-Gov 法令検索)第77条第1項第1号(道路において工事・作業をするときの所轄警察署長の許可)
この記事は、僕が現場で聞いたこと・やってきたことを書きためたメモをもとにしています。一つの現場での例なので、思い違いもあるかもしれません。基準の数値は資料で確かめて書いていますが、実際の工事では設計図・特記仕様書・メーカーの資料を優先し、監理者に確認してください。
法令の条文は改正されることがあります。実際の工事では、最新の条文と、会社の安全基準・山留めの計画書を確認してください。
- 前の工程|05 杭工事05 杭工事の記事一覧
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