生コン受入不合格、荷卸し拒否の判断基準と交渉術|スランプ・空気量オーバーの現場実務

この記事は、生コン車の受入検査を自分の判断で任されるようになった現場代理人・工事主任向けです。

8月上旬、最高気温35℃の予報が出ていたあの日を、僕は今でもはっきり覚えています。RC造5階建て共同住宅の3階耐圧梁・柱、85m³の連続打設。ポンプ車2台、応援も含めて総勢12人体制で臨んだ大きな山場でした。1台目の生コン車が到着し、荷卸し前のスランプ試験をルーティンでこなしていたそのとき、コーンを引き抜いた瞬間に背筋が凍りました。スランプフローが明らかに広がりすぎている。スケールを当てると21.5cm。設計スランプは18。頭の中で規格値がぐるぐる回り、「これ、受け取っていいやつなのか……?」と、冷や汗が止まりませんでした。

何が起きたのか:原因は二つの重なり

あとで分かったことですが、原因は一つではなく二つが重なっていました。まず、前日夕方に局地的な豪雨があり、生コン工場のストックヤードに野積みされていた粗骨材の表面水率が普段より高くなっていたこと。骨材が水を含んだ分、練混ぜ水を計量通りに投入しても実質的な水セメント比が上がり、スランプが大きく出やすい状態になっていました。加えて、当日は朝から気温がぐんぐん上昇し、工場側が「運搬中のスランプロスを見込んで気持ち多めに加水した」と、後日の是正協議で説明を受けました。骨材の含水率変動と工場側の経験則による加水判断、この二つが悪い方向に重なった結果が、僕の目の前のスランプ21.0cm、空気量6.8%という数値だったわけです。

受入基準の数値を曖昧にしない:JIS A5308と管理許容差・限界許容差

ここで曖昧にしてはいけないのが、受入基準の数値です。JIS A5308では、指定スランプ18cmの場合の許容差は±2.5cm、つまり合格範囲は15.5〜20.5cm。この日の実測21.5cmは、上限を1.0cm超えた明確な規格外でした。空気量は普通コンクリートで4.5%が標準値、許容差は±1.5%なので3.0〜6.0%が合格範囲。実測6.8%も同様に上限オーバーです。さらに公共建築工事標準仕様書では、練混ぜから荷卸しまでの運搬時間は外気温25℃以上で90分以内、25℃未満で120分以内と定められています。この現場は工場から45分の距離だったので時間側はセーフでしたが、猛暑日は時間だけでなく骨材・練混ぜ水の管理も一気にシビアになる、という教訓になりました。

もう一点、現場で押さえておきたいのが「管理許容差」と「限界許容差」の違いです。管理許容差は、生コン工場や現場が自主的に定める、JIS規格値よりも一段階厳しい社内的な注意ライン。限界許容差は、JIS A5308に定められた、これを超えたら受入不可となる最終ラインです。今回のスランプ21.0cmは、管理許容差の段階でとっくに黄色信号が出ていたはずの数値であり、限界許容差(規格値)も明確に超えていました。なお、圧縮強度や配合そのものに疑義が生じる事態(強度不足の懸念など)は、現場監督の裁量を超える構造安全性の問題です。この場合は必ず構造設計者・監理者の指示を仰いでください。現場判断で「まあ強度は出るだろう」と見切り発車することは絶対に避けるべきです。

受入NGと判定したときにやること

受入検査で規格値を外れた場合、現場が取るべき行動はシンプルです。まず絶対にやってはいけないのが、現場でのアジテータ車への加水です。JASS5でも公共建築工事標準仕様書でも、荷卸し後の現場加水は水セメント比を狂わせ、強度低下やひび割れの原因になるため厳禁とされています。「ちょっと硬いから」「時間短縮のために」といった理由での加水は論外ですが、逆にスランプが出すぎている今回のようなケースでも、加水はもちろん、生コンを薄めるような操作は一切できません。

次にやることは、実測値の記録です。スランプ試験・空気量試験の結果、コンクリート温度、荷卸し時刻、生コン工場名と配車番号(伝票のバッチ番号)を控え、写真を撮ります。そのうえで、荷卸し拒否(受入NG)の判定を下し、生コン車を工場に返送します。今回のケースでは、1台目を受入NGとした時点で、2台目以降の車両にも同様の傾向が出る可能性があったため、工場の品質管理担当に電話を入れ、以降の配合(練混ぜ水量)を見直してもらったうえで、現地で再度スランプ・空気量を確認してから受入を再開しました。

受入NGとした生コンとは別に、通常どおり合格したロットからは所定本数(今回は1回の打設につき3本×2回=6本)の供試体を採取し、後日の圧縮強度試験に備えます。受入時の見た目や感触だけで「たぶん大丈夫」と判断せず、数値と記録で語れる状態を常に作っておくことが、あとで自分を守ることにもつながります。

現場の立ち回り術:報告と交渉で傷口を浅くする

手順が分かっていても、現場は人と人との調整で動いています。まず監理者への報告は、「手ぶらで怒られに行かない」が鉄則です。僕が実践しているのは、次の4点をワンセットで伝える方法です。①現象(「1台目のスランプが21.0cm、空気量6.8%で規格値を超えました」)、②実測値と判定根拠(規格値との対比)、③原因(推測でよいので「前日の降雨による骨材含水率上昇と工場側の加水が重なったと考えられます」)、④対応済みの内容と今後の対応案(「当該車は返送済み、工場に配合見直しを指示し、以降のロットは受入基準内であることを確認済みです」)。この順番で持っていくと、後手に回っていないことが伝わり、頭ごなしに叱られる展開はまず避けられます。

生コン工場との交渉では、返送した1台分の運賃・材料費をどちらが負担するかが必ず論点になります。ここは「受入基準を満たさなかった生コンを工場側の責任で返送した」という事実を、伝票の記載時刻・実測値・写真とともに書面(メールでも可)で残しておくことが交渉の土台になります。感情的にならず、記録ベースで淡々と事実を積み上げる姿勢が、結果的に費用負担の話をスムーズにします。

もう一つ見落としがちなのが、ポンプ車の待機時間です。受入判定と工場との調整に20〜30分かかることもあり、その間ポンプ車と圧送オペレーターは手待ちになります。この待機費用も、原因が工場側にある以上は工場側と協議すべき項目です。あわせて、後続の型枠解体や次工区の準備など、当日のクリティカルパスへの影響を早めに職長・工程担当と共有し、打設完了予定時刻がずれ込む可能性を先回りして伝えておくと、現場全体の混乱を最小限に抑えられます。

翌日から使える受入検査チェックリスト

  • □ 荷卸し前にスランプ試験・空気量試験を毎台実施しているか
  • □ JIS A5308の許容差(指定スランプ±2.5cm、空気量4.5%±1.5%)を現場担当者全員が把握しているか
  • □ 運搬時間(外気温25℃以上で90分以内)を伝票で確認しているか
  • □ 現場での加水は絶対禁止というルールを職長・作業員にも周知しているか
  • □ 受入NG時の連絡先(監理者・工場品質管理担当)を打設前に確認済みか
  • □ 供試体の採取本数・タイミングを事前に取り決めているか
  • □ 荷卸し拒否時の記録(伝票・実測値・写真)を残す担当を決めているか

生コンの受入検査は、地味に見えて現場の品質を最後に守る砦です。数値を覚えているかどうかで、その場での判断スピードも、監理者や工場との交渉力もまったく変わってきます。猛暑日や雨上がりは特に骨材・練混ぜ水が揺れやすいタイミングなので、いつも以上にコーンを引き抜く手に集中してみてください。今日のスランプ試験、きっと今までより少し違って見えるはずです。

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