天井裏の確認に行く前、新人のルーが「脚立の2mルール」を法律だと思い込んで、大きな脚立を持ってきた場面です。
この脚立、開くと2mを少し超えますけど、法律で2mまではOKなんですよね? 天板に乗れば点検口まで届きます!
天板は乗るところじゃないよ。届かないなら立ち馬(作業台)を段取りしてくれたほうが、こっちも気持ちよく上がれる。
えっ、2mって法律の上限じゃないんですか?
法律(労働安全衛生規則)の脚立の条には、高さの数字が出てこないんだ。「2m未満が原則、2m以上は許可制」は、僕の会社の現場ルールだよ。
じゃあ、2m未満の脚立なら天板に乗っても大丈夫ってことですか?
天板に乗らないのは、労基署などのリーフレットにもうちの現場ルールにも入ってるよ。高さが2m未満でも、見かけたらその場で止めてもらうからね。
法律を守ったつもりで、現場ルールと天板の決まりの2つに同時に引っかかりかけてたね。どこまでが法律で、どこからが現場のルールか、順番に分けていこう。
結論
- 脚立の2mルールは法律の上限ではありません。脚立の条(安衛則528条)が決めているのは「脚と水平面の角度75度以下」「折りたたみ式は角度を保つ金具等」などの構造です。
- 法令の「2m」は安衛則518条の線です。高さ2m以上の箇所で墜落の危険があれば作業床(足場の床など)を設けるのが先で、脚立のまま器具で済ませる前提にせず、作業台・足場への切り替えを考えます。
- 「開いた高さ2m未満が原則、2m以上は許可制」は僕の会社の現場ルール。天板に乗らない・2段目以下の踏みさんで作業する、は労基署などのリーフレットの点検項目です。条文ではありませんが、会社の現場ルールや点検リストに入っていれば現場では守る決まりです。
脚立の「2mルール」は法律ではなく、会社の現場ルール
答えから言うと、「脚立は2mまで」という数字は法律には書かれていません。労働安全衛生規則の脚立の条(528条)を読むと、決まっているのは「丈夫な構造」「材料に著しい損傷・腐食がない」「脚と水平面の角度を75度以下、折りたたみ式は角度を保つ金具等」「踏み面に必要な面積」の4つです。高さの上限はどこにも出てきません。
条文を読むと、脚立の条に出てくる数字は75度だけです。法律から見ると、脚立は高さより角度に関心があるようです。
では2mはどこから来たかというと、518条の、高さ2m以上の箇所で墜落の危険があるときは足場を組み立てる等の方法で作業床を設ける、という線です。作業床は、足場の床のように、作業をするために設ける床のことです。脚立の踏みさんがそれに当たるかどうかは、この記事では言い切りません。
僕の会社では、「脚立は開いた高さ2m未満が原則、2m以上は監督(元請)の許可制」としています。これは法律ではなく、会社が決めた現場のルールです。だから会社や現場が変われば、許可の出し方や細かい決まりも変わる可能性があります。自分の現場のルールは、所長や会社の安全担当に確かめるのが確実です。
脚立まわりの法令は5つの条:518・519・526・527・528条
この記事で扱う5つの条に出てくる数字は、1.5m、2m、30cm、75度の4種類です。現場では全部まとめて「2mルール」と呼ばれがちなので、一度表で分けておきます。
| 条(安衛則) | 数字 | 何についての決まりか | 脚立との関係 |
|---|---|---|---|
| 526条1項 | 1.5mを超える | 高さ・深さが1.5mを超える箇所では、安全に昇降する設備等を設ける | 昇降設備の決まり。脚立の高さ上限ではない |
| 518条1項 | 2m以上 | 墜落の危険がある箇所は、足場を組む等で作業床を設ける | 「2m」の出どころ。脚立の高さ上限ではない(作業床の端・開口部は519条) |
| 518条2項 | (同上) | 作業床が困難なら、防網・要求性能墜落制止用器具の使用等 | 2m以上で作業床が取れないときの措置 |
| 519条 | 2m以上 | 作業床の端・開口部などに囲い・手すり・覆い等を設ける | 開口部の近くで脚立を使う場面に関係 |
| 527条 | 幅30cm以上 | 移動はしごの構造(丈夫・損傷なし・幅・すべり止め等) | はしごの決まり。脚立とは別の条 |
| 528条 | 75度以下 | 脚立の構造(丈夫・損傷なし・角度と金具・踏み面) | 脚立そのものの決まり。高さの数字はない |
表のとおり、法令は「脚立をどの高さまで使ってよいか」を数字で決めていません。決めているのは、2m以上の箇所での墜落の防ぎ方(518条・519条)と、脚立という道具の構造(528条)です。この2つを混ぜると「2mを超える脚立は違法」という言い方になりますが、条文はそうは書いていません。
はしごと脚立も別の条です。はしごは527条で「幅30cm以上」「すべり止め装置の取付けその他転位を防止する措置」が決まっていて、脚立は528条です。現場で「はしご・脚立」とひとまとめに言われても、条文を読むときは分けて読むと迷いません。
2m以上になりそうなときの判断は「現場ルール→法令」の順
脚立を立てる前は、まず会社の現場ルール(開いた高さ2m以上か)、次に法令(高さ2m以上の箇所で墜落の危険があるか)の順で見ます。現場ルールのほうが細かく、法令はその下にある最低線だと僕は考えていて、細かいほうから当てると抜けが出にくいからです。ただし、監督(元請)の許可が出ても、②の法令の確認は省けません。図1は、僕の現場のルールと法令を1枚に並べた流れです。「開いた高さ」は、図2の寸法線Hのところです。
②の「高さ2m以上の箇所」をどこから測るのか(足元か、作業する位置か)、脚立の上の作業がそれに当たるのかは、作業の内容と場所で変わります。ここは僕が記事で言い切れるところではありません。
もう1つ、②で「はい」になったときは、作業床を設ける(作業台・立ち馬・足場などに切り替える)のが先です。墜落制止用器具は掛ける場所がないと使えないので、脚立のまま器具で済ませる前提にせず、作業台・足場への切り替えを所長や職長と決めてください。

2m前後の作業で、作業床・墜落制止用器具の要否に迷ったら、自分で決めずに会社の安全担当・職長に確認してください(足場に切り替えるなら、足場の作業主任者にも)。判断がつかないときは労働基準監督署に問い合わせるのが確実です。
僕の会社は「ストップワーク」を方針にしていて、想定外のことが起きたら作業を止めます。合言葉は「止める・呼ぶ・待つ」です。脚立の高さが足りないと分かった瞬間に天板へ足をかけるのではなく、そこで一度止めて職長を呼ぶ、というのが図1のいちばん下の箱です。
天板に乗らない・2段目以下・75度以下と開き止め
脚立の使い方の答えは「天板に乗らない・またがない」「作業は2段目以下の踏みさん(3段目以下がよりよい)」「脚と水平面の角度75度以下で、開き止めを確実にロック」です。このうち75度と金具は528条の決まりで、天板と2段目は厚労省・労働局・労基署のリーフレットの点検項目です。図2に脚立の各部の名前と、それぞれの決まりを並べました。

リーフレットには「身体を天板や踏みさんに当て、身体を安定させる」という項目もあります。2段目以下に立てば天板や上の踏みさんに体を当てられる、というのが「天板に乗らない」「2段目以下」とのつながりだと僕は読んでいます。だから「2段目まではOK」ではなく「体を当てられる高さで作業する」と覚えると、段の数え方で迷ったときも安全側に倒せます。
段の数え方は、リーフレットでは「作業は2段目以下の踏みさん」とだけ書かれていて、天板を1段と数えるかは書かれていません。図2は天板の下の踏みさんを上から数える、厳しいほうの読み方で描いています。現場で数え方が分かれたら、3段目以下(リーフレットの「よりよい」)に寄せるのが一番早い解決です。
75度は「脚と水平面との角度を75度以下」で、折りたたみ式なら「角度を確実に保つための金具等」を備えることが528条で決まっています。リーフレットの点検項目でも「開き止めに確実にロックをかけた」を上る前に確かめることになっています。
僕の現場の協議会の資料では、これに加えて「荷物を持って昇降しない」「身を乗り出さない」「踏みさんは幅の広いもので、パイプ状のものは不可」としていました。「荷物を持って昇降しない」はリーフレットの点検項目にもあります。
2m未満でも落ちる:基準と現場のズレ
法令の2mは作業床を設ける線であって、2m未満なら安全という意味ではありません。518条は2m以上の話で、脚立の528条は構造の話なので、「2m未満の脚立をどこに、どう置くか」は法令の数字では決まらない部分です。ここが、基準と現場がいちばんずれるところだと僕は考えています。
| 場面 | 基準(一次資料) | 現場で起きたこと・現場のルール |
|---|---|---|
| 高さ | 2m以上の箇所で墜落の危険→作業床(518条) | 安全教育で共有された事例:6尺脚立から後ろへ飛び降りて両足の踵を骨折し、142日休業 |
| 足元 | リーフレット:脚立は安定した場所に設置 | 安全教育で共有された事例:塗床を守るため足元をウェスで養生したら滑りやすくなり、脚立が横滑りして墜落・骨折(経験1年) |
| 置き場所 | (法令に数値の決まりなし) | 僕の現場の計画表:脚立・立ち馬はその都度、作業の中心に設置する |
| 下り方 | リーフレット:荷物を持って昇降しない | 僕の現場:昇降ステップに背を向けて下りない。片足をステップ・片足を作業床に載せる作業は禁止 |
| 開口部 | 2m以上の作業床の端・開口部に囲い等(519条) | 僕の現場:開口部付近での脚立の使用と、またがり作業は禁止 |
僕の現場の毎月の計画表には、対策欄に「脚立・立ち馬はその都度、作業の中心に設置する」が繰り返し書かれていました。毎月書かれていたのは、それだけ繰り返し言う必要がある項目だから、と僕は受け取っています。作業の中心からずれた脚立は、身を乗り出す原因になります。
ウェスの事例は、床を守るための養生が足元を滑らせた例です。仕上げの養生と脚立の足元がぶつかる場面では、「床を守る」と「脚立を滑らせない」を両方満たす方法を、職長と先に決めておく必要があります。どの養生材なら滑らないかは、僕の手元の資料では確かめられていないので、使う前に職長や会社の安全担当・所長に確認してください。
現場で実際にあったこと
僕の現場で、天井点検口へ脚立で上がるときは補助者を付けるように、と安全パトロールで2か月続けて指摘されました。点検口は「ちょっと上がって覗くだけ」の作業なので、補助者の段取りが後回しになりやすいと僕は思っています。点検口の確認を予定に入れるときは、脚立と一緒に補助者も予定に入れるようにしてください。
足場まわりでパトロールに言われることは、安全パトロールで言われること【足場編】にまとめています。脚立をやめて作業台や足場に切り替えるときに、あわせて読んでください。
明日の現場で確かめること
読み終えたら、次の3つを現場で確かめてください。
- 自分の現場の脚立のルール(高さ・許可・天板・段)を、会社の現場ルールと安全衛生協議会の資料で確かめる
- 2m前後の作業は、図1の順(現場ルール→法令→脚立の構造→使い方)で見る
- 迷ったら「止める・呼ぶ・待つ」で、職長・会社の安全担当に聞く
よくある質問
脚立は法律で何mまで使えますか?
労働安全衛生規則の脚立の条(528条)には、高さの上限の数字はありません。決まっているのは丈夫な構造、損傷のない材料、脚と水平面の角度75度以下と角度を保つ金具等、踏み面の面積です。高さの上限は、元請や会社のルールで決めている現場があります。
2m以上の脚立は使ってはいけないのですか?
法令は「2m以上の脚立は禁止」とは書いていません。518条は、高さ2m以上の箇所で墜落の危険があるときに作業床を設けることを求めていて、防網や要求性能墜落制止用器具などはそれが困難なときの措置です。脚立のまま器具で済ませる前提にせず、作業台・足場への切り替えを先に所長や職長と相談してください。僕の現場のように「2m以上は監督(元請)の許可制」としている現場もあるので、自分の会社・現場のルールを確認してください。
脚立の天板に乗ってはいけないのは法律で決まっていますか?
528条の条文には天板の決まりはありません。「天板上や天板をまたいで作業をしない」「作業は2段目以下の踏みさん」は、厚労省・労働局・労基署のリーフレットの点検項目です。法令の条文でなくても、会社の現場ルールや点検リストに入っていれば現場では守る決まりです。
2段目は天板から数えるのですか?
リーフレットは「作業は2段目以下の踏みさんを使用する(3段目以下がよりよい)」と書いていて、数え方までは示していません。迷ったら3段目以下に寄せると、どちらの数え方でも外れません。
脚立とはしごの決まりは同じですか?
別の条です。はしご(移動はしご)は527条で、幅30cm以上、すべり止め装置の取付けなど転位を防ぐ措置が決まっています。脚立は528条で、75度以下と金具等が決まっています。
参考にした基準・資料
- 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第518条・第519条・第526条・第527条・第528条、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032(閲覧日 2026-10-27)
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう!」(R3.3、群馬労働局掲載) https://jsite.mhlw.go.jp/gunma-roudoukyoku/content/contents/000837798.pdf(閲覧日 2026-10-27)
この記事の確認日:2026-10-27


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