墨出しの進め方|外周から決めて、柱と鉄筋を照合してから出す

測量・墨出し:墨出しは外周から|出す前に柱と鉄筋を照合 03 測量・墨出し

03 測量・墨出し|施工中

  1. 段取り:オートレベルとトータルステーションの据え方
  2. 施工中:この記事
  3. トラブル対処:レベル測定のミスを防ぐ
ルー

土間下の捨てコン、乾きました!今から墨出ししてきます。図面の寸法どおりに、端から測っていけばいいですよね?

テツさん

端ってどこの端だ。柱はもう立ってんだぞ。図面どおりの墨でも、柱とずれてりゃ立上りが納まらねえ。

ルー

……柱、まだ見てないです。メモしました。

Kony

墨は、出す前に「相手」を見る。それと、外周から決めて内側を割る。僕が前の現場で書いたメモの順番で整理しよう。

この記事で分かること

  • 墨を出す前に、柱と差筋を照合する理由と順番
  • 基礎・地中梁の墨を外周から決めて、内側を割り付ける手順
  • 段階ごとの確認ポイントと、僕が鉄筋の高さを見落としたときの反省

墨出しは「出す前」に半分決まる

手元に、2024年に書いた墨出しのメモが3枚あります。春に鉄骨造の現場で書いた2枚(土間下の捨てコンと、土間コンのあと)と、冬に書いた基礎・地中梁の覚書です。読み返すと、3枚とも言っていることはほとんど同じでした。

ひとつは、出す前に、もう立っているもの(柱・差筋)を見ること。もうひとつは、決める順番を守ること(外周から内側へ)です。

1 基礎・地中梁 2 土間下の捨てコン 3 土間コンのあと 2024年冬のメモ 2024年春のメモ 2024年春のメモ 出す前に見る相手出す前に見る相手出す前に見る相手 基準の点(逃げ心)外周の4隅から決める 立っている鉄骨柱柱に縦に出した基準 全部の鉄骨柱X・Y両方向とも 出すもの出すもの出すもの 外周 → 内側の通り地中梁の墨 立上りの差筋の位置 土間の上の墨2階の分も一緒に
図1墨出しの3つの場面と、出す前に見る相手・出すもの。僕の2024年のメモを場面ごとに並べたもの

墨は、型枠・鉄筋・鉄骨・仕上げまで、あとの工種が全部これを頼りに動きます。図面どおりにきれいに出せても、すでに立っている柱とずれていたら、その先で納まりが合わなくなります。だから僕は、墨出しを「線を引く作業」ではなく、「図面と現物を照合して、基準を渡す作業」だと思っています。

監督が自分で出す現場もあれば、専門の業者さんに墨出しを任せる現場もあります。任せる場合でも、基準になる点と外周の確認だけは、監督が自分の目で見ておきたいところです。

出す前に、柱と差筋を全部見る

春の鉄骨造の現場で、土間下の捨てコンに墨を出す前に書いたメモは3行だけです。

  1. 立上りの差筋の位置は、しっかり出すべき
  2. 通りの基準は「相手」を見る(柱に縦に出した基準)
  3. 全部の柱を確認して、OKなら墨出し

同じ日に、土間コンを打ったあとの墨出しの段取りも書いています。1行目は「まず全部の鉄骨柱がどうか確認する」。B通りの1,000の逃げに器械を据えて柱を見て、ずらすならずらす。2階の分もそのとき一緒に出す。X方向も同じで、全部の柱を確認する。

ここでいう「相手」は、もう立っている鉄骨柱です。柱の位置は、基礎に埋めたアンカーボルトと建方の精度で決まっています(アンカーボルトがずれたときの話はアンカーボルトの位置ズレと埋込み不足の直し方にまとめました)。鉄骨が建ったあとに図面の寸法だけで墨を出すと、柱と合わない墨ができることがあります。そうなると、立上りの型枠や差筋が、柱とうまく取り合わなくなります。

構造と納まりに関わるところ

メモの「ずらすならずらす」は、柱を全部見たうえで、墨をずらすかどうかを出す前に決める、ということです。ただし、どれだけずれていたらどちらに合わせるかは、構造と納まりに関わります。図面の通り芯を現場の判断だけで動かさず、所長と監理者に確認してから決めてください。柱のずれが大きいときは、構造設計者の判断が要ることもあります。

基礎・地中梁は、外周から決めて内側を割る

冬に書いた、基礎・地中梁の墨出しの覚書です。1行目に「とりあえず外周から決めていく」と書いてあります。手順はメモの図を描き直しました。

12345 abc 手順(僕のメモを描き直したもの) a 1に据えて3を見る。90°振って、距離で4を出す b 4に据えて1を見る。90°振って、距離で5を出す c 5に据えて見返し、90°と距離が合うか確かめる d 外周が閉じたら、内側の通り(青の線)を割り付ける 模式図・基礎の数や間隔は例
図2基礎・地中梁の墨出しの順番(模式図)。外周の4隅を直角と距離で決めて閉じてから、内側の通りを割り付ける

外周の4隅を先に決めて閉じてしまえば、内側の通りはその中に割り付けるだけになります。端から1本ずつ測って足していくと、小さな誤差が反対側の端にたまっていきます。外周を先に押さえておくのは、その誤差を最後に一か所へ寄せないためです。

直角はトランシットで90°振って出し、距離はロングテープで測ります。メモにはありませんが、4隅が出たら対角の2本の長さを測って、同じになっているかを見ておくのも一般的なやり方です。

このときメモに書いた持ち物は、トランシット2台、墨つぼと墨汁、水の入ったペットボトル、油性の太めのペン2色くらい、図面(ラミネートしたものか、A2の図面ファイル)、さしがね・スケール・ロングテープ。これだけでした。図面をラミネートかファイルにしておくと、外で風や雨にやられずにすみます。

FIELD NOTE基礎・地中梁の墨出し 持ち物

トランシット 2台、墨つぼと墨汁、水の入ったペットボトル

油性の太めのペン(2色くらい)

図面(ラミネートか A2 の図面ファイル)

さしがね・スケール・ロングテープ

段階ごとの確認ポイント

3枚のメモと、このあと書く僕のミスを、場面ごとの表にまとめます。「根拠」の列で、基準に書いてあることと、僕の現場のやり方を分けています。

場面見るところ確かめ方
据える前(全部の場面)基準の点(逃げ心)が動いていないか基準の点どうしの距離を測り直す
基礎・地中梁外周の4隅の直角と距離トランシットで90°、ロングテープで距離。最後に見返して閉じる
基礎・地中梁内側の通り外周が決まってから割り付ける
土間下の捨てコン立上りの差筋の位置柱に縦に出した基準から測る。全部の柱を見てから出す
土間コンのあと全部の鉄骨柱の位置(X・Y両方向)通りの逃げに器械を据えて柱を見る。ずらすかどうかは所長・監理者と決める
レベルを据えたとき近くの鉄筋・差筋の高さついでにスタッフを当てる
検査使う巻尺JIS B 7512(鋼製巻尺)の1級

僕のミス:レベルは何度も据えたのに、鉄筋の高さを見ていなかった

同じ2024年の春のメモです。タイトルは「外周立上り鉄筋が高い」。

気づいたのは、立上りを打つ2日前でした。大工さんが天端を出したときに、鉄筋が高いことが分かりました。僕はそれまでに、何度もレベルを据えていました。メモには「なぜここまで気づかなかったのか」「何度もレベルを据えていたのだから、ついでに確認すべきだった」と書いています。
すぐに鉄筋屋さんに来てもらい、鉄筋を全て切ってもらうことで事なきを得ました、、、。

鉄筋の天端が高いままコンクリートを打つと、上のかぶり厚さが足りなくなります。かぶり厚さは建物の耐久性に関わるので、直し方は自分たちだけで決めず、監理者に報告して、必要なら構造設計者の指示を仰いでください。打設の前に何を確かめておくかは、コンクリート打設の段取りにまとめています。

Konyの失敗から

メモの反省を手順にすると、こうなります。墨や天端の高さを見るためにレベルを据えたら、近くにある鉄筋・差筋・アンカーボルトの高さにも、一度スタッフを当てておく。器械はもう据わっているので、追加の手間はわずかです。

レベルの読みそのものを取り違えた話は、レベル測定のミスを防ぐ|基準の盛り替えで起きる勘違いと確かめ方に書きました。

検査と記録写真

公共建築工事標準仕様書(令和7年版)では、遣方に建物の位置と水平の基準をはっきり表示して、監督職員の検査を受けることになっています(2.2.3(3))。遣方を設けるときは、工事の邪魔にならない場所に「逃げ心」を設けることも決められています(2.2.3(1))。検査に使う基準巻尺は、JIS B 7512(鋼製巻尺)の1級です(2.2.3(4)、1.5.5(4))。

基礎や各階の墨そのものを、どこまで監理者に検査してもらうかは、特記仕様書や監理者との取り決めで変わります。着手前に確かめておいて、検査を受ける墨は、受ける前に自分で外周の距離と直角を測り直しておきます。

記録写真のことは僕のメモに書いていないので、ここは一般的に押さえておきたいものを挙げます。基準の点(逃げ心)からの距離を測っているところ、外周の距離と直角を確かめているところ、柱と墨の離れを測っているところ。あとで「この墨はどこから出したのか」と聞かれたときに、基準の点まで遡って説明できる写真があると強いです。

職人さんに墨を渡すとき

鉄筋が高いことに気づいたのは、僕ではなく大工さんでした。墨や天端を一番よく見ているのは、それを使って仕事をする職人さんです。墨を出したら、どの線が何の墨か(通り芯なのか、何mmの逃げなのか)を、線の横に書いておきましょう。

職人さんに「この墨、おかしくない?」と言われたら、まず手を止めて一緒に確かめる。言い出しにくい雰囲気の現場ほど、ずれは打設の直前まで見つかりません。

墨を一番見てるのは、それで仕事する俺たちだ。おかしいと思ったら言うからな。テツさん(職長)

墨出しは、線を引く前に柱と鉄筋を見て、外周から決めるだけで、ずれを持ち込む場面がかなり減ります。明日の墨出しでは、器械を据えたら、まず「相手」を一周見てきてください。

参考にした基準・資料

  1. 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版1章 1.5.5 施工の検査等(4)、2章 2.2.3 遣方(1)(3)(4)(逃げ心、位置及び水平の基準の検査、基準巻尺 JIS B 7512 1級)

この記事は、僕が現場で聞いたこと・やってきたことを書きためたメモをもとにしています。一つの現場での例なので、思い違いもあるかもしれません。基準の数値は資料で確かめて書いていますが、実際の工事では設計図・特記仕様書・メーカーの資料を優先し、監理者に確認してください。

墨出しの手順・照合の順番・持ち物は、僕が2024年に現場で書いたメモをもとにした、僕の現場のやり方です。対角の確認と記録写真は、一般的なやり方として書いています。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準、監理者の指示を確認してください。

次に読む

コメント

タイトルとURLをコピーしました