スタッド溶接の検査方法と立会い|外観・高さ±2mm・打撃曲げ15°

鉄骨工事:スタッド溶接の検査方法 ロット100本・打撃曲げ15° 11 鉄骨工事

スタッド溶接の検査方法は、全数の外観(カラーとアンダーカット)と、100本ごとのロットから1本以上の抜取り(仕上り高さ±2mm・傾き5°以内・打撃曲げ15°)が基本です。鉄骨の床で初めて検査に立ち会う現場監督向けに、仕様書の数値でまとめました。

11 鉄骨工事|施工中

  1. 段取り:鉄骨建て方の手順と段取り/アンカーボルトの位置出し
  2. 施工中:この記事
  3. トラブル対処:アンカーボルトの位置ズレ・埋込み不足

デッキを敷き終えた翌朝、2階の床で、スタッド溶接の検査の立会いの前に。

ルー

立ち会いって、見てればいいんですよね?

Kony

見るところの数字を知らないと、合っているか分からないんだ。僕も最初は数字を覚えてなくて、分からなかった。

ミサキさん

じゃあルーくん、何本ごとに1本抜くか、言える?

ルー

えっ、全部見るんじゃないんですか?

Kony

全部見る所と、100本ごとに抜いて15°まで曲げる所があるんだ。今日は、全数で見る所、抜き取りで見る所、だめだった時の順で話すね。

結論から言うと、公共建築工事標準仕様書(以下、標仕)では、スタッド溶接の検査は、全数の外観(カラーとアンダーカット)を見たうえで、100本ごとのロットから1本以上を抜き取り、仕上り高さ±2mm・傾き5°以内と、15°の打撃曲げを確かめます。不合格なら同じロットから2本を追加し、それもだめならロットの全数を試験します。

この記事で分かること

  • スタッド溶接の検査で見る4つの数値(高さ・傾き・カラー・アンダーカット)
  • ロットの数え方と、打撃曲げ試験15度・試験溶接30度の違い
  • 不合格が出たときの追加試験と打直しの流れ

スタッド溶接の検査で見ること:外観・仕上り・打撃曲げ

標仕の7.7.3では、スタッドの仕上りを4つの数値と状態で決めています。仕上り高さは所定の高さの−2mm〜+2mm、傾きは5°以内、カラー(根元の溶けて盛り上がった部分)は軸の全周にできていること、母材やスタッドの軸部のアンダーカットは0.5mm以内です。溶接が終わったあとの試験は7.7.6で、外観試験と打撃曲げ試験の2本立てになっています。

僕が立会いで見ているのは、この決められた数値が守れているかどうかです。だから、立ち会う前に数値を頭に入れておかないと、目の前のスタッドが合格なのかどうか判断できません。なお、スタッド溶接の作業は技能資格者が行うことになっている(7.7.2)ので、資格の確認も段取りのうちです。

模式図・寸法は標仕7.7.3の値 梁の上フランジ(母材) 傾き 5°以内 仕上り高さ 所定 ±2 (−2mm〜+2mm) カラー: 軸の全周に形成 アンダーカット 0.5mm以内 (母材・軸部)
図1スタッドの仕上りで見る4つ(模式図)。数値は公共建築工事標準仕様書 令和7年版 7.7.3による

Konyの現場メモ

僕はスタッド溶接の検査に立ち会ってきましたが、最初の頃は数値を覚えておらず、調べてもいなかったので、見ても合っているか分かりませんでした。だからこの記事では、立会いで見る数値を先にまとめています。

外観は全数:カラーとアンダーカット0.5mm

外観試験は、抜き取りではなく全数です。標仕7.7.6(1)(ア)では、全てのスタッド溶接部でアンダーカットの有無を確かめ、全てのカラーを確かめることになっています。アンダーカットの限度は0.5mm以内(7.7.3(4))です。

カラーが軸の全周にできていないスタッドは、そのスタッドを打撃曲げ試験で確かめます(7.7.6(1)(ア)(b))。つまり、カラーの欠けは「見て終わり」ではなく、曲げて割れないかを確かめる対象になる、ということです。

高さと傾きは抜取り:100本ごとのロットから1本、±2mm・5°以内

仕上り高さと傾きは抜取りで、1ロットにつき1本以上を測定器具で計ります(7.7.6(1)(ア)(c))。ロットは100本とその端数で、スタッドの種類ごと、溶接される部材ごとに分けます。抜いた1本が高さ±2mm・傾き5°以内なら、そのロットは合格です。

計算の例です。同じ種類・同じ部材のスタッドが250本なら、100本・100本・50本の3ロットになり、抜き取るのは少なくとも3本です。種類や部材が変われば別のロットになるので、本数だけで割らないように気をつけてください。

いつ何を見るか何本標仕の条
作業開始前(午前・午後、装置の移動・交換時、径が変わるごと)試験溶接:仕上りと打撃曲げ30°2本以上7.7.4(3)
溶接完了後外観:アンダーカット0.5mm以内全数7.7.6(1)(ア)(a)
溶接完了後外観:カラー(欠けていれば打撃曲げ)全数7.7.6(1)(ア)(b)
溶接完了後仕上り高さ±2mm・傾き5°以内ロットごとに1本以上7.7.6(1)(ア)(c)
溶接完了後打撃曲げ15°で割れ・欠陥がないロットごとに1本以上7.7.6(1)(イ)
表1スタッド溶接の検査:いつ・何を・何本(公共建築工事標準仕様書 令和7年版 7.7.4・7.7.6)

打撃曲げ試験は15度:作業前の試験溶接は30度

溶接完了後の打撃曲げ試験は、高さ・傾きと同じロットの考え方で抜き取り、打撃で15°まで曲げます(7.7.6(1)(イ))。溶接部に割れその他の欠陥が出なければ、そのロットは合格です。曲げて欠陥のなかったスタッドは、曲げたまま使ってよいことになっています。

混同しやすいのが、作業開始前の試験溶接です。こちらは7.7.4(3)で、午前と午後の作業開始前、溶接装置を移動・交換したとき、スタッドの径が変わるごとに、2本以上を試験溶接し、仕上りの確認と曲げ角度30°の打撃曲げ試験で溶接条件を確かめます。「本番前の条件出しは30°、打ち終わったあとの検査は15°」と覚えておくと、立会いで迷いません。

試験溶接の前提として、溶接面の水分・錆・塗料・亜鉛めっきなどは、スタッドの軸径の2倍以上の範囲を除去・清掃します(7.7.4(5))。また、デッキプレートを貫通させて溶接する場合は、事前に引張・曲げ・マクロ試験などで施工条件を決めることになっています(7.7.4(6))。この条件をどう決めたかは、施工計画書で監理者と確認しておくところです。

不合格が出たら:同じロットから2本、だめなら全数、そして打直し

抜き取った1本が不合格なら、同じロットから更に2本を試験します(7.7.6(1)(ア)(c))。2本とも合格ならロット合格、それ以外はロットの全てを試験します。打撃曲げ試験で不合格が出たときも、同じ手順です。

僕の立ち会った検査では、不合格が出たことはありません。それでも、出たら検査する本数を増やして、そのスタッドだけがだめだったのかを確かめるものだと考えていました。標仕の手順も、僕の考えと同じ向きです。

ロット:100本とその端数 スタッドの種類ごと・溶接される部材ごと 1本以上を抜き取って試験 高さ±2mm・傾き5°以内/打撃曲げ15° 合格 ロット合格 不合格 同じロットから更に2本を試験 2本とも ロット合格 それ以外 ロットの全数を試験 不合格のもの 打直し(隣接部に。7.7.7) 母材に欠陥が及ぶときは補修してから 打直した全数を外観試験に準じて試験 記録を提出して承諾を受ける 打撃曲げ試験 15° 割れ・欠陥がなければ合格 作業前の試験溶接は30°
図2不合格が出たときの流れ(公共建築工事標準仕様書 令和7年版 7.7.6・7.7.7)。右下は打撃曲げ15°の模式図

不合格のスタッドは、7.7.7で隣接部に打直します。隣接部にできないときは除去してから打直し、欠陥が母材に及ぶときは、除去して予熱し、補修溶接してグラインダーで平らにしてから打直します。打直した全数は外観試験に準じて試験し、試験の記録は監理者(公共工事なら監督職員)に提出します。

構造に関わるところ

欠陥が梁などの母材に及んでいるときや、全数試験で不合格が続くときは、構造に関わります。現場監督の判断で補修方法を決めず、構造設計者・監理者に確認して、指示を受けてから進めてください。

溶接しない日:0℃以下・母材がぬれている日

検査の前に、そもそも溶接してよい日かどうかも標仕で決まっています(7.7.5)。気温が0℃以下のとき、降雨・降雪などで母材がぬれているときは、溶接しません。ただし、どちらにも例外があります。

条件原則例外標仕の条
気温が0℃以下溶接しない溶接部から100mmの範囲の母材を36℃程度に加熱する場合7.7.5(1)
降雨・降雪などで母材がぬれている溶接しない適切な措置を講じて支障のない場合7.7.5(2)
表2スタッド溶接をしない条件と例外(公共建築工事標準仕様書 令和7年版 7.7.5)

朝の立会いの前に、床がぬれていないか、気温がどうかを確かめておいてください。例外の「加熱する」「適切な措置」をどうするかは、現場で決めずに監理者と確認しておくところです。

デッキプレートの溶接と、上を歩くときの安全

スタッドと同じ床で、デッキプレートと鉄骨の溶接も見ることになります。ただ、デッキプレートと鉄骨部材の溶接方法は、標仕では「特記による」(7.7.8)とされていて、数値は工事ごとの特記仕様書と施工図で決まります。僕は焼抜き栓溶接では、特記や施工図で決められた寸法が守られているかを見ています。

鉄骨の梁の上にデッキプレートを敷き終えた床。奥は鉄骨の柱と梁、上部に落下防止のネット
工事名
●●●工事
工種
鉄骨工事
内容
デッキプレート敷き完了

写真1デッキプレートを敷き終えた床。スタッド溶接の検査では、この上を歩いて1本ずつ見ていく(写真は鉄骨造2階建ての店舗の現場)

そして、検査では鉄骨の床の上を歩きます。鉄骨工事は高い所で重い物を扱うので、事故が起きれば重大な事故になります。フルハーネス型墜落制止用器具を付けて、使うことは、何回言っても言い過ぎることはないと僕は思っています。

僕の現場では、建方のときは梁の上で歩く所に親綱の支柱を立て、デッキを張るタイミングで親綱を外していました。外したあとの開口部や床の端の安全をどうするかは、元請の計画と安全担当と確認してから立ち会ってください。建方の段階の安全設備は鉄骨建て方の手順と段取りで書いています。

次のスタッド溶接の立会いの前に、特記と標仕7.7で仕上り高さ・傾き・ロットの大きさ・打撃曲げの角度を確かめ、ロットごとの抜取り位置を溶接の職長と決めておいてください。そうしておけば、床の上で「どれを抜くか」で迷わず、数値が合っているかを見ることに集中できます。

参考にした基準・資料

  1. 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版7章7節 スタッド溶接及び床構造用のデッキプレートの溶接 7.7.2〜7.7.8

数値は公共工事の標準仕様書によります。民間工事では特記仕様書やJASS 6の扱いを監理者と確認してください。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準を確認してください。

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