10 コンクリート工事|トラブル対処
- 段取り:コンクリート打設の段取り
- 施工中:打設当日に監督が見るところ
- トラブル対処:この記事/雨と猛暑の日の打設判断
Konyさん、1台目のスランプ、測ったら規定の範囲から外れてました…!
後ろに生コン車が何台も並んでるぞ。ポンプも人も待ってる。どうする、監督。
止めたら工程が……でも、そのまま打ったらダメですよね?
慌てて決めないこと。記録を取って、受け入れるか断るかを順番に判断する。その手順を整理しておこう。
この記事で分かること
- 受入検査の合否を決める数値(スランプ・空気量・塩化物量・運搬時間)と、その出典
- 規定から外れたときに、その場でやる順番(止める→記録→再試験→判定→連絡)
- 工場・監理者への伝え方と、やってはいけないこと
よくあるケース:1台目でスランプが外れた
よくあるケースとして、こんな場面を考えます。呼び方のスランプが18cmの普通コンクリート。朝一番の1台目で受入検査をしたら、スランプが21.5cm出た。後ろには次の車が並び、ポンプ車も圧送工も準備ができている。
ここで「少し柔らかいくらいなら大丈夫だろう」と流すと、あとで強度や耐久性の説明がつかなくなります。逆に、慌てて全部の車を止めてしまうと、打重ねの時間が延びて別の不具合を呼びます。大事なのは、基準の数値を正しく知っていることと、判断の順番を決めておくことです。

- 工事名
- ●●●新築工事
- 工種
- コンクリート工事
- 内容
- 受入検査
- 呼び方
- 24-15-20N
写真生コンの受入検査(S造の店舗の現場)
受入検査の基準を正しく押さえる
生コンの受入で見る数値は、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)で決まっています。スランプの許容差は、呼び方のスランプの値によって変わります。
| 項目 | 基準 | 出典 |
|---|---|---|
| スランプ 2.5cm | ±1cm | JIS A 5308 |
| スランプ 5cm・6.5cm | ±1.5cm | JIS A 5308 |
| スランプ 8cm以上18cm以下 | ±2.5cm | JIS A 5308 |
| スランプ 21cm | ±1.5cm(呼び強度27以上で高性能AE減水剤を使う場合は±2cm) | JIS A 5308 |
| 空気量(普通コンクリート) | 4.5%±1.5% | JIS A 5308 |
| 塩化物含有量 | 塩化物イオン量として0.30kg/m³以下 | JIS A 5308 |
| 運搬時間 | 練混ぜを開始してから荷卸し地点に到着するまで1.5時間以内 | JIS A 5308 |
| 練混ぜから打込み終了まで | 外気温25℃未満で120分、25℃以上で90分以内 | JASS 5 |
ここで混同しやすい言葉を2つ整理しておきます。
- スランプとスランプフローは別の試験です。普通のコンクリートの受入はスランプ(コーンを抜いたあと、どれだけ下がったか)を測ります。スランプフロー(広がった直径)は、高流動コンクリートなど、呼び方でスランプフローを指定したときに使います。
- 管理許容差・限界許容差は、鉄骨などの寸法精度で使う言葉です。生コンの受入の合否は、JIS A 5308 の許容差で判断します。
外れたとき、その場でやる順番
- 止める:その車の生コンは、ポンプに入れない。後続の車には待ってもらう。
- 記録する:納入書の番号と時刻、実測値(スランプ・空気量・温度)、写真。試験のやり方(突き方・コーンの引き上げ)に問題がなかったかも確認する。
- 再試験する:新しく試料を採って、1回だけ試験をやり直す。ここで規定に合えば合格にできる。
- 判定する:再試験でも外れたら不合格。その車は打たずに返す。
- 工場へ連絡する:実測値を伝え、原因の確認と、後続の車の調整(出荷の一時停止など)を頼む。
- 監理者へ報告する:下の「報告の型」で、すぐに伝える。
- 再開する:後続の車は毎台試験して、規定に入っていることを確かめてから受け入れる。
絶対にやってはいけないこと
- 現場での加水:硬くても柔らかくても、水を足して調整しない。水セメント比が変わり、強度と耐久性が落ちます。
- 「次の車と混ぜれば平均で入る」:外れた生コンを薄めたり混ぜたりしない。
- 記録なしの返品:あとで費用の話になったとき、実測値・時刻・写真がないと何も言えません。
- 判定を職人さん任せにする:受け入れるかどうかは、監督が基準で決めることです。
受け入れるかどうかは監督が決めることだ。俺たちに任せるなよ。テツさん(職長)
Q届いた生コンが硬め。「水を少し足せば打てる」と言われた。どうする?
- A少しだけなら足して打つ
- B加水させない。外れていれば止めて記録し、新しい試料で1回だけ再試験する
- C次の車と混ぜて平均で入れる
答えを見る
B 現場での加水は水セメント比が変わり、強度と耐久性が落ちます。外れた生コンを薄めたり混ぜたりもしません。再試験でも外れたら、その車は打たずに返します。
原因の切り分け
| 考えられる原因 | 確かめること |
|---|---|
| 骨材の表面水の変動(雨の後など) | 工場の当日の表面水率の管理、前の車との差 |
| 運搬・待機の時間が長い | 納入書の練混ぜ開始時刻と到着時刻、現場での待ち時間 |
| 気温が高い・低い | コンクリート温度、外気温 |
| 配合が違う | 納入書の呼び方が配合計画書と同じか |
| 試験のやり方 | 試料の採り方、突き方、コーンの引き上げ方が JIS A 1101(スランプ試験方法)どおりか |
原因は、その場で決めつけなくて構いません。工場と一緒に確かめることを、記録とセットで伝えます。
監理者への報告と、工場との話し方
まず数字と基準を。そのあとに、もう何をしたかを聞かせてください。
| 順番 | 中身(例) |
|---|---|
| 1. 現象 | 1台目(納入書No.○○、○時○分着)でスランプ21.5cm、呼び方は18cm |
| 2. 数値と基準 | JIS A 5308 の許容差は±2.5cm(15.5〜20.5cm)。再試験でも○○cmで不合格 |
| 3. 原因 | 工場で確認中(骨材の表面水の変動の可能性) |
| 4. 対応済み事項 | 当該車は打たずに返品。工場に出荷の調整を依頼。後続車は毎台試験して受入 |
| 5. 今後の案 | 打込み順序の組み替え(打重ね時間の確保)、終了予定時刻の見直し |
返品した生コンや待機の費用をどうするかは、購入の契約条件と記録をもとに工場と協議します。その場で感情的に決めず、納入書・実測値・写真をそろえて、あとで話すほうがまとまります。
受入検査チェックリスト
- ☐ 納入書の呼び方(強度・スランプ・粗骨材・セメント)が配合計画書と同じ
- ☐ 練混ぜ開始から荷卸し地点到着まで1.5時間以内(納入書の時刻)
- ☐ スランプ・空気量・温度・塩化物量を測り、許容差と照らした
- ☐ 外れたら止めて記録し、新しい試料で1回だけ再試験した
- ☐ 不合格の車は打たずに返し、工場と監理者に連絡した
- ☐ 現場で加水させていない
- ☐ 後続の車を毎台確認してから受け入れた
- ☐ 納入書・実測値・写真を残した
受入検査は、生コンを「打つ前に止められる」最後の場所です。数値と順番を体に入れておけば、後ろに車が並んでいても落ち着いて判断できます。
参考にした基準・資料
- JIS A 5308:2019 レディーミクストコンクリートスランプ・空気量の許容差、塩化物含有量、9.4 運搬時間、11.3 スランプ・空気量の検査(2024年に改正版が出ています。最新版で確認してください)
- JIS A 1101 コンクリートのスランプ試験方法
- 日本建築学会「建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工事」2022年版練混ぜから打込み終了までの時間
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版6章 コンクリート工事
基準の数値は版によって変わることがあります。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準を確認してください。
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