梁貫通のルールは、現場ではまず構造図の「梁貫通孔の標準図」と特記で決まります。一般的な目安として、国土交通省の「建築構造設計基準の資料」(令和3年改定)では、柱面から梁せいDの1.5倍の範囲には孔を設けない、孔径は梁せいの1/3以下、孔の中心間隔は両孔径の平均の3倍以上としています。外れた孔は打設の前に規定内へ戻し、戻せなければ監理者・構造設計者に相談します。
配筋検査の前日の夕方。梁の上で、設備屋さんが入れたスリーブの位置をルーと見ています。
スリーブ、設備の図面どおりに入っていればOKですよね?明日の検査は鉄筋のほうを見ておけばいいかなと。
図面どおりでも、柱に近すぎると言われたことがあるんだ。梁貫通には、柱からの距離や孔の大きさのきまりがあるからね。
検査では、孔の位置も構造図の標準図と照らして見られるよ。補強筋が入っているかも一緒にね。
設備の図面と構造図、両方見ないといけないんですね。
そう。どこに何が書いてあって、どの数字を見ればいいかを順番に整理しよう。
この記事で分かること
- 梁貫通のきまりがどこに書いてあるか(構造図の標準図・特記)
- 柱からの距離・孔の大きさ・孔どうしの間隔・上下の位置の一般的な目安と出典
- 配筋検査で指摘されたときと、インサートとかぶったときの動き方
梁貫通のルールは、構造図の「梁貫通孔の標準図」と特記が正
梁貫通のきまりは、法律の条文に数字が一つ書いてあるわけではありません。構造設計者が建物ごとに決め、構造図の「梁貫通孔の標準図(補強要領)」や特記に書きます。だから現場で最初に見るのは、ネットの数字ではなく、その現場の構造図です。
開けてよい範囲、孔の大きさの上限、孔どうしの間隔、補強筋の入れ方は、その現場の標準図・特記で確かめます。設備のスリーブ図は「どこに通したいか」の図で、構造的に開けてよいかまでは示していません。設備のスリーブ図と構造図の標準図を重ねて見るのが、梁貫通の確認の基本です。
| 確認するきまり | 一般的な目安(国交省 資料 6.2.2) | 現場で確かめる所 |
|---|---|---|
| 柱からの距離 | 柱面から1.5Dの範囲に設けない(ヒンジ領域を短く設定する場合も1.0D以上) | 構造図の梁貫通孔の標準図・特記 |
| 孔の大きさ | 孔径は梁せいの1/3以下 | 標準図(孔径の上限・補強の要否) |
| 孔どうしの間隔 | 中心間隔は両孔径の平均の3倍以上 | 標準図 |
| 上下の位置 | 梁せいの中央付近が望ましい。梁中央部の下端は、梁下端からD/3の範囲に設けない | 標準図・梁の断面リスト |
| 補強 | 有孔梁のせん断強度が孔のない梁以上になるよう補強。既製品は第三者機関の評定・技術証明を取得したもの | 標準図の補強要領・特記、使う補強材の資料 |
| 開けてはいけない梁 | 境界梁など大きなせん断力を受ける部分には原則として設けない | 特記・構造設計者への確認 |
表の数字は一般的な目安で、Dは梁せいです。現場の構造図・特記が優先し、数字が違えば構造図のほうに従います。表にない梁や、標準図で読み取れない孔は、自分で判断せず監理者を通して構造設計者に確認します。
梁貫通の柱からの距離は「柱面から梁せいの1.5倍」が目安
柱に取り付く梁の端は、地震のときに大きな力を受ける「ヒンジ領域」にあたります。国交省の資料では、この範囲として柱面から1.5D(Dは梁せい)以内には貫通孔を設けないとしています。せん断スパン比に応じてヒンジ領域を短く設定することはできますが、その場合も1.0D以上とされています。
ここで「1/3」は柱からの距離ではなく、孔の大きさと下端の範囲の数字です。柱からの距離は「梁せいの何倍」で、孔径は「梁せいの何分の一」と覚えておくと混ざりません。梁せいが大きい梁ほど、柱から離さないといけない距離も長くなります。
なお、同じ資料では、基礎梁と壁が付く梁の範囲は、ヒンジ領域が明確でないため柱面からの位置について特段の規定を設けないとしています。ただし、開ける位置が自由という意味ではありません。地中梁の貫通は、構造図の特記・標準図で確かめ、書かれていなければ構造設計者・監理者に確認します。
RCの梁貫通の基準:孔の大きさ・孔どうしの間隔・上下の位置
柱からの距離のほかに、RCの梁貫通の基準として見るのは孔の大きさ、孔どうしの間隔、上下の位置の3つです。国交省の資料の目安では、孔径は梁せいの1/3以下、孔が並ぶときの中心間隔は両孔径の平均の3倍以上です。孔が円形でないときは、外接する円で考えます。
上下の位置は、梁せいの中央付近が望ましいとされています。特に梁の中央部の下端は、梁下端からD/3の範囲に設けてはならないとしています。孔の高さを変えたいと言われたときも、まず標準図でこの範囲を確かめます。
孔径が一般部のあばら筋のピッチより大きいときは、原則として孔の上下に縦筋を設けるとされています。補強は、孔のある梁のせん断強度が孔のない梁以上になるように設計し、既製品の補強材なら第三者機関の評定や技術証明を取ったものを使います。どの補強材をどう入れるかは標準図・特記と補強材の資料で確かめ、配筋検査ではその補強筋が入っているかも見られます。
配筋検査で指摘されたこと:梁が短く、設計の時点で納まっていなかった
ここからは僕の現場の話です。RCの現場の配筋検査で、梁貫通スリーブが柱から離すべき範囲に入っていると指摘されたことがあります。設備の図面どおりに入っていても、構造図のきまりから外れていれば指摘されます。
原因をたどると、その梁は長さが短く梁せいが大きい梁でした。梁せいが大きいほど柱から離す距離が長くなるので、短い梁では開けてよい範囲がほとんど残りません。そもそも設計の段階で納まっていなかったのです。
Konyの現場メモ
正直、僕も指摘されるまで気づきませんでした。構造設計者に確認してもらい、梁を補強することで納めました。
このとき大事なのは、現場で「少しなら大丈夫だろう」と決めないことです。柱からの距離や孔径が標準図から外れたら、補強の要否は構造設計者・監理者に確認する。検査で慌てないためにも、スリーブ図が出た段階で標準図と重ねておくのがいちばんの近道です。配筋検査でほかに指摘されやすい所は、配筋検査で指摘されやすい箇所にまとめています。
構造に関わるところ
梁貫通孔の位置・大きさ・補強は、梁のせん断の強さに関わります。現場監督の判断で済ませず、監理者に報告して、必ず構造設計者・監理者の指示を仰いでください。
型枠のインサート・足場つなぎと梁貫通をかぶらせない
梁貫通は、鉄筋だけでなく型枠に仕込む物ともぶつかります。僕の現場では、型枠に仕込んだ足場つなぎのインサートが、梁貫通の位置にちょうどかぶっていたことがありました。設備屋さんは梁貫通をするときに分かっていたはずなのに何も伝えてくれず、ちょっと揉めました。
このかぶりは、どちらか一方の図面だけを見ていても見つかりません。梁やスラブの型枠には、スリーブ、足場つなぎのインサート、天井を吊るインサートなど、別々の職種が入れる物が集まります。打合せでは、地中梁なら掘削の段階で掘削図と配管図、梁貫通とその補強筋の段取りを見ます。天井内は天井伏図と設備機器を入れたプロット図を重ねて見ると、ぶつかる所に先に気づけます。
かぶりを見つけたら、まずスリーブを規定内の位置に戻せるかを考えます。戻せなければ、設計者・監理者に連絡して相談し、構造的に補強が必要ならそのようにします。最後は監理者の指示に従う、という順番です。
Qスリーブは設備の図面どおりに入っているのに、構造図の標準図で見ると柱面に近すぎる。打設まで日がない。どうする?
- A設備の図面どおりなので、そのまま打設する
- B規定内に戻せるか確かめ、戻せなければ設計者・監理者に相談する
- C現場の判断で補強筋を足して納める
答えを見る
B 設備の図面は通したい位置の図で、構造的に開けてよいかは構造図の標準図で決まります。戻せないときの補強は構造に関わるので、監理者に相談して指示に従います。
鉄筋屋さんと設備屋さんの間に立つ。外れたら監理者へ
僕が揉めたときも、どちらかが悪いわけではありませんでした。鉄筋屋さんは自分の仕事に誇りを持っているだけで、設備屋さんにも悪気はありません。どちらも元請けの下の協力会社なので、調整するのは僕ら監督の仕事です。
僕は、設備屋さんから「このタイミングで梁貫通をしたい」と言われたら、鉄筋屋さんに「設備屋さんがこうしたいと言っているけど、この日でいいですか」と相談します。お互いの意見を尊重して、入れる日と順番を決めてから作業に入ってもらいます。スリーブ位置の確認もこの段取りの中でやっておくと、検査の前日に慌てずに済みます。
「この日でいいですか」と先に聞いてもらえると、組む順番を決めやすい。テツさん(職長)
調整しても標準図の範囲に納まらない孔は、職人さんどうしで決めずに監理者へ上げます。設計者・監理者に相談し、構造的に補強が必要ならそのようにして、監理者の指示に従います。設備との取り合い全体の段取りは建築と設備の取り合い|スリーブ・インサートに、地中梁と杭の鉄筋を重ねて描く検討は杭頭補強筋の納まり検討に書いています。
設備のスリーブ図が出たら、構造図の梁貫通孔の標準図と重ねて、柱からの距離・孔径・孔どうしの間隔の3つに印を付けてみてください。外れたものは打設の前に監理者へ相談すれば、配筋検査の場で慌てることはなくなります。
参考にした基準・資料
- 国土交通省 大臣官房官庁営繕部「建築構造設計基準の資料」令和3年改定第6章 鉄筋コンクリート造 6.2.2 梁貫通孔(柱面から1.5D・ヒンジ領域を短く設定する場合も1.0D以上、孔径は梁せいの1/3以下、中心間隔は両孔径の平均の3倍以上、梁中央部下端からD/3の範囲は不可、基礎梁・壁付帯の扱い、補強の考え方)
基準の数値は版によって変わることがあります。実際の工事では、構造図の標準図・特記仕様書と最新版の基準を確認してください。
- 検査|08 鉄筋工事配筋検査で指摘されやすい箇所
- 同じ工種|21 設備との取り合い建築と設備の取り合い|スリーブ・インサート


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